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Dead Head #65_162

 いつの間にか、うつらうつらしている。湿った夜風が冷たい。
 腰を上げ、食堂を探す。カツ丼をかきこみながら、相席客から視線をずらし壁のテレビを見上げる。秋の行楽情報にスポーツ行事。少年野球大会。その映像は連想させる。俺が轢いた盲目の少年、そしてヒロシを。ダブって見えてくる。亡くした少年と、ヒロシが。何故、ヒロシのことが気に掛かる?公園でバットを振り回していただけのヒロシが。なんで、俺はヒロシを母親に届けたのか。届けて、終わらせてもよかった。ヒロシの親父がなんで死んだか。どうして、俺が・・・。ただ情をだしただけなのだ。俺は、こうして逃げたかったんだ。何をしているのだろう。俺は。ただの元鉄道員風情が。
 勘定を払い店を出る。雨の中、バスターミナルまで走る。公衆電話を見つけ、離婚届の切れっ端を取り出す。電話を掛ける。ヒロシの祖父の家に。