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空想短編小説:真夜中の温泉

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人生に疲れたぼくは、ひなびた温泉宿でおかしな男と出会う。男は、大草原にアルマジロがたむろする光景を想像してほしいとぼくに頼むのだった。スランプの作家と青年が、閉じ込められた露天風…
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2023年7月の記事一覧

空想短編小説:真夜中の温泉7

いつの間にか、外ではかすかに霧雨が降っていた。

男とぼくは、黙って寝転び湯に移動する。
「さあ、想像してみてくれ。ここがサウナだと」
男は絶え間なく流れ続ける浅いお湯の中で寝転びながら、ぼくの横顔を見た。
「そんなの無理ですよ。だんだんと外も冷えてきましたし」
「そんなことはない。ここはサウナだ」
男はすっと起き上がると、タオルを巻いたまま、腰を宙に浮かせた。
「どうだ、エア・サウナだ。ざまあみ

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