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<読書> ライオンのおやつ

 今まで読んだ本の中から、気になった本について書こうと思う。

「ライオンのおやつ」 著者:小川 糸

 自分の最期の場所をライオンの家(ホスピス)に決めて、雫は独りでそのライオンの家があるレモン島にやってくる。もうすでに、体調はかなり悪そうだ。

 その様な状態の雫をケアする、マドンナをはじめとするライオンの家のスタッフたちはあたたかい。様々な事情を抱えているゲスト(入所者)たちや、タヒチくん、六花との交流もある。

 ライオンの家の週に1度のおやつの時間。おやつはゲストのリクエストで決まる。おやつの時間に、ゲストたちが歩んできた人生や、抱えている諸事情が見えてくる。

 私の母はがん専門病院の緩和ケア病棟で最期を迎えたので、その時のことを思い出す。

 入院当初の母は、まだ自分で食事をすることができて、言葉は少なくなっていたが、話しかけられるとゆっくりうなずいたりしていた。

 しかし、その一週間ほど後にお見舞いに行くと、寝たきりで、自分で体を動かすことができなくなっていた。もう話もできないし、食事もほとんど摂れなかった。最期のときを待っているような状態だった。

 このお話の主人公、雫は体が動かなくなっても、色々と考えたり、感じたりしている。私の母は何を想って、その時間を過ごしたのだろうか。そして、どの様な気持ちで、この世から旅立ったのだろうか。

 入院中の私の母には、父が泊まり込みで付き添っていた。子どもたちが幼かったので、私が母に長時間付き添うことはなかった。時々、お見舞いに行くことしかできなかった。仕方がない状況だったが、もう少し母に寄り添って、そして見送りたかった。少しだけ、後悔している。

 雫はライオンの家で、何人かのゲストを見送り、そして自身が見送られる立場になる。

 旅立つ前に、雫のお父さんが娘を連れてお見舞いにきてくれる。今は別々に暮らしているが、雫を大切に育ててくれた人だ。独りで最期の時間を過ごそうとライオンの家に来た雫だが、お父さんとその娘と対面することによって、自分を気にかけてくれる家族がいること、孤独ではないことに気づく。

 人生が終わるのは悲しいことだが、雫のように、歩んできた人生を受け入れ、温かい人たちに見守られて旅立つことができるのならば、幸せだ。そして、雫は見送ってくれた人たちの心の中で、思い出の中で生き続けている。

 これから私も、時々誰かを見送り、そして見送られる日がいつかくる。

 見送るときも、見送られるときも、静かに最期を受け入れ、温かい気持ちでお別れをしたいものだ。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます💕







 





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