読書感想文「アイルランドの地方政府――自治体ガバナンスの基本体系」マーク キャラナン (著), 藤井 誠一郎 (訳)

 大著の学術書である。ただ,これを遠い異国の小難しいだけの本と片付けることができるか。ノンである。彼我を比較し,我々の地方自治体の現場を照射するのに,これほど適切な一冊はないのではないか。
 議員の活躍の意義づけ,地方政府の行政サービスとはいったい何か,他機関との関係とマネジメントなど,まさに「地方政府」を概括的にとらえた一冊であり,地方と中央,執行機関と議会など地方におけるガバナンスを概括的に描いている。はたして,我が国の地方自治においても,同様な類書があっただろうか,と思い巡らすのだが,浅学な身としては思い浮かばない。
 何より,驚いたのが,1999年にアイルランドでは地方政府に関する憲法改正,2001年には地方政府法が成立している。日本では1999年に憲法改正に匹敵する地方分権改革一括法の成立,翌2000年の施行である。この同時代性に着目せざるをえないし,第1章「地方政府の役割」は国を問わず普遍的な価値を持つ。座標を確かめるために手に取りたくなる,そんな本である。


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