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サッカークラブのつくりかた #8 「TOKYO CITY F.C.2020年4月28日 #シブヤの日 」編

サッカークラブのつくりかた#7を書いた1月15日にはこんな事態になるとは到底想像が及びませんでした。

2020年4月28日

「渋谷の日」である今日、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、クラブの内外を取り巻く変化・いま感じている率直な思いを書き記します。


2020シーズン開幕へ向けて

前回の記事でも軽く触れましたが、2020シーズンに向けてクラブ内では意気揚々と様々な仕込みを始めていました。

常勤が1名から4名となり、質量ともに厚みを増したフロントスタッフ。

2人目のプロ契約選手となる柴村直弥選手の獲得を始めとした選手補強。

デザインを一新した新ユニフォームの発表。

2019シーズンを追いかけたドキュメンタリーの公開

組織面においても変化があり、2020シーズンよりスタッフの組織図を下図のように変更しました。

サッカークラブの多くは「強化部」と「事業部」という括り方が多いように感じますが、CITYでは「強化部」の上位概念として「CDD(Content Design & Development)」という概念をつくり、「クラブが持つコンテンツの1つとしてのトップチーム」という位置づけを明確にしました。誤解して欲しくないのは、トップチームの優先度が低い、という訳では勿論なく、トップチームというコンテンツを中心にクラブが持つ(あるいは新規開発する)他のコンテンツと有機的に連携させていこうという狙いによるものです。

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と、様々な変化や発表をしつつ2020シーズンは以下3つのKPIを掲げクラブとしての新たな事業年度がスタートしました。

・ホーム渋谷で応援してくれる人を1,000人に
・ホームタウンアクティビティを150回実施
・予算規模5,000万円台

ちなみに…クラブの予算について補足すると、2019シーズンの売上約1,800万円に対して2020シーズンは2.7倍となる5,000万円を売上目標に、支出については2019シーズンの2.2-2.5倍の範囲でコントロールするといった予算を組んで2020シーズンに突入しました。

(2019シーズンの売上及び支出等については下記アニュアルレポートをご参照ください)


コロナ禍におけるクラブ

ところが…2月下旬頃から新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に徐々に大きくなります。

2月・3月に予定していた主催イベントはほぼ全てが延期もしくは中止に。

3月15日に予定していた東京都社会人サッカーリーグ2部の開幕戦も延期になり、現状ではリーグ再開の目処は立っていません。

クラブでも3月30日に第一弾のステートメントを発表し、3月25日(水)から継続して以下の措置を実施して参りました。

・チームの活動(練習・練習試合)を中止
・クラブが主催するイベントを延期もしくは中止
・クラブスタッフはリモートワークを継続

これら措置は現時点では緊急事態宣言が発令されている5月6日までとしていますが、正直どうなるか分からないというのが実情です。

開幕へ向け心身ともにコンディションを上げてきた選手たちの落胆。新たなるシーズンの到来を楽しみにしてくれていたファンの方々の喪失感。クラブの新たな取り組みや可能性に期待をしてくれていたパートナーの方々・渋谷の方々の無念さ。

気持ちのやり場が無いコロナ禍はクラブの経営においても小さく無いダメージを残しています。

3月の実績を見ると売上は昨対比46%に落ち込み、2Q(4-6月)の見込みも2019シーズンと比べて非常に厳しい数字が浮かび上がります。法人化をして2期目となる2020シーズンは、前述の通り特に人材に対して先行投資をしていただけに厳しい局面が続きますが、ここは正に腕の見せ所、踏ん張りどころです。


コロナ禍における渋谷の現状

TOKYO CITY F.C.のホーム渋谷区では、2020年4月27日現在で累計151人の新型コロナウイルス感染症の陽性患者がおり、3名の方がお亡くなりになりました。

区内の障がい者福祉施設では計12名の感染が判明しているなど、引き続き予断を許さない緊張した状態が続いています。


一方で外出自粛による効果は随所に見られ、人の流れが大きく変わりました。


暗いニュースが続く一方で、渋谷らしい、未来志向の取り組みも増えつつあります。

CITY役員の酒井が2019シーズンに参加させて頂いた「渋谷をつなげる30人」のコミュニティがキッカケとなり、飲食店救済の動きが広がったり。

フードデリバリー利用促進キャンペーンが始まったり。

テイクアウト・デリバリーMapが作られたり。

と、苦境の中でも前を向いた新たな試みが続々と立ち上がっています。

このような取り組みに、時に勇気をもらい、時に刺激を受け、

「自分たちも大変だけど、困っている時こそ自分たちのためでなく、人のために・渋谷のために行動しよう」と改めて自分たちのアイデンティティに立ち帰りました。


今だからこそ立ち返るべきアイデンティティ

TOKYO CITY F.C.は「Football for good “ワクワクし続ける渋谷をフットボールで”」というビジョンを掲げています。

TOKYO CITY F.C._ご紹介資料_20200401.001

組織図の話でも少し触れましたが、CITYでは「フットボールから派生したコンテンツが渋谷中に溢れている状態をつくる」ことを目指しています。

「人々がどうやったらフットボールを見に来てもらえるか?」という考えがベースでなく、「フットボールがどうやって人々に会いにいくか?」という発想が根幹にあります。


突き詰めるとCITYがやりたいことは、「フットボールを通して渋谷を更に魅力的な街にしていく」ということであり、これがクラブのアイデンティティでもあります。

そのための手段として…「Jリーグ参入」を掲げて本気で目指しているのです。


2020年の渋谷の日である今日、CITYはこんなプロジェクトを発表しました。

元来「フットボールを通して渋谷を更に魅力的な街にしていく」という考えに賛同してくれた企業や個人がパートナーとなり、クラブを資金・物品・アイディア・ネットワーキング等でサポートしてくださり、そういった資産がクラブが取り組む事業の元手となり、CITYはいわば”コンテンツ開発カンパニー”としてビジョンに繋がるような、渋谷を更に魅力的にするための多様なコンテンツを開発してきました。

今回の発表では、その流れをもう少し短期的かつ今すべきことにフォーカスしようと、売り上げの一部を直接寄付することにしました。


前述してきたようにクラブは今経営的に非常に厳しい状況であるのは事実ですが、固定費を約3割カットしたり、外向けに発表していない物も含め週に2-3程度の新規事業案を実際にトライしてみたり、あらゆる手を尽くしながら日々全力疾走しています。


そんな状況下で、クラブとして売り上げの一部を渋谷区へ寄付する最大の理由は、僕らは渋谷にサッカークラブ(Jクラブ)を作ることがゴールではないし、今無い何かを新しくゼロから創造したいといったわけではなく、今そこにある渋谷の素敵なカルチャーに、フットボールを掛け合わせて新しいワクワクをつくりたいと思っているからに他なりません。

それが僕らが掲げている「Football for good “ワクワクし続ける渋谷をフットボールで”」というビジョンの真髄なのです。

渋谷は音楽やファッション、ストリートやベンチャー、本当に多種多様なカルチャーが生まれ育ってきた街です。僕らはそこにフットボールというスパイスを加えることで新たな魅力を引き出していきたいのです。

再びワクワクする渋谷を取り戻すためにも、出来ることから始めていきます。


クラブが出来ることは微力ですし、クラブ自身が持続可能な存在にならないといけないですが、このコロナ禍を乗り越えて様々な意味で骨太なクラブにしていきたいと思います。


かっこよくて、ワクワクする、そんなクラブを目指して。


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