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Dead Head #74_171

「どんな?」
「短い旅をした仲で。その子と」丸めた古新聞の束を脇に挟み立ち上がる。
「旅を?そんな仲で、どうなったのか気にならないのか?」非難めかしたように、本屋は目を細める。
「薄情と言われれば、それまで」ばつが悪いまま腰を上げる。
「それでいいのか?」俺の背中に本屋は言葉を投げかける。
「ああ、それでいい」背中で呟く。
 ベンチに腰掛け、夜空を仰ぐ。数えるほどの星が、おぼろげに光っている。何かが足りない。喪失感?そんな清廉な感情ではない。
 もらった新聞紙をベンチに広げ横になる。残りを体に巻く。
 ようやく寝入り掛けた頃、客が来る。
「言ったね。嗅ぎ回らない方がいいと」シャチョーが、俺を見下ろす。