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『JOKER』と同じ病を持つ身として

アカデミー賞2020の発表がされましたね!『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、『フォードvフェラーリ』と個人的に好きな映画がたくさん名を連ねるなか、なんと11項目でノミネートされた『ジョーカー』が作曲賞そしてホアキン・フェニックスが主演男優賞を獲得しました。この映画、大好きっす。

『ジョーカー』は映画が公開された昨年秋から多くの人によって評論がなされていたので(宇多丸さんの評に納得です)、自分の情報や感性だけではただの二番煎じになってしまうだろうと思い、別の観点で綴ります。

その視点とは彼の持つ「笑う病気」です。

今回の記事を通じて、彼の持つ病気を怖がらないで、面白がらないで、ただうなずいて欲しいと思い、筆を取りました。

そう。のちに「ジョーカー」と変貌を遂げる主人公のアーサーには、幼少期からストレス環境といった外的要因によって笑いが止まらなくなる病気を抱えています。その笑い方から観る人は可笑しくも悲しくも見える意見を目にしましたが、自分はどっちでもないような気がしました。

ただ発作として起こってしまう笑いをコントロールできない。自分の意志ではどうにも抑制が効かない自己が存在しているだけのように感じ取れました。物語においては、それをジョーカーとしての危うさや獰猛さの象徴とも受け取れるかもしれません。でも、その解釈は彼の行く末を知っている視聴者の先入観に起因するのではないでしょうか。

彼の笑う病気。恐らく、トゥレット症候群の一種と取れます。ざっくりいうと、これはストレスによって身体が勝手に動いてしまうことが慢性的に続く発達障害です。架空の病ではない、現実的にありうるものだと思います。そして、その症状は決して人間としての欠損ではなく、誰でも起こり得る可能性があります。したがって、笑う病気自体を彼の凶暴さに繋げた解釈をしたくないんです。

彼の笑いの奥で、自分には聞こえてきた気がします。

「止まれっ!止まってくれ!」

彼は、きっと悲しいんじゃない。可笑しいとも感じていない。必死にその症状の煩わしさに対抗する叫びをあげていたと、自分は思いながらスクリーン越しで辛くなっていました。

なぜ、そう思ったのか。
それは、自分も彼と同じ病を抱えているからなんです。

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展示やイベントレポート、ブックレビューなどを通じて、アート・テクノロジーなど幅広いジャンルを扱った記事を書こうと思います。また、役者としても活動しているので劇場などでお声がけさせてください!