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読書感想文「行動主義 レム・コールハース ドキュメント」瀧口 範子 (著)

 混乱と矛盾と理不尽がそこにあるとき、カリスマとどう向き合えばいいのか。
 ビジョナリーであり、リソースを投入することを決断し、新規の案件を獲得する。つまり、経営者のそれだ。だが、レムは、同時に批評家であり、編集者である。ウチ側の人っぽくない。なのでマネジメント・スキルには疑問がつく。いや、タスクやゴールに気が向いても「マネジメント」には興味がないんだろう。
 世界中にクライアントを持ち、世界中の人たちが関わりを持ちたがるカリスマである。テクノロジーが進歩した社会における建築を作ってみせた人だ。そして、自身を近代建築の巨匠たちの系譜を継ぐ者としての意識もそこにあるのだろう。
 「行動主義」のタイトルは皮肉だ。ジッとしていられず、ドタキャンの多いこの人物へのインタビューに苦労した著者が揶揄したものだ。それと同時に、コンペに勝つために、他の参加者が手を動かし、線を引き、理想的なカタチを描き出して模型や美しいプレゼンテーション資料を作ることを汗をするのに対し、調査し、クライアントの状況を割り出し、前提条件を横殴りにするような力技を駆使し賞賛を得てしまうほどの勝利を収めるのだ。行動よりも頭脳で勝ちに行く。
 現代の建築界の「軸」がどんな人物なのかを知っておくために読んでおいていい本だ。難しい人だが。


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