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名優マーロン・ブランドに会う

『ゴッド・ファーザー』などの映画で20世紀最高と謳われた俳優のマーロン・ブランド氏。彼の素顔に迫ったメイズルス兄弟によるドキュンメンタリー映画『マーロン・ブランドに会う』山形国際ドキュンメンタリー映画祭(10/10木~17木)で公開されます。

今回、この『マーロン・ブランドに会う』の吹替・同時通訳を担当しました!この作品は15日(火) 15:20から一度のみ上映されますので、ご興味のある方はぜひ、遠出になりますが、山形市民会館小ホール(山形駅より徒歩15分ほど)にお越しくださいませ。

いったい、どんな作品なの??それは、次章で。



映画『マーロン・ブランドに会う』とは

ここだけの話、作品自体はyoutubeに掲載されています。しかし、和訳も字幕もついておりませんので、日本語で内容をご覧になりたい方は、ぜひ会場まで!

『マーロン・ブランドに会う "Meet Marlon Brando"』は、ブランド氏の出演作『Morituri モリツリ/南太平洋爆破作戦』の公開に合わせて宣伝のために開かれた記者会見の模様の描いています。記者がありきたりな質問を投げかけるのに対して、ジョークで切り返したり、話を逸らしたりしてユーモラスな姿を見せながら、一方で、役者が商業的な扱いをされること、人種問題に対する憂いを語る内容です。なんというか、現在、マスコミに対して物申したいことってこの頃からあったんだな、と気付かされます。

この映画、決して難しい内容が続くわけではなく、ブランド氏のキレッキレのボケやツッコミ(砕けすぎでしょうか)の連続なので、素直に楽しめますよ!

僕が、観ながら笑っちゃったのは、美人なインタビュアーに対して、一人ずつ口説いてるところとか!あと、「ニュースってのは、靴とか、歯磨き粉、リップスティック、ヘアゴムと同じように消耗品だからさ。」とニュースレポーターの前で言ってしまった後、「この会見で自分のキャリアが終わりませんように。」って自虐してるところですね。このようなエレガントでウィットに富んだやり取りが続くので、飽きませんよ!

また特に、役者としては個人的に印象に残るのは「どうすれば多くのキャラクターを演じ分けられるのか」という問いに対する答え。あの名優は芝居をそういう風に考えていたのかと学びになりました。これは、自分だけが知っておきたいので、心に秘めます。嘘、いつか言う。

ここまで話してもネタバレにはならないでしょう。それだけ、密度の濃い、しかし、単に楽しい作品です。

ですが、ブランド氏は完成された本作に対して納得がいかないようで、ソフト化されていないんですって。てことは、やっぱり、このIYDFFでしか観られない!

続いて、今回の同通の件の経緯をば。

ブランド氏に声を当てるまで

改めて、自分は現在、早稲田大学大学院に所属しております。同じ学科には是枝・土田研究室という映画・映像の分野を研究するゼミがあり、今回は土田環先生に自分が英語を使え、役者をしている点を踏まえて依頼をしてくださりました。土田先生には、不慣れな自分に対し、このような貴重な機会をいただき、大変感謝しております。

そして、今回の案件に取り組ませていただきました。吹替までの流れは、映像資料の視聴台詞を英語で書き起こす和訳吹替を収録というフローです。英語の書き起こしには、友人に手伝ってもらいました。彼らにも感謝しています。和訳から収録までは個人での作業で、大変でしたが、創造性が試されているようで楽しかったです。

上記の映像の通り、ブランド氏のみならず、たくさんのレポーターなども登場しますので、ひとりで何役も演じる形になりました。

特に、和訳から吹替までで注意した点は、本作に登場するブランド氏のユーモアを日本語でも伝わるようにすることでした。そのなかには、当時のハリウッドの事情や俳優の名前など事前知識を要するものも出てきますが、それが解らなくても笑えるように意訳してみました。もちろん、スキルが足りないので、あとは観ていただいた方々の反応をお聞きしたいです。

では、いくつかジョークの解説を。

あのジョークってどういう意味?

ひとつめは、先述の通り、「ニュースは消耗品として売られているんだ」という話の流れで登場するくだりです。

ブランド氏:「そして、そのマーケティングシステムに貢献しないと、ニュースを売る行商人の長、ヘッダ・ホーカーになる。(笑い声)面白い言い間違いだね!もとい、ヘッダ・ホーカー。」

行商人の長=The head of hawker (ヘッド オブ ホーカー)

続いて、アメリカの名女優(ブランド氏よりも先輩に当たりますかね)にヘッダ・ホッパーという方がいらっしゃいます。

この2語の洒落だと僕は解釈して、上記のような和訳に至りました。そして、訂正すると見せかけて2回言うギャグ。これに対して、インタビュアーが「You didn't correct it! (訂正してないじゃないですか!)」とツッコむのです。

ギャグを冷静に説明するというのは、恥ずかしい感じですけど!


続いて、ここがかなり悩んだ箇所。

ブランド氏:「もし、マスコミに協力せずに関係ない私生活の話をしたら、世間に叩かれるわけだよ。けんせー、に、れるたたかー、なんつって。」

日本語では、いわゆる「業界用語」っぽい言葉遊びにしたんですが。元々はこう言っています。

Brando: ~ and you have to be chopped publicly and chastised for it or chublicly plastised for it if you like.

正しいスペルは、publicly chastised (世間に叩かれる)なんですが、先頭の文字をそれぞれ入れ替えて、chublic plastised になっている言葉遊びなんです。教科書では、習わないような英語の使い方ですよね。これは、和訳のときに伝える方法を考えるのに時間がかかりました。結果、上記がふさわしいかは劇場のお客さんのリアクションからフィードバックを得ようかと。

最後に

今回の案件を通じて、学びになることがとても多かったです。お茶目で皮肉屋、しかし、根底には自分の考えがしっかり保たれている魅力的なマーロン・ブランドをぜひ会場で楽しんでください。

最後になりますが、本案件を依頼してくださった土田環様、株式会社アイディ様、英語のディクテーションに協力してくださった仲間たちに、改めて感謝申し上げます。


展示やイベントレポート、ブックレビューなどを通じて、アート・テクノロジーなど幅広いジャンルを扱った記事を書こうと思います。また、役者としても活動しているので劇場などでお声がけさせてください!