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読書感想文「祖母姫、ロンドンへ行く!」椹野 道流 (著)

 先達の言葉である。
 祖母自身の興味や関心もあったことだろう。だが、人生をどう生きるか、日々をどう注力して過ごすかを意識し、それにエネルギーを使ってきたこの祖母にとって、大学医学部を出た孫娘にどうしても言っておかねばならないことを伝えるために、異国の地へ出発することを息子たちに承諾させたのだ。孫娘には傍迷惑な介助旅行と思わせつつだ。
 努力と自信。たとえば、化粧をするとはどういうことなのか。社会や世間の中で自分をどう置くかを考えにはどうしたらいいのか。我儘なふりをした祖母は軽々と言語化してみせる。とりわけ凄いのは、いよいよ帰国が迫る中、謙虚と卑下について語る段だ。「自信がないから、自分のことをつまらないものみたいに言って、相手に見くびってもらって楽をしようとするのはやめなさい。それは卑下。とてもみっともないものよ」。「胸を張って堂々と、でも相手のことも尊敬してお相手をする。それが謙虚です」。辞書編纂者よ、これが定義だ。
 自分の体力をかけて、孫娘に自分のポリシーと生き様とともに言葉を残した。ホスピタリティーの権化であるCAさんや一流ホテルマンたちとの間で、孫娘が掴んだ「発見」を残してあげた。天晴れ!であると思うし、我が身を振り返る。カッコいいジーさんであろうとすることに手を抜いちゃいけないな。


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