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Dead Head #73_170

「余分な新聞、もらえないかと。急に肌寒くなって」ポケットから文庫本を出し、表紙を掲げる。写真箱で拾った本だ。
「SFか。暫く読んでない」本屋は本を受け取る。頭から黒縁眼鏡を戻し頁を捲る。うつむいた顔を長髪が覆う。
「どうです?」
「もう、夏も終わりだ。今夜はベンチじゃ冷えそうだ」本屋は、古新聞の束を放り投げて寄越す。
「ところで、最近何かありました?この辺りで」
「この辺り?代わり映えすることはないが」本屋は眼鏡を頭に持ち上げ、鋭い眼を見せる。
「この間、飛び降りがあったマンション。父親に次いで息子も」
「ああ、そんなことあったらしいな。気になるのか?」
「それが、ちょっとした知り合いで」