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「中小企業診断士」ってなんだ?

「中小企業診断士ってどんな資格?」
「どんなことするの?」
「何が必要なの?」

仕事をしたりSNSで発信していると、興味を持って質問をくださる方が時折います。

合格から5年経ち、僕自身これまでの活動や気づきを棚卸するタイミングになりました。この記事では、「中小企業診断士」の概要と、1次試験・2次試験の全体像について、いち現役診断士の視点で実務への役立ち状況など簡潔に触れていきます(学習方法などは他にも多くの題材があるので、ここではほんのちょっとしか触れません)

この記事がきっかけになり、実際に診断士を志す方がひとりでも増えて頂ければ幸いです。
※最後までお読み頂いた方向けのおまけもつけていますので、ぜひお読みください!

■こんな方におススメ
・中小企業診断士の仕事内容、試験概要に興味がある方
・実際にどんな仕事をしているのかを知りたい方

■著者の属性
・(2023年6月執筆時)40歳男性。既婚。東京都在住。IT業界勤務。兼業個人事業主
・2015年夏、33歳時に学習開始
・2016年1次試験合格(504点)、2次筆記試験不合格(237点)
・2017年2次筆記試験合格(245点)&口述試験合格
・2018年登録(2023年更新予定)
・合格前後に、法人営業~経営企画~新規事業開発へキャリアチェンジ



中小企業診断士って?

位置づけ

中小企業診断士は、経営コンサルタントとして唯一の国家資格

一般社団法人 中小企業診断協会HPより抜粋


厚生労働省の運営する職業情報提供サイト「Jobtag」では、以下のように紹介されています。

中小企業の経営者等からの依頼に応じて、企業の経営内容を診断し、改善方法を提案して支援する。(中略)企業経営全般に関わる課題であるため、支援分野は広い。専門知識を活用するだけではなく、企業と行政や金融機関を繋げるパイプ役になったり、国・自治体の中小企業支援施策の活用を助言したりする。

職業情報提供サイト「Jobtag」より抜粋


メリット

取得して5年。僕が個人として実感しているメリットは以下の通り。

❶最低限の体系的な経営知識
❷input→outputの習慣化
❸診る聴く書く話す創るの基礎スキル
❹魅力的な人々との繋がり
❺劇的に広がった人生の選択肢

知識のみならず、人生の選択肢が大いに広がりました。


診断士を目指した理由

僕の場合、以下の5つが主な理由でした。

危機感:環境変化への焦り
渇望感:徹底的に何かに打ち込みたい
知識欲:体系化して原理原則に
:究極のゼネラリストに
子ども:次世代に誇れることを

2016年、受験生時のメモ。今でも時折見返します


取得後、やっていること

診る:経営診断・助言
聴く:経営者インタビュー
書く:メディア執筆
話す:セミナー講師
創る:新規事業創造

強みをベースに機会を活かしていくことが大切。
特に、診断士のなかで「❺創る」が得意な人は意外と希少。僕自身は5つのスキルを絡み合わせながら活動しつつ、特に新規事業創造を強みにしています。

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試験勉強で学ぶこと

診断士の試験勉強では、幅広く以下を学びます。
1次試験は7科目、2次試験は4事例。

1次試験(7科目)※カッコ内は試験時間

❶(60)経済学・経済政策
❷(60)財務・会計
❸(90)企業経営理論
❹(90)運営管理(オペレーション・マネジメント)
❺(60)経営法務
❻(60)経営情報システム
❼(60)中小企業経営・政策

2次試験(4事例)※試験時間はすべて80分

・Ⅰ(組織・人事
・Ⅱ(マーケティング・流通
・Ⅲ(生産・技術
・Ⅳ(財務・会計


中小企業診断士になるための条件

1次試験→2次試験→実務が基本ルートです。

・1次試験・2次試験ともに、総得点の60%以上かつ、全科目で40点以上
・1次試験での合格科目は3年間の有効期限あり
・平均学習時間1,000時間、平均所要期間2年
・合格率約4%(1次約20% ✕ 2次約20%)の試験を突破
 ※1次試験合格者には「養成課程」という有償プログラム有
・2次試験は、筆記試験合格後、口述試験(ほとんどの人が通過)有
・15日間分の実務経験必要

多くの方が仕事をしつつ挑む試験。控えめに言ってメチャ大変です。でも、その先にはアツい未来が待ってます。
僕は約2年1900時間要しましたが、かけがえのないものを得られました。

ここからは、1次試験と2次試験にそれぞれ触れていきます。



中小企業診断士 1次試験の全体像

1次試験(7科目)※カッコ内は試験時間

❶(60)経済学・経済政策
❷(60)財務・会計
❸(90)企業経営理論
❹(90)運営管理(オペレーション・マネジメント)
❺(60)経営法務
❻(60)経営情報システム
❼(60)中小企業経営・政策

特に❷❸❹は2次試験にも直結。以下、科目ごとに実務への活用状況を触れていきます。


❶経済学・経済政策

企業・消費者・市場を分析する「ミクロ経済学」と、国や国家間の経済を分析する「マクロ経済学」。

得られたのは、人や企業の行動原理を抽象化・モデル化して考える視点。特に経営者・科学者・自治体の方とビジネスのお話をするときの前提知識として生きていると感じます。


❷財務・会計

企業の現状を把握・分析する「アカウンティング」と、未来の意思決定をする「ファイナンス」。

営業時代は取引先IRの把握、経営企画時代は事業戦略策定に役立ちました。経営分析・損益分岐点分析・意思決定会計定量的判断とその裏付けに生きてます。苦手意識を克服できてよかった科目。


❸企業経営理論

企業と事業の方向性を定める「経営戦略論」、ヒトが働く環境づくりの「組織論」、商品が売れる仕組みづくりの「マーケティング論」。

体系的に学んだことで、あらゆるビジネス判断に応用できる「体幹」が鍛えられました。営業でも経営企画でも新規事業開発でも不可欠の科目。知るほど奥深いです。


❹運営管理

製品をつくる「生産管理」と、商品を仕入れて売る「店舗・販売管理」。

工業→商業のサプライチェーンにおける原理原則を知り活用の瞬発力を体得できました。特に、企業の現場での問題把握や課題解決方法の整理・実行に役立つことばかりです。3S・ECRSの法則・QC7つ道具は、もはや行動規範。

▼例えばこんなふうに


❺経営法務

企業経営における法律・諸制度・手続など、会社法を中心とした基礎知識を学びました。

受験生時代は最後まで苦しんだけれど、やってよかった。経営企画では企業統合のPMIで、新規事業開発では知財会社設立で、それぞれ弁護士・弁理士の先生方へ相談する際の素養として役立っています。


❻経営情報システム

ITの構成要素を知る「情報通信技術」と、それらを経営戦略に融合する「経営情報管理」。

デジタル化やDXが叫ばれる昨今、ITはもはや企業活動の前提条件。僕は所属がSIerということもあり、ツギハギだった現場知識を整理・体系化するのに役立ちました。経営層との会話に生きてます。


❼中小企業経営・政策

中小企業の位置づけと経営特性・課題を把握する「中小企業経営」と、関連法規・政策を知る「中小企業政策」。

診断士ならではの科目で、受験生時代はひたすら暗記。でも今、新規事業開発や起業支援などの現場で自治体の方とのやり取りや白書の読解など、幅広く役立ち始めました。

▼例えばこんなふうに


図解したのはほんの一部。中小企業診断士の1次試験は出題範囲が広大かつ深く、知識の皿回しが過酷。そのぶん「界王拳」みたいなもので、学習過程を通して知識が体系化でき、ビジネス基礎力が大幅にアップしました。

なにより大きかったのは、自分の思考特性や「無知の知」に気づけたことでした。「ここまでは分かる。ここからは分からない」という線引きができ、専門知識などを臆せずに聴くことができるようになったのです。



中小企業診断士 2次試験の全体像

2次試験(4事例)※試験時間はすべて80分

・Ⅰ(組織・人事
・Ⅱ(マーケティング・流通
・Ⅲ(生産・技術
・Ⅳ(財務・会計

1次7科目で特に関連性が強いのは「財務・会計」「企業経営理論」 「運営管理」の3つ。 以下、事例ごとに実務への活用状況を触れていきます。


事例Ⅰ(組織・人事)

1次「企業経営理論」の経営戦略論/組織論と強く関連。

特に中小企業経営者の方と組織の話をするとき、経営理念をベースにしつつ、内外の環境変化をもとに現状把握(SWOT)→組織構造/組織行動/人的資源管理に当てはめながら施策整理。視点のヌケモレを意識するクセがつきました。


事例Ⅱ(マーケティング・流通)

1次「企業経営理論」の経営戦略論/マーケティング論と関連。

ターゲット/4P/ブランドの視点は、特に中小企業経営者や新規事業開発の支援で生きてます。「誰に/何を/いくらで/どこで/どのように提供し/何で尖るか」シンプルに整理。あらゆる場面で効果的に使えます。

▼例えばこんなふうに


事例Ⅲ(生産・技術)

1次「運営管理」の生産管理、「経営情報システム」と関連。

製造現場+営業のオペレーション改善によるQCD向上。つまり、高品質の商品・サービスを適切に顧客へ届けるために計画→生産→販売のバリューチェーンを繋げる視点。現場の改善でも新規事業立案でもめちゃ活きてます。


事例Ⅳ(財務・会計)

1次「財務会計」の応用編

・過去:財務諸表→経営環境分析
・現在:損益分岐点分析と改善
・未来:投資の意思決定と資金調達

定量データを見て、基本の指標を多面的に捉え手を打てるか?これに尽きます。受験時は苦労しましたが、この統合はAIに代替できないスキルだと感じます。

▼例えばこんなふうに


中小企業診断士の2次試験は1次に比べると出題範囲は限定的。そのぶん以下のような高度スキルが求められます。

❶設問の把握:背景、社長の想いを汲む
❷多面的な解釈:現場の問題を原理原則のレンズで捉える
❸端的な説明:課題と改善点を分かりやすく伝える

このスキルは、あらゆるビジネスシーンで生きてきます。



どうやって学習するの?

主に「独学」「予備校(通信)」「予備校(通学)」の3パターンがあります。

いずれにもメリットデメリットがあり、個々人の投下可能資金・生活リズム・通いの有無などが判断材料となるでしょう。
(予備校の種類や勉強法の是非については、ここでは触れません)

以下のあたりを参考にして頂くと、ご自身にあったものが見つけやすいと思います。


僕自身の合格までの軌跡や学習法は「中小企業診断士試験 一発合格道場」に寄稿した体験記をお読みいただければ嬉しいです。この時のご縁があり、2018年2月~2019年2月にかけて、道場の9代目「きゃず」として活動させて頂いていました。

ざっくりですが、こんな具合でした

1回目の挑戦(1次試験合格→2次試験不合格)
TAC通学(2015年8月~2016年10月)

2回目の挑戦(2次試験合格)
独学(2017年1月~2017年5月)
MMC通信(2017年6月~)
MMC通学(2017年8月直前期講習~2017年10月)

9代目としての活動は、最終的に電子書籍にまとまっています(Kindle Unlimited会員の方は¥0でお読み頂けます)

道場の記事は非常に質が高いので、独学・予備校に関わらず参考にしていただけると思います!


なお、道場の同じ9代目「きゃっしい」こと野網美帆子さんがその後「一発合格まとめシート」で、現在は試験対策のカリスマ的存在になっています。



さいごに

覚悟の分だけ、得られるものがある

この記事を読んで頂いている方は、中小企業診断士に興味を持っている方、受験生の方、合格者の方、様々いらっしゃると思います。

正直、大変な試験です。ごく一部の人を除いては、仕事や家庭とのバランスをとりながらの受験。犠牲にする時間もエネルギーも大きい。僕は要したのは1900時間。受験生時代、妻や家族に多大な負担や迷惑をかけてしまいました。

中小企業診断士の取得前後に、法人営業→経営企画→新規事業開発へとキャリアチェンジしました。今の仕事も、診断士への挑戦がすべての起点になりました。

簡単じゃないからこそ、人生を変える機会でもあります。

だからこそ、資格を通して得られた知識は貯めこまず、誰かのために使うと決めています。それが結果として、巡り巡って大きな力になると確信しているからです。


「3足のわらじ」で 事業立ち上げの伴走支援に携わる
資格取得のきっかけ、5年間の活動と変化を、中小企業診断協会の会報誌「企業診断ニュース」に寄稿させて頂きました。診断士の5つのスキル「診る」「聴く」「書く」「話す」「創る」の視点から触れています。

▲画像をクリックすると記事をお読み頂けます

中小企業診断士になってからの4年間で起きた変化
診断士になってから、具体的にどんな活動をして変化してきたかを知りたい方はこちらをご覧ください


自己紹介:事業を創る人の伴走者
著者は具体的にどんな仕事をしてサービス提供しているの?と気になった方、研修・伴走・執筆などの仕事依頼をしたい方は、こちらをご覧ください。


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note

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以上、ここまでお読みいただきありがとうございました!

あくまでひとりの偏った事例ですが、参考にして頂ければ幸いです。

また、中小企業診断士にご興味がある方がいらっしゃれば、ぜひ本記事をご紹介ください!
いつの日かご一緒できるのを楽しみにしています。

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