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Dead Head #57_154

 突き当たりの部屋。硝子戸に金文字。金融会社らしい社名。
 ドアを開ける。若造が、一瞬、俺を見る。何もなかったように奥の衝立の裏へ。にわか演技に飽きたとみえる。
「何かご用で?」デスクに座る男。日本語に完全同化を拒む中国訛で言う。
 俺は頷く。男は席を立ち、手前のソファを指さす。ソファに座る。その部屋を見渡す。神棚、飾り物らしき刀剣、角樽。『福』の字が逆さになったペナント。違和感とアンバランス。
「おたくの若者、番してる部屋のことだ」
「あなた、どういう関係?」
「ちょっとした知り合いだ。その住人と」
「あの部屋、抵当に入っていてね。我々が管理を引き継いだ。あんなことになったんで」
「管理というのは、不法占拠という意味か?彼の国では」
「あなた、人聞き悪いこと言いますね」