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Dead Head #35_132

「ヒロシか?」老人の顔がぎこちなく緩む。
 ヒロシは怪訝そうに老人の顔を見上げる。
 西瓜の食べかけがころがった縁側。そこに座り、三人、茶畑を見下ろす。暫く、誰も口を開かない。気づけば、ヒロシは縁側に丸まって眠っている。
「あの男、死んだか・・・」ヒロシの寝顔を確かめ、老人がおもむろに口を開く。
「はっきりとは・・・。それで、ヒロシの母親は?」
「ここには、おらん」
「どこに?」
「ヒロシは預かる。あんたには世話になった。ここまで連れて来てくれて助かった」老人はすくっと立ち上がる。俺の顔をじっと見下ろす。話は終わりだ。もう帰っていい、という意味だ。ヒロシに目を向ける。ヒロシは眠ったままだ。
「じゃあ」それ以上、何も告げることはない。