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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #85_276

 劉は周りを見回す。玻璃戸で仕切られた部屋。そこに、月明かりが差し込んでいる。
 劉は静かに部屋に入る。事務机の上に腰を下ろし、机の上を眺める。そこには「労働日報」という報紙。それを手に取り、月明かりの下に置き劉は読み始める。
『新政府組閣人事決まる。昨夜、新政府は組閣人事を発表した。革命臨時政府は新政府人事として陶党首を長に国務大臣は×××、情報通信相には徐進達氏・・・が任命された。臨時革命政府は新政府へ速やかに移行し、旧政府の犯した開放経済政策に伴う悪弊の根絶に早急な対処を行う。以下、逃亡・手配中の旧政府幹部の氏名を記す。×××・×××・×××××・・・。自ら出頭すればそれなりの恩赦も考慮する旨・・・』
 劉は報紙を握りつぶす。部屋の隅に叩きつけ、劉は思う。たかが網絡を支配しただけで大臣になったのか。徐進達。


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