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母の手抜き料理

子どもの時の話。

我が家で焼きそばやお好み焼きが出てくるのは、決まって週末の昼どき。

うちの男どもは、野球が休みの時は遅くまで自分の布団から出てこない。

昼になるとのっそり集まってきて、ホットプレートの上で大量に作られた料理を好きな分だけ取っていく。

「昼は手抜き料理ね~、ほんとは一皿料理はしたくないけど、休ませて~」と言いながら母が作った料理はいつも一瞬でなくなっていた。

麺ばかり取ろうとすると、野菜も食べんかいとお目付け役の父から物言いが入る。

思えばこれまで、小うるさいことを言うのは決まって父の役目だった。

最近は「いつまで一人でおるつもりなんや」が口グセだ。


そんなのこっちが聞きたいくらい。


そんな週末を高校時代まで過ごし、大学から始めた一人暮らし歴は10年を越えている。

夕飯の時に並んでいたたくさんの皿は、今では実家に帰った時か、外で食べる時しか見かけない。



スーパーの牛肉売場に置いてある無料の牛脂。

買う肉は決まって外国産だが、「サービスの牛脂のほとんどが国産なので、これを使うと味のレベルが上がるんですよね~」とお笑い芸人のたけだバーベキューさんが言っていたのを聞いてからというもの、焼きそばを作る時も無料の牛脂を使って味のレベルアップに勤しむ。


母の手抜き料理は、精一杯の御託を添えた僕の本気料理になった。

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