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何かを避けて選択するとまた別の何かに遭遇する

人は何かのトラブルに遭遇すると、また同じことが起きる可能性を想定して別の方法を選択することがある。
しかしトラブルの要因が自然や想定外の事故だった場合、別の方法を選んでも何かが起こる可能性はゼロではない。

12月1日、金曜日。
私は札幌の医大へ行くため、富良野から札幌行きの高速バスに乗った。
普段から乗り物酔いが激しく、特にバスでの長時間移動は一瞬にして酔ってしまうので乗車時は必ず酔い止めを服用する。
酔い止めはびっくりするくらい効くけれど、猛烈な眠気に襲われるので服用した日は疲れて何もできなくなる。
それでも札幌に行く時にいつもバスを利用していたのは、JRに比べて料金が2000円近く安いからだ。

この日は前日からの大雪で高速道路が一部通行止め。
途中まで下道を使って運行されることになったが、今度は早朝に発生した住宅火災により渋滞に巻き込まれた。
その結果、通常だと3時間で到着するところを予定より2時間遅れの5時間かかって札幌に到着。
病院にはバスの中から連絡をして遅れて受診することができた。
けれど連休中に無事に富良野へ帰れるのか心配になった。

翌日の土日とも、仕事は完全に休み。
札幌には賃貸の家があり、自由に寝られる。
焦る必要はなかったのだけれど、やはり何が起きるか分からないのでなるべく早く朝のうちに富良野へ帰ろうと決めた。
高速バスを利用するとまた運休や通行止めに巻き込まれる可能性があるので、何年ぶりかわからないくらい久しぶりにJRを利用することにした。
料金はバスより高いけれど、とりあえず早く帰って安心したかったのだ。

7時台の特急列車に乗れたらいいなと前日には考えていたけれど、帰る当日の朝はあまりの眠さに起きられなかった。
正確には起きようと思えば起きられたけれど、特急は何本も運行しているので次の列車でもいいかと思ったのである。
もう少し眠りたいという意志の弱さが出た。

札幌駅に到着し、8時発の特急列車のチケットを購入。
滝川経由で1度乗り継ぎをして、10時48分に富良野駅に到着予定だ。

“午前中に帰ったら執筆やタスクが色々こなせる!”

少しワクワクすらしていた。
ここまで読んで、何となく予想がついている方もいると思う。
私が乗車したのはライラック5号だった。

発車をして30分程経った頃、突然アナウンスが流れた。
「急ブレーキをかけています!揺れに気を付けてください!」
繰り返されるアナウンスと必死さの伝わるブレーキに、少し恐怖を感じた。
一瞬地震でも来るのかと思ったけれど、スマホのアラートは鳴っていない。

やがて列車は緊急停止。

次のアナウンスで、
「車と衝突しました。しばらくそのままでお待ちください」
と流れると車内はざわつき始めた。
車が踏切に進入し、ブレーキをかけたが衝突してしまったらしい。

私の乗っていた車両は2両目だったけれど、衝突時の衝撃は感じなかった。
乗用車を運転していた人は無事なのだろうか。
自分の乗っていた列車が事故に巻き込まれたのは初めてだったので、大変な状況に遭遇してしまったと思った。
その後に感じた率直な気持ちが、またか・・だった。

長時間待機は確実だけれど、そのことに対する「またか」ではない。
二日連続でトラブルに巻き込まれ、しかも前日のような状況になることを避けて選択をしたのにもかかわらずこうなったことに対してだ。
災難と言うべきなのか、何か意味があって私が引っ張ってしまったのか。
それと同時に、今飛行機に乗ったら危険かとしれない、と考えてゾッとする。
早起きしてもう1本早い列車に乗っていたら・・とも考えたけれど、その選択をしたらまた別の何かが起こっていたかもしれない。

車両内でブログでも書こうかと思ったが、そんな気力もなくなっていた。
11時頃だったか、列車が運行再開。
しかしこの事故車両で旭川までは行けないとのことで、岩見沢駅で代行バスに乗り換えることに。
岩見沢駅に到着してからもバスの到着まで時間がかかり待機。
代行バスに乗り換えてからは、ライラック5号で停車予定だった各駅に停車した。

私の元々の予定では、滝川駅で降り根室本線に乗り換えて富良野に向かうつもりだったけれど、そのままバスで旭川駅まで行くことにした。
この時間だと滝川駅で降りても3時間も待つことになるからである。
滝川駅で3時間待つなら、バス移動+旭川駅で少し待機の方が気が紛れるという考えだった。
バスの中でネットニュースを見ながら、乗用車を運転していた男性が救急搬送され命に別条がないことを知りホッとした。

15時33分旭川駅発のJRに乗り換え、富良野駅に到着したのは16時43分。
寮に帰ったのは17時過ぎだった。
8時発のJRに乗り、帰宅が17時過ぎ。
フルタイムだ。
春先の農作業ヘルパーの仕事の時間帯と同じだった。
この間、全く何もしていない。
どうすれば早く帰れるかスマホで時刻を調べながら、ただJRとバスに乗っているだけだった。
それが本当にもったいなくて悔しかったけれど、これも経験のひとつだ。
あまりしたくない経験ではあるけれど、前日のバスの運転手さんやこの日の特急列車の運転手さん、救急隊員の方、たぶんJR北海道の方などいろんな方の対応を見ることができた。
もしかしたら対応に納得していなかった人もいるかもしれない。
けれど、乗客に誰一人怪我人がいなかったのは救いだと思う。

今回の出来事で教訓になったのは、長時間乗り物に乗車する時は何か飲み物や食べ物を持っていた方が良いということ。
私はおにぎりとチョコレートを持っていたため少しお腹を満たせたけれど、旭川駅到着まで何も買えず食べられずキツかった。
お手洗いも車内に備え付けられているけれど、なるべく乗車前にも済ませることをおすすめする。

富良野駅で特急料金のみ払い戻しをしてもらい、結果的に乗車料金は高速バスの料金とほぼ変わらなかった。
そのことが少しだけ私のもやもやを消してくれた。


こうして起きた出来事をnoteに綴れたのも、文章を書くのが好きな私だからできたこと。
そしていつ何が起こるかわからない人生、今この時間を大切に。
結局私はいつもその結論に行きつくのである。

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