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【社内勉強会】ユニコーン勉強会 #01

こんにちは。ZENKIGENサービスデザイン室の伊弉末です。弊社の新規事業創出の一端を担っている我々の部署では、ユニコーン企業を調査し、共有する勉強会を実施しています。隔週で開催している本勉強会ですが、今回みなさまに内容を一部共有させていただこうと思います。今回は米国と韓国のユニコーン企業2社に関しての内容です。

ユニコーン勉強会実施の目的

 勉強会実施の目的は大きく2つあります。


・ユニコーン企業がどのような成長を遂げたのか、何故成長できたのかのエッセンスをチームで分析し、知見を貯めること

・向き合っているプロジェクトに対してのブレイクスルーの引き出しを増やすこと

これまでのユニコーン企業の成長・失敗の軌跡は、新規事業および既存事業の今後の発展に役に立つと考え勉強会を実施し始めました。

ユニコーン企業の概要

ユニコーン企業の概要についてはご存知の方も多いと思いますが、まずは、定義について触れていきます。

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ユニコーン企業は、評価額が10億ドル以上(1ドル110円換算で1,100億円)、設立10年以内の非上場のベンチャー企業を指します。また、その10倍の評価額であるデカコーン企業も世界には点在しています。特にアメリカや中国にユニコーン企業は数多く存在し、2022年3月時点でアメリカの539社が最多となっています。残念ながら2022年日本国内ユニコーン企業数はわずか10社....極めて少数です。

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ベンチャーキャピタル(VC)の投資額が他国に比べて少ないことが主な理由の一つとして挙げられますが、アメリカの2%程のユニコーン企業しかないのが現在の日本の現状です。

AIを活用し採用支援に取り組むHRテック企業『Paradox』

ここから勉強会で取り上げたユニコーン企業を紹介していきます。

社名:Paradox  (2021年に誕生したユニコーン企業473社あるうちの一社)
創業年:2016年
場所:アメリカ アリゾナ スコッツデール
ドメイン:HRテック
事業概要:AIを活用した採用支援

 Paradoxは、AIを活用しバーチャルな採用支援を提供しているHRテック企業で、昨年評価額10億ドル以上を達成し、ユニコーン企業となりました。
自然言語処理機能を搭載し、採用候補になり得る人材の獲得など、採用業務を自動化する「Olivia」がサービスの目玉になります。創業者のAaron Matos氏は人の時間を雑務から解放することで、組織と人材の採用体験を変革する機会を見出し、2016年にパラドックスを設立しました。

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『Paradox』の成長を振り返る

ユニコーン企業になるまでの年数については平均より2.4年早く、ユニコーンラウンドまでの到達も平均年数より1.2年早く、短期間で成長してきたことが伺えます。

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現在のラウンドはシリーズC、2021年12月にWorkdayやindeedなどのHRテックに関わる企業から2億ドルの調達を達成しました。
次に具体的にParadoxが、採用業務を自動化する「Olivia」を活用してどのように採用支援を行なっているのかをUI/UXの観点で詳しくみていきます。

UI/UX①_エントリー機能

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出典:https://www.paradox.ai/products/text-apply
まずは、エントリー機能です。候補者がチャットでの対話を通して自分の情報を入力すると、会話型AIアシスタントOliviaが仕事をいくつかご紹介してくれます。2021年1月にParadoxはイスラエルのチャットボットSpetz.ioを買収しています。それによりOliviaは100以上の言語に対応することが可能になり、利用する人の人種の幅を大きく広げることができました。

UI/UX②_スクリーニング機能

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出典:https://www.paradox.ai/products/screening
次にスクリーニング機能です。候補者が過去の経験やエントリー動画を共有し、企業の求める人物像とマッチしているのかを会話型AIアシスタントOliviaが判断するようなスキームになっています。
最初に役割の要件をスクリーニングし、会話を通して候補者を選別、求職者からの質問にも答えることが可能です。

UI/UX③_スケジューリング機能

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出典:https://www.paradox.ai/products/screening
次にスケジューリング機能です。AIアシスタントOliviaが、採用担当者の空き時間から予定を自動調整し、求職者と予定を調整してくれます。Facebook Messenger、WhatsApp、WeChatなどの主要なメッセージングアプリ、AlexaやGoogleAssistantなどの音声アシスタントを介して会話が可能となっており、メッセージの受信方法を選択できるのは候補者にとって便利なポイントです。

UI/UX④_オファー機能

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出典:https://www.paradox.ai/products/screening

最後にオファー機能です。求職者に性格診断に回答してもらいながら、企業側は性格特性を考慮した上でジョブオファーを出すことができます。Paradoxは2021年8月に世界最速の人格評価であるTraitifyを買収 (Traitify:ビッグファイブの性格特性に基づき、画像ベースでの性格診断をモバイルで提供)しているため精度の高いマッチングを実現させる土壌を得ることができました。

まとめ

ParadoxはM&Aも積極的に行い世界各国に進出、2022年現在イスラエル、ベトナムにもオフィスを構えていました。世界をリードする多くの採用およびタレントマネジメントシステムとも連携、統合しながら一気通貫でのサービス展開を実現させているParadoxの今後の成長に期待が膨らみます。

韓国版スーパーアプリを目指すフィンテック企業『Viva Republica (toss)』

先程はアメリカのユニコーン企業でしたが、次は韓国のユニコーン企業であるViva Republicaを紹介していきます。

社名:Viva Republica
サービス:P2P決済サービス"toss"
評価額:26億ドル
設立年:2013年
【概要】
2015年に送金サービスとしてスタート
銀行業務、送金、クレジットスコア管理、金融商材など、さまざまな金融サービスを提供している。

詳しくみていく前にまずは韓国のユニコーン企業の概要について軽く触れていきます。

韓国の投資額は日本と同等ですが、ユニコーン企業数は日本の倍で、(日本10社/韓国18社:2021年時点)カカオトーク/Naver(出資してLINEを作った会社)など、世界的に使われるサービスを生み出しています。Netflixの韓国ドラマ『スタートアップ:夢の扉』というビジネスドラマが国内でも人気に火がついていたのは記憶に新しいと思います。

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出典:https://www.netflix.com/jp/title/81290293

創業者であるSG Lee氏はモバイルでの送金に不満を感じたことから創業しました。2015年に送金サービスとしてスタートした toss ですが、これまでに4,900万回ダウンロードされ、登録ユーザ数は1,700万人以上。現在、銀行業務、送金、ダッシュボード、クレジットスコア管理など、さまざまな金融サービスを提供してます。今回ご紹介するViva Republicaのサービスの目玉がこのtossです。

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『Viva Republica (toss)』の成長を振り返る


Viva Republica (toss)は2013年に創業してから8回にわたって資金調達を実施しています。直近の2022年7月には9回目の資金調達を達成、Sequoia Capital Chinaなど既存投資家がリードしたラウンドで1億7,300万ドルを調達したと発表しています。

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今後も継続して資金調達を目指していると各メディアが報じていますが、直近調達した資金は、ユーザエンゲージメントデータを利用して、銀行や証券・保険会社からカスタマイズされた商品をレコメンドする「ワンストップ金融アプリ」の構築に充てられる予定です。スタートアップ投資が全体的にシュリンクし高評価額が付けられづらい昨今ですが、Viva Republicaの時価総額は今回のラウンドで26億米ドルに到達し、累積調達金額は5億3,000万米ドルまでになっていることから更なる成長が見込まれます。
では、実際の事例を複数みていきます。


Tech事例①_FDS(異常行動検知システム)

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出典:https://blog.toss.im/article/toss-security-control

アプリ上には、悪性な取引を検出する機能であるFDS(異常行動検知システム)が搭載されています。実際に、1ヶ月間で悪性アカウント検出機能を通じて検出された悪性の疑いがあるものは合計18万9千件で日平均顧客550人のボイスフィッシング(オレオレ詐欺のようなもの)被害を防いでいます。フィンテックスタートアップとしてセキュリティ強化に力を入れている姿勢がわかります。

UX事例②_育ててみよう!定期積金

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出典:https://blog.toss.im/article/tossbankpress_petdeposit10

「Toss Bank」の発足後初の定期積金商品で、6ヶ月満期時最高年3%の金利特典を提供していました。納入限度は月最大100万ウォンで、毎週1千ウォンから20万ウォンまで納入可能となっています。加入時にもらえる動物の卵が翌日孵化し、6ヶ月間で10段階にわたって育つというゲーム性が特徴です。4種の動物が用意されており、毎週積立金の口座振替が達成すると最終満期時に伝説の動物に進化する設計が施されています。長期間、忍耐強く積立貯金をしていく時間を楽しめる時間に転換することで利用者のロイヤリティを向上させる企画を展開していました。

まとめ


Viva Republicaは徹底的にユーザーフレンドリーを追求したサービスを多数リリースしていることから、UXに重きをおいている印象を持ちます。また、デジタルに疎い層も獲得するために、デジタルでしかできない価値をうまく示しており、サイトの導線やデザインのクオリティが素晴らしかったです。デザイン経営が行き届いているのではないかと推察しています。
ビジネスモデルの観点、デザインの観点、テクノロジーの観点等様々な切り口で世界各国のユニコーン企業を紹介していきますので、引き続きご注目ください。それでは、今後のユニコーン勉強会のnoteをお楽しみに!

【参考企業】
Paradox: https://www.paradox.ai/
Viva Republica (toss):https://toss.im/

[出典]
startup-db:  https://startup-db.com/magazine/category/research/valuation-ranking-202203
paradox_UI/UX①-④ : https://www.paradox.ai/products/text-apply
Netflix_Startup:https://www.netflix.com/jp/title/81290293
tossfeed_UX①:https://blog.toss.im/article/toss-security-control
tossfeed_UX②:https://blog.toss.im/article/tossbankpress_petdeposit10




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