電脳病毒 #12_202
その夜、電視台の新聞《ニュース》は電脳電影学院の出火事件を手短かに伝えた。研究室が全焼し、五十数台の台式計算机《デスクトップパソコン》が灰になったことを。出火原因は調査中とされた。
だが、電視台《テレビ局》には犯行声明が届けられていた。声明文には、政府の電脳及び電網化推進政策への抗議文が『紅星電脳連盟』という署名付きで認《したた》められていた。電視台は、この声明文を公にすることはなかった。
数日後、劉は延焼した研究室の前に立つ。室内は煤け、台式計算机《デスクトップパソコン》は溶けどれも形を留めてはいない。
「進展は?」現場検証の捜査員の一人をつかまえ、劉は尋ねる。
「検証中だ」捜査員は言葉を濁す。
歩み寄った背広姿の男が、捜査員の肩を叩く。敬礼すると、捜査員はその場を離れていく。
「電脳病毒《コンピューターウイルス》の仕業だ」背広が言う。
「病毒《ウイルス》・・・。何故そうだと?」