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Dead Head #53_150

八 あの女
 署を出る。あてもなく歩きながら思う。ヒロシの父親のことだ。アスファルトに白線で囲まれた理由を。あの女。携帯電話をゴミ箱に捨て去った。あの女を見つければ、何かわかるかもしれない。だが、どうやって?懐に手を入れ、ヒロシから預かった財布に触れる。このまま、どこかにフケてしまえば済むのだ。だが、それでは自分をもっと貧しい人間にしてしまうだろう。
 宅配便の看板を掲げた米屋。段ボール箱を貰い、ランドセルをしまい封をする。伝票に住所を書こうと、財布から離婚届の切れっ端を取り出す。その時、何かのカードが財布からこぼれ落ちる。派手な桃色のカードを拾う。そこには 『出張マッサージ女教師専科』とある。米屋の主人が覗き見る。興味をそそられたようだ。
「カミさんに叱られるぜ」そそくさと、カードを財布にしまう。