リフォーム前の幡ヶ谷

住宅ローンか、賃貸か?

 無借金で毎日70点の生活をするのと、余裕を持って返せる額を借りることで毎日85点の生活ができるのと、どちらかといえば、85点のほうがよいだろうなと、ぼくは考えた。
 無借金でも毎日95点だよ、というなら、わざわざ借りなくてもよろしかろう。借金があるという事実だけで精神的にマイナス50点ぐらいのダメージを喰らうのだ、というなら、それはそれで借りないほうがよろしかろう。
 けっきょく点数を付けるのは自分自身にはなるのだけど、誰かが自分なりの点数を付けるヒントにでもなればよいと思ったので、ぼくがお金を借りてでもおうちを買おうかと思ったときの点数のつけかたについて、ここに書いてみる。

 たとえば、買うと3,000万のマンションがあって、買うことも借りることもできるとする。
 詳しい計算はあとに書くけれど、2018年10月のいま、あなたがもし3,000万の住宅ローンを組むと、銀行さんは月々8万円くらいの返済プランを出してくるだろう。
 で、この同じマンションの部屋を、あなたがもし借りるとすると、家主さんは月々13万円くらいの賃料を求めてくるだろう。

 賃貸よりローンのほうが月5万も安いなら買っちゃおうか、と思わせるような表記は、不動産のパンフレットではけっこうお馴染みの作戦であるので、気を付けてほしい。
 不動産のパンフレットには、月々の金額の横に小さい字でこう書いてあるはずだ、「35年ローンで金利が変わらない場合」と。

ローンの期間について

 いまの住宅ローン金利は、大手都銀で一番いいケースだと、0.625%になる。これは1年間のあいだに払わないといけない利息の割合だけど、住宅ローンはふつう1年間では返しきれない。
 ローンの期間が長くなればなるほど、利息のうえにさらに利息が載る。雪だるま式だ。

 3,000万を0.625%で35年借りた場合、利息は合計で340万くらい、元の金額の10%以上になる。これがいわば、銀行さんにお金を用意してもらうための手間賃であり、彼らの商売、飯のタネである。
(細かい計算をしたい人は、「複利計算」とか「住宅ローン計算」とかのキーワードで検索すれば、計算してくれるサイトがいろいろ出てきます。)

金利の変動について

 いまの日本は、金利が極端に低い。90年代のバブル崩壊で大きく下がって、00年代以降さらに下がって、それからずっと低いままになっている。
 これは、経済的にはかなり不自然で不健康なことである。「金利が近々上がるかもしれない」みたいな噂は、定期的に耳にする。

 もし、0.625%で3,000万を35年ローンにしてたけど10年後に金利がどーんと3%にまで上がったとすると、11年目からは月々の返済が10万円くらいになる。利息の合計は1,100万くらい、元の金額の40%くらいにまで膨らんでしまう。

賃貸の金額の高さについて

 たとえ金利が3%に上がっても、月々の支払は、賃貸よりはまだ安い。
一般的に、賃貸では1年間あたり、物件価格の5%くらいの賃料を取るらしい。一般的な賃貸の家主さんというのは、それくらいもらっとかないと割に合わない商売なのである。

 賃貸ではまず普通、35年もずっと住みつづけてはくれない、空き部屋のあいだは家賃は入ってこないから、その分を余分に取っておかないといけない。
 長く使ってれば修理やリフォームも必要になる、その分の費用も勘定に入れておかないと。
 もしも火事や地震や洪水なんかがあったら、いくら保険があったって、大損になってしまう。

 こういう、賃貸の家主さんが心配しないといけないようなことを、家を買ったあなたは自分のこととして全部引き受けないといけない。
 そういう、心配事を引き受けるための手間賃のようなものも、賃料には含まれている。

住宅ローンか、賃貸か?

 正直なところ、そういう手間賃を払うことが嫌でないなら、賃貸のほうが楽だし、自由でもある。心配事は少ないし、何かあって住み替えたくなってもたやすく引越しできる。
 おうちを買ってもあとで売って住み替えることはできるが、おうちを売るには早くても数ヵ月かかるし、登記だの売買契約だの手続きが相当めんどうだし、前のおうちが売れるまではローンの支払いが二重になるし、売買の手数料だってずいぶん取られる。

 ただし、そういう手間を自分で引き受けておうちを買うことのメリットも、いくつかはある。

 まず、月々の出金は抑えられる。
 あるいは、同じ出金の額で、より素敵な(≒より値段が高い)物件に住める。

 それから、物件を所有できる。
 賃料は払ったらそれで終わりになるけど、ローンの返済なら返した分だけ自分のものになる。もし物件を売った時には、返済が済んでいる分のお金は自分の懐に戻ってくる。(よっぽど値が下がっていたら別の話だし、そうなってしまう危険もあるのだけれども。)

 もうひとつは、物件を自分のものとして、好きな普請ができる。
 リフォームだ、いやリノベーションだ。床を引き剥がせ、壁をぶち抜け、天井なんか引きずり下ろせ、ショウルームで見た夢のようなあれやこれやを自分のおうちに入れるのだ。
 しかも最近は、住宅ローンの低い金利で、リノベ費用がまかなえる

 すいません少し興奮してしまいました。

 そのようなわけで、より素敵な毎日85点の生活を目指す、ぼくたちのささやかな普請道楽が始まったのです。

 この記事のヘッダ画像は、リフォームする前の間取りと写真です。