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あわてんぼうの彼のこと

職場でサンタクロースの話になった。その場に子を持つ親が多かったので、論点となったのは「いつまでサンタクロースからプレゼントをもらっていたか」ということ。ここでのポイントは「サンタクロースを信じていた年齢」ではなく「サンタクロースからプレゼントをもらっていたか」だった。

私が記憶にあるのは8歳のクリスマスである。例年通り、サンタがプレゼントをくれるのだと思っていたが、母からカミングアウトを受けた。

「実はサンタクロースは7歳までの子供にしかプレゼントを配ることが出来ないの。でもね、サンタさんから"これからはお父さんお母さんがクリスマスにはプレゼントをしてあげてください"ってお手紙がきたの。だからこれからクリスマスプレゼントの欲しいものはお父さんお母さんに言いなさい」と。

私はこれを素直に信じた。8歳上の姉も、4歳上の兄も、サンタからプレゼントをもらっていなかったので。もちろんこの時は去年までの兄と姉のことなんか忘れていたし。
そして、その年のクリスマスからは親からプレゼントをもらってはいたが、それでもなおその時はサンタを信じていたと思う。後になってあのタイミングは姉が高校へ、兄が中学へ進学した年ということに気づくのだが。

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最近では、「どんなことであろうと子どもに嘘をつくのはよくない」ということで、サンタクロースはいないと教える家庭もある。ただ、私はなるべく信じる機会を与えてほしいと思う。

それは、目に見えない世界があることを教えるためだ。

言葉で世界を築くこと。これは読書への関心にもつながると思う。そして何より、目に見えるものだけしか信じられないということは、恐ろしいことではないか。想像力にもつながると思うが、十分に知らない世界を思い浮かべ、思いを寄せる行為そのものが大切であると思うからである。

実際、私が幼稚園教諭をしていた時に担任をしていた子にもサンタはいないと教えられた子がいた。3.4歳児、まだみんなサンタの存在を疑うことのない友達の中で、「本当はいないってお父さん言ってたもん」と皆の前で主張をした。この場において、幸せな子はいない。いないと言われた子どもたちだけでなく、お父さんの言葉の言葉を信じて、皆を悲しませることになった子自身もかわいそうでたまらなかった。

険悪になりつつあったので介入をしようかな…と思っていたのだが、「信じている子にしかサンタは来ないんだよ」というおませな女の子の一言で、その場は落ち着いた。

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北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)の恒例イベント「サンタクロースの追跡」をGoogle Earth上で見ることがある。あれが意外と面白い。

リアルタイムで今どこでサンタがプレゼントを配っているのかが分かるアニメーションを、デスクトップ上に表示しながら仕事をするのが今年も楽しみだ。

今現在、本当にサンタクロースがいるかと言う質問に答えることができないが、「サンタクロースを疑いもなく信じていた幼少期があってよかった」ということは断言できる。

今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。