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鳥丸地区コミュニティ協議会 - NPO法人頴娃おこそ会 加藤潤さん①

本記事は、鹿児島県の令和5年度 地域資源活用・協働促進事業「地域連携アドバイザー派遣」を活用して行われた企画です。


2023年10月31日に、薩摩川内市にある鳥丸地区コミュニティ協議会にて、地域連携アドバイザー派遣が行われました。

アドバイザーは、NPO法人頴娃おこそ会 加藤潤さんです。

<加藤さんプロフィール>
埼玉県出身。2010年に南九州市頴娃町へIターン移住し,弟とともに観光養殖場「タツノオトシゴハウス」を立ち上げ。NPO法人頴娃おこそ会の観光プロジェクトリーダーとして,観光地ではなかった頴娃を地域ぐるみで観光地に成⻑させる。石垣商店街を中心に,6年間で11軒の空き家を交流拠点や宿に再生し,頴娃に交流人口や移住者を呼び込む。2021年から“コミュニティ大工”を名乗り、県内各地で、空き家再生のハードからソフトまでを担う。


▽アドバイザー派遣活用の背景

鳥丸地区コミュニティ協議会がある薩摩川内市東郷町鳥丸は、春はミツバツツジ、秋には彼岸花が鮮やかに咲きほこる田園風景が美しい地域です。

キャンプや川遊びを楽しめる「とうごう五色親水公園」もあり、夏には家族連れやグループ客で賑わいます。

同地域にある「鳥丸小学校」は2017年に近隣の小学校と統合し閉校になったものの、2022年から同市に本社を構える「株式会社岡野エレクトロニクス」による運営がはじまりました。

現在は、同社が支援する女子サッカーチーム「レイナ川内レディースサッカークラブ」の本拠地として活用されています。

スポーツの力で地域に賑わいを取り戻す一方、鳥丸地区では少子高齢化や人口減少による課題も感じています。

中でも、進学や就職をきっかけとした人口流出にともなう空き家問題は深刻で「倒壊の危険がある物件をなんとかしたい」「空き家をスポーツ合宿などに利用してほしい」という思いはあるものの、コミュニティ協議会だけでは限界を感じていました。

そこで、県内外で十数件の空き家再生の経験を持つ加藤さんに、地域に足を運んでもらい、専門的な視点からアドバイスを求めることになりました。

アドバイザー派遣後の展望としては、以下のような内容を描いています。

<アドバイザー派遣後の展望>
・地域住民向けにアドバイザー派遣や活動の報告会などを行うことで、地域の課題解決に向けた意識づくりを実施
・空き家対策に取り組む組織を形成
・地域全体で共通の課題解決に取り組むことで、住民同士のつながりの再構築を目指す

▽アドバイザー派遣の様子

当日は、会場の鳥丸地区コミュニティセンターに、約30名が集まりました。

司会を務めるのは、地域おこし協力隊の増田さんです。

増田さんは、2022年に鳥丸地区に着任。受け入れ団体の鳥丸地区コミュニティ協議会を拠点に、地域イベントの企画や運営、情報発信などに力を入れています。

開会のあいさつは、コミュニティ協議会 会長の木通さんです。遅い時間に集まっていただいた参加者へのお礼と、事業に対する期待が話されました。

合わせて、アドバイザー派遣を担当する鹿児島県からも、会場全体へ事業内容が共有されました。

▽加藤さんによるまちづくりや空き家再生の事例紹介

関係者のあいさつの後は、加藤さんのお話へ。

41歳の時に埼玉県から、鹿児島県南九州市頴娃町(えい町)へ移住した加藤さん。先に移住した弟さんと一緒に、タツノオトシゴの観光養殖場を立ち上げます。

並行して、地元NPOや行政と連携して観光まちづくりに挑戦。それまで周辺観光地への通り道となっていた頴娃町を、観光雑誌に載るような地域に成長させました。

地域に賑わいを取り戻す中、移住希望者が現れたことから、空き家活用にも力を入れはじめ、2015年〜2020年の5年間で10件の空き家を再生。

その間に地域おこし協力隊の受け入れも開始し、行政と連携した制度設計は、他地域から注目されることも多いそうです。

加藤さん自身は現在、ソフト面(コミュニティづくりや契約書作成など)とハード面(物件の解体や、その後の改修など)の両方をDIYをベースに再生していく「コミュニティ大工」として、県内外の空き家再生に関わっているとのことでした。

情報量たっぷりに話す中で熱くなったのか、途中で半袖になる加藤さん。

その思いが伝わったのか、お話の後に参加者からさまざまな質問があがりました。

▽参加者からの質問

Q:地域と行政がうまく関わっていくためには、どうしたら良いでしょうか?
A:課題解決に向かうのはすごく大事ですが、実現が難しいことも多く、地域としても大変になってしまう場面が少なくないと思います。だからこそ、まずは小さな事でも関わるみんなが「やりたい」と思えるような楽しいことを探して、そこから取り組むのが良いような気がします。その中で、行政とのつながりも徐々に生まれていくと思います。

Q:空き家を借りる時に、残されている家財道具。例えば、仏壇などの扱いはどうしていますか?
A:仏壇をはじめ、大家さんにとって大切な物はご本人に整理してもらっています。その後に残った物は自分たちで処分したり、使える物はそのまま使わせてもらったりしています。

Q:コミュニティ大工のお話の中で、70万で改修に取り組んだ事例がありましたが、予算の確保はどうしていますか?
A:お金の話は大事ですよね。ひとつは、DIYだから低コストで出来ている面がありますが、70万円で空き家改修は正直難しいです。ただ、通常の工務店さんなどの場合は見積書の後に合意をもらって、契約後に施行という流れになりますが、コミュニティ大工の場合は現場に施主さんがいるので、その場で全部決められるんです。なので、現場で施主さんと話し合って「まずは70万円分までやってみる」ことにしました。
とりあえず抜けそうな床を直すことから手をつけてみて、作業には施主さんのお友達がたくさん参加し、1週間ぐらいで終わりました。僕自身(加藤さん)の日当と材料代で15万円くらい。そうしてひとつ行程が終わったら、次の作業を考える……ような流れで改修を進めていきました。
僕が大事にしているのは、予算の有る/無しではなくて、施主さん自身が地域と良い関係を築けていて、地元を巻き込む求心力が有るか/無いかです。最終的には、施主さん自身が補助金などを活用して、改修に必要な予算を確保することができました。それを最初に予算が合わないからといって断ってしまったら何も進まないので、そんな風に個別の対応をすることが多いです。

質疑応答の後は薩摩川内市から、空き家を賃貸住宅に利活用する時に使える補助金の説明が行われました。

自分の家族がUターンする際や、移住者に自宅を貸し出す際のリフォーム費用などに使えるということで、参加者の皆さんも真剣に耳を傾けていたようです。

お話の後は、薩摩川内市東郷支所 所長の羽田さんより今後の地域づくりに向けての展望が語られました。

そうして、さいごは鳥丸地区コミュニティ協議会 副会長の西谷さんのごあいさつです。

「今日の話から得た地域活性化のヒントやアイデアがあったら、ぜひ教えてほしい。今後も、有意義な会にしていきたい」と前向きな言葉で閉会となりました。

解散後は、加藤さんが以前制作した冊子「まちづくり空き家再生解体新書」を手にする方も多く、改めて空き家再生に対する関心の高さがうかがえました。

▽関連リンク

・鳥丸地区コミュニティ協議会便りなどをご覧いただけます

・薩摩川内市の地域おこし協力について紹介されています

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本企画は、鹿児島県の「地域課題の解決のために、新しく活動をはじめたい人」「現在取り組んでいる活動を、もっと前に進めたい人」を支援する令和5年度 地域資源活用・協働促進事業 地域連携アドバイザー派遣を活用して行われました。

(下記は、2023年7月に行われたキックオフシンポジウムの開催レポートです)


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