ナイルの水の一滴
私には、好きな文がある。
志賀直哉の「ナイルの水の一滴」だ。
「人間が出来て、何千万年になるか知らないが、その間に数えきれない人間が生れ、生き、死んで行った。私もその一人として生れ、今生きているのだが、例えて云えば悠々流れるナイルの水の一滴のようなもので、その一滴は後にも前にもこの私だけで、何万年遡っても私はいず、何万年経っても再び生れては来ないのだ。しかも尚その私は依然として大河の水の一滴に過ぎない。それで差支えないのだ。」
一滴は唯一無二の存在である。しかし、大河の水の一滴はあってもなくても全体に影響はない。
そして最後の「それで差支えないのだ。」という全てを悟り許したかのような一言が心に残っている。
人間も、大河の水の一滴と同じような存在なのだということを自覚し、自然活動の一部として身を任せていくことも一興だと感じた。
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