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Dead Head #55_152

「どんな?」
「人の本性に反した」
「何言ってるの?」
「始まりと終わりは、自分の意志が関与していない。本来は。重力を無視してベランダから跳んだ」
「跳んだ?そんな感じじゃ・・・。ちょっとイカれたこと頼まれたけど」
「どんな?」
「携帯、捨ててくれって。公園のドブ池に投げ込めって」
「塵箱に放り込んだんだ。手抜きして」
「時間がなかったのよ。今も。もういい?」
夕闇に白ブラウスの背中を向け、女は歩み去る。
「眠れなくなったんだ。塵箱の携帯が鳴ったおかげで」呟きを聞く相手はいない。
 その夜、カプセルホテルへ。なかなか寝付けない。寝床が柔らかすぎる。カプセルの夜空は五十センチの高見。星は勿論瞬かない。