見出し画像

Dead Head #61_158

 翌朝。バスは目的のターミナルに定刻通りに到着。慌ただしく、通路には降車の列。こちらは、身を潜めるように暫く座ったままでいる。
 あの作業着。途中から乗り込んだ男が最後に降りて行く。降車口に人影がなくなる。最後に、ようやく席を立ち上がる。バックミラー越しに、運転手と目が合う。何の意見を交換すればいいというのか?
 バスを降りる。自ずと辺りを見回す。先にバスを降りて行った乗客たち。もう姿が見えない。そして、あの作業着も。
 バスターミナルを出る。ふらふらと街の方へ向かう。相変わらず寂れた街だ。在来線の駅までは、寂れた商店街を抜け数分の距離。何度も、その街路を往復する。同じ顔がないか、確かめるために。着ているものに騙されてはいけない。目つきと顔の輪郭は嘘をつかない。