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カンボジアの音楽エンタメ業界 その2   「音楽エンタメは基本タダのカンボジア」

前回の投稿ではカンボジアの音楽エンタメ業界の現状について説明した。
今回はカンボジアの一般消費者を取り巻く「音楽エンタメが基本タダ」の環境について整理してみる。

カンボジアの無料の音楽イベント

カンボジアで無料で音楽エンタメが楽しめるものは大きく3つある。
①大型野外イベント
②ナイトクラブのイベント
③無料動画配信(TV含む)
プノンペンに住んで日本と違うと感じるのは①と②がとにかく多く感じることだ。

①大型野外イベント

前回の投稿でもふれているがとにかく大掛かりな野外ステージを設営したライブが参加無料で楽しめてしまう。これらのイベントにのタイトルには主催する企業名が冠されている。ビールや携帯電話の会社が主な主催者だ。
年越しのカウントダウンや水祭り、プチュンバンというカンボジアのお盆の時期になると様々な場所でこれらの大規模イベントが無料で開催される。

カウントダウンライブの風景@シェムリアップ

②ナイトクラブのイベント

ナイトクラブで高頻度で開催されているイベントでは、「想像よりすごいクラスのアーティスト」が出演する。わかりやすくいうとMステに出ている歌手が家から10-20分程度のところにあるクラブでパフォーマンスしている。これらのイベント自体に参加料の支払いはなく、(席の予約代や一定額の飲食物のオーダーが必要な場合はあるが)消費者は飲み食いにお金をはらうものの、アーティストのパフォーマンスに対してお金を払っている感覚はないだろう。

③無料動画配信(TV含む)

YOUTUBEをはじめとした無料で動画を楽しめるサービスはあらゆる国ですでにスマホの浸透とともに利用者を増やしていてカンボジアも例外ではない。
動画を投稿し、広告収入で稼ぐというモデルは消費者にとっての「エンタメは無料で楽しめる」の認識を強める要素だろう。


熱狂的なファンを生めないエンタメ環境

これらのイベントに参加して思うことはとにかく参加者の途中入退場が多いこと。
自分でお金を払うという対価を払っていないので参加者には「とりあえず」そこにいる人もいる。つまりファンではない人がそこに参加できてしまう。そのような人は有名曲だけ聴いて帰る。あるいはその曲だけ騒いで疲れたら帰る。ライブあとの帰宅混雑が嫌なので先に帰るなど中座できてしまうのだ。
無料だからとりあえず参加してみる層が圧倒的に多く、熱狂的なファンがそこに埋もれたり、会場で分散してしまうと大きな熱狂のうねりが持続できない。このように無料のイベントそのものでは新しく熱狂的なファンを獲得するのは難しい状況がある。

いろいろ考えて個人にアプローチするより企業から確実に稼ぐほうが確実

無料動画、イベント、自分たち目当てでないイベント参加をフックにリアルイベントのチケットを買ってもらい、会場で物販を購入してもらい、さらにはファンクラブに入会してもらう。。。アーティストとファンの間の直接的なお金の流れが生まれえることでより収益性が高まる、、、このような1人の一般消費者にファンになってもらい、そこから直接収入を得るというモデルが浸透していない状況がある。
つまり1人のファンのLTVを高めることに関心が薄い。
これはカンボジアの個人所得が急成長しているとはいえ格差も大きく、国民全体で平均すればLTVを上げて、、と工夫をするよりも手っ取り早くフォロワーを増やしてその人気指標を以てCMや出演料のもらえるイベントに出たほうが簡単に稼げる。

とにかく人気者を演出できさえすればいい

熱狂的なファンを生めないと評した無料イベントだが動員は無料だけあって大量である。演者が代表曲を謳えばとりあえず参加している層も盛り上がるため「切り抜き」としては成立してしまう。SNS映えも狙える。つまりこんなに人気ですよ!というPR素材が演者はとれるし、参加者も「めっちゃ盛り上がった!」と動画投稿できてしまうのだ。
そのためお金を払ってでも来てくれるファンがいなくとも、無料イベントに出て盛り上がってる瞬間を切り取ってPRすればなんとなくフォローする人が増え、そのフォロワー数や盛り上がってる感じを企業広告への出演に結び付けられる。

これからもずっと音楽エンタメは無料なのか?

まだまだ個人当たり収入が低いあるいは格差がある市場環境
⇒ファンを獲得して収益を得る工夫をしても得られるものは少ない(コスパが悪い)
⇒個人が無理なら企業から得るしかないので広告や集客イベントに出演して稼ぐ
⇒人気ものを演出してさらに広告や集客イベントに出演
このサイクル「しか」選択肢がないとすれば音楽エンタメは
一般消費者にとって無料であり続けるしかない。

しかし、個人所得は年々増加しているし、イベント主催者はお酒という嗜好品を扱っているし、エンタメという大きなくくりではゲームセンターや映画館にはお金が支払われている。クリエイター個人が応援してくれるファンから直接対価をいただく、あるいは作品そのものに価値がつく(権利収入)ような状況は今後も生まれないのか?この辺りを次回考察したい。





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