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縁の下の力持ち!「畜産機械」の桁違いの迫力

畜産業の主役が動物たちやその側にいらっしゃる農家のみなさんだとしたら、今回の取材先はまさに名バイプレーヤー!畜産の設備や飼料づくりに関わる畜産機械どのように機能し、畜産業に貢献しているのかを学びました。

今回の主たる取材先は下記の3箇所。それぞれ全く異なる目的で畜産機械を製造しております。

取材先一覧
⚫︎中嶋製作所:取材では養鶏機器について
⚫︎ORION オリオン機械株式会社:搾乳ロボットや搾乳のための設備など
⚫︎独立行政法人 家畜改良センター茨城牧場 長野支場:餌の種の「タネ」!

はじめに、中嶋製作所での取材では、ヒヨコたちへのエサやりを行う自動給餌器そのものができるまでを実際に工場にて見学させていただきました。続いて、オリオン機械とのリモート取材では、搾乳ロボットをはじめとする最新機器について。最後に、家畜改良センターの長野支場では家畜が食べる牧草の「種の種」を刈り取る重機を間近で見させていただきました。

上記の3分バージョンと本記事でご興味をお持ちになったらフルバージョン(下記にも掲載)をご覧ください!本記事では、番外編として取材現場で見聞きしたことをレポートできればと。

①中嶋製作所のヒヨコの自動給餌システムと工場見学

中嶋製作所では牛、豚、鶏の幅広い動物の育成に関わる機械を製造しております。その中で今回の取材では養鶏機器の部分をお話ししてくださいました。具体的にはヒヨコたちへの餌をタンクから運搬して鶏舎まで提供するための機器です。そして、その機器自体がどのように製造されているのかを見学!

工場に到着するまでの間、工場の近辺にも興味深いものがありました。プラスチックの部品(お写真がなくスミマセン!)が積んであったのですが、それらは「生分解性プラスチック」製。つまり、土に還る素材が使用されていて、環境への配慮も視野に入れていることが分かります。今考えるともしかしたら、餌の受け皿の材料なのかな?

そして、工場内へ。中には畜産機械を製造するための産業機械が!機会を生む機械たち。こちらでは餌をタンクからパイプを通して運んでいく「ドライブユニット」と呼ばれる機器がどのように製造されているか細かく教えていただきました(本編 参照)。

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簡単に説明しますと、自動給餌器そのものは以下のように働きます。

①パイプの中に通された鎖にエサを引っ掛けて運搬する
②エサが目的地の鶏舎までたどり着いたら必要分、受け皿に流し込む

上記のうち、1点目を達成するにはチェーンをモーターと歯車で動かす必要があります(ベルトコンベア、専門的な言葉を使えば、プーリーの構造を想像していただければと)。そのお仕事をするのが「ドライブユニット」なのです。そして、取材ではこのドライブユニットがどのように機能するのか、そしてユニット自体がどのように製造されているかを聞きました。

2点目に関してはエサの受け皿「ホッパー」の穴が肝要。チェーンの駆動で運搬されたエサがこのホッパーの穴に落ちてそのままヒヨコたちに提供されます。そしてホッパー自体も金属製のパイプで吊り上げることが可能です。演劇をやっている身としては、照明器具を天井から吊るすためのバトンに近いと思いました。そのパイプを回転させて吊りロープを巻き上げるのです。パイプが回転する際に摩擦で傷つかないようにパイプを支える金物部品にも細かな工夫がありますが、それは本編にてご紹介。

ドライブユニットの筐体部分の鉄板の折り曲げやネジ締めなどにもオートメーションシステムが導入されています。僕個人は学生時代にものづくりの研究に携わっていたこともあり、レーザーカッターや3Dプリンタ等のファブリケーションのマシンは見慣れていたのですが、やはり産業機械の迫力の大きさに圧倒されました。その模様は本番組でも他のメディアでも確認できます。下記に1例を(この頃は中島社長は副社長)。

このほかたくさんの畜産機器にまつわるこだわりをお話ししてくださり、最後は縁の下の力持ちとして生産農家に貢献できることが励みになるとコメントしてくださいました。

②オリオン機械における最新の搾乳機器

次に、オリオン機械とはリモートで取材を行いました。こちらでは、牛をターゲットにしたお話が中心で、搾乳機器について幅広く教えてくださいました。搾乳ロボットについては、2019年の『なるほど!畜産現場3』でも少し取り上げております(下記参照)。

牛がゲートまで通れば、自動で搾乳ユニットが乳房に装備されて搾乳を開始して行きます。牛も1ヶ月ほどこの新しいシステムに慣れていくと、自分で学習して搾乳が必要な際にゲートに足を運ぶようになるんです。驚き。

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さらに、驚いたのは1頭ずつ搾乳をする牛を入れるゲート式だではなく、色んな構造を持った搾乳ロボットがあるということ。番組で触れたのは「ロータリー式」の搾乳機器です。メリーゴーランドのようにくるくると回るこの台座には最大80頭の牛が入れるように仕切りでスペースが確保されています。この1つ1つのスポットに牛が入るとすぐにロボットが出てきて搾乳開始!搾乳が終わればそのまま牛が出ていき、空いたスポットに新しい牛が入っていく循環システム。実際にロータリーを導入している農家さんの事例を見つけました!

このように搾乳が済んでいない牛と済んだ牛の経路を整理する必要があるとすると、各農家さんの牛舎に合わせて搾乳ロボットのラインを考えないといけないと分かります。中嶋製作所の中島社長が仰ったように、工場で均一に製造される畜産機器も最終的な現場合わせが重要なんですね。農家さんの予算や農場の面積、他の設備など、それぞれの顧客の状況に応じて畜産機器のニーズや相場の値段も変化するのでしょうか。

③家畜改良センターで活躍!牧草のタネづくりに関わる機械

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最後に、番組クルーで訪ねたのは長野県佐久市にある家畜改良センター茨城牧場長野支場。上の写真の通り、まるで特撮ヒーローが乗りこなすような大きな重機が出迎えてくれました(4メートルくらいです)!!こちらの機械は牧草の種を収穫するための重機なんです(本編参照)。

長野県佐久市は降雨量が少なく、涼しい気候であることからタネの栽培に向いているのです。したがって、こちらでは良質な牧草の開発を行なっており、育種改良を経て良質なタネを見つけだします。その種をこちらで量産して刈り取っていくのです。もちろん、一種類だけでなく多くの品種をそれぞれの収穫時期に合わせて刈り取っていきます。

だからこそ、上記の重機の調整は難しいのです。え?なぜかって?タネってとても小さいですよね?でも、その小さいタネをたくさん効率的に採取するのに大きな重機コンバインを用います。当然、目的の種だけでなく、ホコリや草など余計なものまで刈り取ってしまうのです。実はこの重機、後ろには排気口のようなものがあるのですが、そこから余計な物を吹き飛ばして除去します。でもでも!その風圧が強すぎれば、今度は大事な大事なタネまで無くしてしまうことになります。なので、ただ運転だけが難しいのではなく、余計なものをなるべく排除しながら目的の種子だけを集めるように刈り取る機能・吹き飛ばす機能を使いこなす必要があります。

それだけではありません。

多くの異なる品種のタネを時期に合わせて刈り取る際、重機の手入れをきちんとしなければ、目的の種子以外の別のタネと混ざってしまう可能性もあります。想像してみてください。あなたが喫茶店にいたとします。そして、ブルーマウンテンコーヒーを頼んだとします。かしこまりました、といったバリスタが前々からずっとコーヒーミルを使い回してたら、不安になりませんか?ブレンドになっちまう、と。

ということだと思います。

ピュアなタネを量産して保存するためには、余計な土や他品種のタネを除去しなければならない。だから、重機は運転する間だけではなく、その前後の点検も重要となるのです。タネと一口にいっても品種によってサイズや形がこんなにも違うんです!

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スケールの大きな機械を繊細に扱う、その大変さを聞かせていただきました。刈り取った種を丁寧に何段階もふるいにかけるなどして、純度の高いタネだけ抽出していきます。そうして採取できた種子は、実は一旦海外へ持ち運ばれるんです。より土地の広い場所でさらに増殖させて、再度輸入してようやく農家さんの元へ届きます。

農家さんが飼料作物を手に入れて動物たちを育てる手前に、こんな長いストーリーがあったなんて!畜産は奥が深いです...おや?

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ヤギちゃんです。実は、この長野支場では種子栽培だけでなく、ヤギの放牧も行っております。こちらのヤギは育種改良の研究のためにここにいるとお話を伺いました。こんにちは!ちなみに、上記の種子の生産を行う牧場の堆肥にはヤギのフンも活用されているようです。

様々な畜産機器をざっと見渡してきましたが、イントロのイントロ。それぞれの機械についてまだまだ知らないことばかりです。ですが、消費者の立場として僕らは畜産業における機械の活躍、そして働く人々の偉大さに触れましょう!

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