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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #81_272
歩くうち、夜が明けてくる。自分がどこにいるのか、劉には見当も付かない。そこは荒れた土地が延々と続く、見捨てられた場所。
陽が高くなる。熱気が蜃気楼のように立ち上る。劉は空腹を堪えながら、当て所もなく歩き続ける。やがて、力尽きて倒れるまで。
薫陶と蘭は施設を抜け出し、誰もいない市街地へ。
「もうすぐ俺の隠れ家だ」と、蘭。
蘭の後を追い、薫陶は路地を彷徨う。人気のない路地には、塵芥が吹き溜まっている。例のビラが至る所に貼られている。
「ここだ」路地裏で佇み、蘭は辺りを窺う。地下室の隠れ扉を開けて中へ。薫陶も後に続く。
蘭は蝋燭を灯す。隠れ扉の中は、転売屋の倉庫のようだ。梱包が封を切らず積まれている。