「アーバニスト ー魅力ある都市の創生者たち」
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「アーバニスト ー魅力ある都市の創生者たち」

2021年11月10日、表題の本がちくま新書より出版となった。著者は中島直人+一般社団法人アーバニスト。本自体は7章から構成されており、第1〜3章がアーバニズムやアーバニズムに関わる人(即ち「アーバニスト」)の歴史的な展開を、第4・5・6章が様々な分野を切り口とした「アーバニスト」の事例を描き、第7章で全体を整理するものとなっている。

第5章を執筆させてもらう機会を得たので、そこを中心に簡単に振り返りたいのだが、その前に、基本的な概念と出版記念トークの様子を簡単に紹介したい。

▼そもそも「アーバニスト」ってなに?

そのヒントはサブタイトルにある。「創生者」という言葉を分解してみる通り、都市に対して「創る」と「生きる」が交わった汽水域とも言えるスタンスで、都市に対して積極的に関与していく人たちと言えよう。成熟期を迎えた社会として、都市を(ハード的に)造るのではなく、クリエイティブなものとして創り直しながら、実際に都市にダイブして楽しみながら活動していく「アーバニスト」が今、求められる。また、その様な人たちが、真に都市をサステナブルなものとしていくのではないか。

したがって、アーバニストは職業ではない、都市に関するスタンスと言える。この言葉は一般社団法人の名称でもあるのだが、実は、あるデベロッパーの人よりの言葉、「都市を創るのは「都市計画プランナー」と言われてしまうとデベロッパーとしては距離を感じるが、我々も都市を創っている、これをどう表現すべきか」という、ちょっとしたディスカッションから生まれた(言葉自体はあったが仮説的な概念として明示された)。本書では、それを、都市計画プランナーから都市に飛び込んでいった人、ビジネスを進めつつ都市にポジティブな影響を与えていた人、アートの実践やキュレーションを行いながら都市に関わっている人…といった「創る/生きる」という概念まで拡張したものと言える。

▼11月11日の出版記念トーク

11月11日の夜、著者4名と担当編集の柴山さんにより書籍の紹介を行うと共に、2018年6月から「アーバニスト養成講座」というプログラムを展開している柏の葉アーバンデザインセンターディレクターである三牧さん(ちなみに我々一般社団法人の設立も同月)、2021年4月に一般社団法人for Citiesを立上げて「アーバニスト」のリサーチやプロデュースを行っている石川さんと杉田さん(for Cities Weekをちょうど開催中)をゲストにお呼びしてセッションを行った。

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議論は非常に多岐に及んだので簡単には整理できないのだが、キーワードとしては、例えば「都市を都市らしくする人材」、「都市計画の民主化」、「分野横断」、「まちに関わるスケール感」、「生き方」、「仲間」…等々が挙げられた。ゲストの方々も「アーバニスト」を明確に言語化している訳ではなく、本書でも「アーバニスト」を固定的に定義している訳ではないが、歴史的展開や事例を通し、その方向性を言語化したことに意義があるかと思う。「アーバニスト」の概念自体もまだ日々更新される段階だが、その意味では非常に「新書らしい」本と言えるのではないか。都市計画家の伊藤滋の言葉に「プランナーの仕事は”第一次近似界”をつくることだ」というのがある。プランナーから出発した(一般社団法人)アーバニストとして一定の役割を果たしたのではないか。

▼第5章 地域への眼差しがビジネスを優しく、強くする

5章_プレゼン

もともとプランナーで、いわゆる「ビジネス」を実践してきた訳ではない僕がこの章を担当することになったのは、前職で大学の産学連携コーディネーターとしてものづくりを含む企業と係わり、現在、まちづくりやサステナビリティをテーマとしたシティラボ東京のディレクターとして活動していることが大きい。このラボはビジネスやプロジェクトを通してテーマを実現していこうという施設で、サステナブル領域に特化したベンチャーコミュニティ(City Lab Ventures)も運営している。

とはいえ、バックグラウンドとしては「都市計画」でもあるので、本章の冒頭では、都市とビジネスの関係に着目して変遷を追ってみた。歴史を振り返ると当然ながら両者は一体であった。「家業」という言葉や都市のルーツの一つが「市(場)」であったことからも明らかだ。そして、これらのビジネスは単にお金の流通ではなく、例えば地域の祭り、伝統芸能、リサイクル産業、森林育成…など、社会や環境とも不可分だった。

しかし、産業の近代化や高度経済成長に伴い、「働く場」と「暮らす場」の分離が進む。並行して都市とビジネスも別物として捉えられるようになったのではないか。例えば、公害問題、都心と郊外ベッドタウン…といったイメージだ。都市の活動と空間は連動している。近年に至っては、ビジネスはグローバル化とバーチャル化が進み、都市を飛び越えて進んでいるようにも見える。

ただし、本章では、都市とビジネスは「再融合」の過程にあるという仮定を置いている。その流れとして大きく3つを挙げてみた。以下、時代を遡る形で考えてみたい。

一つは、近年のSDGsやESG投資など、経済自体が社会や環境を取り込んだものとして変容しつつあることだ。都市を「一定の地域性を持った経済・社会・環境」と捉えた時、大企業を始めとしたビジネスの主流自体も、具体の都市に再度フォーカスせざるを得ない。

もう一つは、創造の場としての都市への着目。日本では1990年代から都市再生が進む。ポストバブルの経済政策としての側面も強いが複合開発など従来のビル街や単なるショッピングセンターとは異なる市街地像が出てくる。21世紀初頭はクリエイティブ都市論やイノベーションディストリクトなど、都市の快適性や多様性が新しいビジネスや文化を生むという評価が定着してくる。ベンチャー企業に代表されるクリエイティブなビジネスもこの様な環境から生まれてくる。

最後の一つは、それ以前からあった地域住民による草の根型まちづくりの発展の流れ。1980年頃からの地域の自治、1995年阪神淡路大震災後に急速に増えているNPOなど、正に生活とビジネスの間に位置するコミュニティビジネスが生まれてきた。ただし、現代では市民の情報発信力やビジネスセンスの向上により、まちの福祉施設やカフェなど(これらも大事)に限らず、コミュニティでありながら全国展開する様な新しい展開も見られる。

これらの流れを、大企業、ベンチャー、コミュニティビジネスといったタイプとして想定し、良品計画、ボーダレスハウス、循環生活研究所という3つの法人の活動と中核を担う方々へのインタビューを行った。いずれも都市に関わる活動とビジネスが両軸となって展開していると思う。インタビュー対象の皆さんの考え方や生き様は、都市のレンズを通して見ても非常に魅力的なものであった(魅力が伝わらなかったら筆力不足と言うしかない…)。

これ以上は「本を買って下さい」なのだが。インタビューや執筆を通して思ったことは、ビジネスが積極的にアーバニズムに関わることで、ビジネスパーソンとしての「アーバニスト」が都市への理解や想いを強めていくと共に、ビジネス活動の主体としても成長していくことだ。それを本章のタイトル、「優しく、強く」に込めた。

もとより国内410万社の企業全てを対象に分析を行ったものではない。類型化や分析の軸についても、より望ましいものがあるかもしれない。奇譚のないご意見をいただきながら、分析や考察、事例の収集を進めて行きたい。また、この様な都市とビジネスの相互作用が生まれる過程には、都市とビジネスに係る多様な関係者の交流がある。一般社団法人の狙いも正に、その様なネットワークを構築していくことにある。「アーバニスト」は相互作用的に伝染するのだ(昨今使いづらい比喩になってしまったが😅)

是非、御一読ください!フライヤーは「ここをクリック」でダウンロードできます。小見出しまで載っているのでイメージが湧きやすいと思います。

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高度成長期真っただ中の多摩に育ち、ニュータウンの発展を傍目に育ったら、いつの間にか都市計画コンサルタントになっていました。その後、大学で産学連携に携わるうちにまちづくりだけでなくものづくりにもご縁。今は、持続可能な都市・社会を考えるスペースの運営などやっています。何ものだろう?