Dead Head #33_130
「名に込められた意味さ。そろそろ行くか」例の一万円で勘定を済ませる。釣り銭をしまい、ヒロシに札入れを返す。
「静岡かもしれない。かあの居所」自転車を押しながらヒロシに振り向く。
「どうしてわかる?」ヒロシは俺の顔を見上げる。
「あとで話す。それより、今夜の宿だ」
公園で野宿というわけにもいかない。ヒロシみたいな子供連れでは尚更。
二人、暫く歩く。やはり、ここしかない。泊まり四千円也。あのビニール目隠しの裾が揺れている。青いカーテンをくぐる。駐車場に車が数台。部屋は空いているだろう。
札入れを借り、前金を払う。眠気で萎れたヒロシをおぶい部屋に入る。ダブルベッドにヒロシを寝かせ、布団を掛ける。風呂場に入り、久しぶりの熱湯を体に浴びせかける。備え付けの髭剃りで髭を、そして頭を剃る。終わると鏡を見る。痩せてはいた。