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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #80_271

「それに従ってるわけ?おとなしく」
「ああ、何せこの国のトップ、教祖様だからな。それを信じる親なんか、ありがたがって仕方がない。ガキの食い扶持、気にしなくても済むし。前の政府の一人っ子政策なんか、誰も守ってなかったからな。食いものをあてがうのも大変だった。今度は国が数多《あまた》のガキの面倒みてくれる。らしい」
「成功したのか・・・。革命は」
「どうせ、そのうちに倒れる。この国の倣《なら》いだ」
「倣い?」
「歴史は繰り返す。それで、逃げるだろう?お前も」
「ああ」薫陶は頷く。
 劉はトラックから離れ、側溝に身を隠す。じっとしたたま暫く眼を閉じる。車が近づく音は聞こえない。劉は身を起こす。道を戻り始める。自分が運ばれてきた道を。


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