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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #83_274

 蘭は電脳の画面を覗き見ながら七喜《セブンアップ》のプルトップを上げる。
「網絡に繋ごうと。やっぱりだめだ。徐は網絡を押さえてる」
「徐って誰?網絡って?」蘭は相変わらず画面を覗いている。
「徐は黒客《ハッカー》。網絡はデータが流れる路さ」
「ふうん。おい見ろよ。何か出てきたぜ」蘭は七喜《セブンアップ》を咽喉に流し込む。
「何?」薫陶は画面を見入る。
 
 劉は目を覚ます。夜露に濡れ、冷えた体を身震いさせ。そこはどこかの草むらだ。劉は思い出せない。トラックを飛び降り、どうやってここまで来たのか。擦り傷だらけ身体に夜露が沁みる。
 劉は立ち上がる。露出した肌を手で拭い。周りは闇夜に包まれ、遠くにも街灯すらない。


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