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競馬場をフィルムで撮ろう!パート2!


 以前、フィルムカメラで競馬場の写真を撮る、ということに関して簡単な説明を行った。元々私は気性難で人に揉まれるのが苦手な為競馬場に赴くようになってから約1年程度しか経っていない。
 しかしその1年で少しばかりノウハウが増えたので、前回ちょろっと流してしまったような内容に詳しくツッコミつつ再度書いていきたい。

 

第1R フィルムカメラとデジタルカメラ


 まず、日頃からフィルムカメラを使用している方にとってはそれこそ馬耳東風だろうが、まずはここから説明をしていく。
 フィルムカメラとデジタルカメラ、この2つのカメラで撮影を行う場合の最大の違いはなんだろうか。それはISO感度の設定である。

 ISO感度とはフィルム・乃至はセンサーが写真を適正露出にするための必要な光の量を差している。少しわかりづらいかもしれない。
 
 例えば適正露出にする為の光の量が合計で1000必要だとして、同じシャッタースピードと絞りの組み合わせで撮影した時ISO100で丁度1000の光量が稼げるとする。
 ISO200の設定の感度はISO100の2倍。ISO400はISO200の2倍。ISO800はISO400の……と倍々ゲームになっていく
 つまりISO100で適正となるスピードと絞りの組み合わせでISO200のフィルムを使うと単純計算で2倍の光量が手に入る。400なら4倍だ。

 ISO100の設定のままでは光が多すぎて真っ白になってしまう。故にシャッタースピードを早くしたり、レンズの絞りを多く絞ったりしてレンズからフィルムに入ってくる量を減らすことで光量を調整するのだ。

 何故これがフィルムカメラとデジタルカメラの最大の違いかというと、デジタルカメラは撮影中にセンサーの設定を変えて感度を上げ下げすることが出来る。
 一方のフィルムカメラは基本的にフィルムを装填したらフィルムを交換するまではそのフィルム自身の持つISO感度で固定されてくる。
 撮影中に「あっ、暗くなってきたからISO感度上げたいな」「スローシャッターを使いたいから感度を下げたいな」という融通がデジタルカメラより効かないわけだ。

第2R 使用フィルムを選ぼう


 前置きが長くなったが、基本的にフィルムカメラで競馬を撮影するときはISO800のフィルムをおすすめしたい

 なんなら1600でも3200でもいいのだが……悲しいけど、それってディスコンなのよね。(モノクロならある)

 しっぱい写真の例を挙げてみる。

 この写真は1月ごろの中山最終12Rの写真なのだが、日が落ちて周囲が暗いためISO800を使っても適正なシャッタースピードが遅すぎる。
 馬はかなり早いスピードで移動しているため、ブレずに撮影をするためには最低1/250のシャッタースピードが欲しい。
(この写真は1/60設定)
 どうしても距離のある被写体となる為望遠レンズを使用したいが、一般的に望遠レンズは標準レンズより開放F値性能、簡単に言うと
「このレンズで最も多く光を取り込める能力」が低くなる傾向にある。

 いや、明るい望遠もあるんだぜ?レンズがウン十万円と重さが数キログラムあるけど。

 絞りとシャッタースピードに制約が出てくる以上、高いISO感度が必要となる。デジタルならISO1600だの3200だの819200だの高いISO感度が取り扱えるが、フィルムでは現行カラーで800、期限切れのフィルムで1600が精々である。その為ベターな選択肢としてISO800は最低必要だ、と私は思う。

第3R 絞りを設定する


 季節によって周囲の光量は変わってくるため、冬の開催よりは光量の多い夏に近い開催の方がピントが合わせやすいのも同じ理屈。
 シャッタースピードと絞りの設定に余裕があるため少しレンズを絞り込める。
 またもやクドい説明をすると「レンズを絞る」事によって、
 簡単に言えばピントの合う奥行きが広がる

 1枚目は晴れのお昼の開催で光量が多く、多少絞り込めたため広い範囲にピントが合っている。
 一方2枚目は曇りのメインレース(15:45発走)で光が少なく絞り込めず、ピントが主題に合っていない。まあ腕が悪いせいだが。
 1枚目も例示はしやすいけど構図は傾いてるからね(撮る瞬間に前の人が手を挙げたので避けて撮ったのだ)

 反面、浅い絞りだとピントの前後をボカすことが出来るようになる。

 これ、レジェンド武豊とドウデュース号の写真なわけだが、背景の木や設備はボケている。こうして被写体を際立たせたい時にはあえて絞りを開いて浅めのピントにする方法もある。
 勿論主題にピントが合っているのが大前提だが。


第4R シャッタースピードの話


 私が最近殆ど競馬用のカメラとして使っているのは、CONTAX 139 Quartzだ。

 1979年発売のカメラで、この年はアグネスフライト・タキオンの祖母のアグネスレディーがオークスに勝利している。
 CONTAXブランドの中では軽量・低スペック・頑丈という特徴があり、シャッタースピードは最速で1/1000と控えめな設定である。
 「え?馬は早いスピードで走るからシャッタースピードは早く出来る方がいいんじゃないの?」と思って頂けると幸いだ。

 要するに何事も程度、という物であり、例えば1/500や1/1000でレースを撮影するとどうなるか。およそこうなる。

 フィギュアかな?

 シャッタースピードが早すぎると被写体の動きが止まって写ってしまいやっぱりちょっと写真がつまらん。
 同じ日のメインレース、日が落ちてきてシャッター速度が1/250ぐらいになるとこんな感じだ。

 少し動きが出てきた。1/125だとどのくらいか。

 これは駄目だ。

 開放なのでピントも合っていない。まあこの日雨だから仕方ないんだけど。

 つまりは極端に早いシャッタースピードは別に要らない、と考える。
 まあ最速1/500あればいいかな。どの道ISO800だと1/1000以上は午前中くらいしか撮れない。
 それより重要なのはレンズやボディの取り回しの良さだ。レンズについては後でまた書くけれど、200mm~300mmくらいはあると良いかと。

第5R ボディの選び方


 まあ普通に考えてAF(オートフォーカス)があった方がいい。
 私はAF対応のカメラをそもそも殆ど持っていないので全てMF(マニュアルフォーカス)で撮影しているが、正直ここまでの写真を見て察してもらえるとおり、レース中のピント合わせは厳しい。
 事前に「大体この辺通るかなー」という位置に手動でピントをあわせ、手元で微調整してから撮影しているが、打率はプロ野球で言えば1軍にギリギリ残れるか残れないかぐらいじゃないだろうか。
 いや、もうちょっと良いかも。

 AFデジカメで枚数も気にせずパシャパシャ撮っている様子をみると羨ましくてたまらなくなる時がある。
 こちとら一日36枚だぞ!!

 これなんか浅いピントだけれどピント位置は大きく狂っていない。200mmだからちょっと遠いけれど。

 後は自動露出機能、AEやEEと書かれる機能は絶対にあった方がいいかもしれない。最初に書いた「写真を成立させるための適正露出」を機械が自動的に判断してシャッタースピードや絞りを設定してくれる機能である。
 勿論無くても決め打ちで行けるっちゃ行けるんだけど、雲が出たり晴れたりなど変わりやすい天気だとちょっと失敗することがあるかもしれない。

 後はまあ、割りと好みだと思うが、あまりデカいボディやレンズは周囲の人に邪魔扱いされるかもしれない。
 競馬場で「バズーカ」って蔑称扱いされているのだ。


第6R レンズの選び方


 これは先程少し触れたが、イメージで言うとレースを撮影する場合は200mm~300mmくらい欲しい。


 イメージで言えば柵沿いから撮影するなら東京は300、それ以外は200mmあれば十分かと思う。
(東京競馬場はラチからコースが遠いのだ)

 また、ダートコースを撮影する場合は300mmレンズに対してテレコンバーターなどを取り付けて焦点距離を倍化させて撮影することである程度引寄せて撮影も可能だ。

 ただし、テレコンバーター使用には2つ欠点がある。
・画質が下がってしまう
・絞りが2段分下がってしまう→シャッタースピードが遅くなる

 つまり、雨の日や夕方には(フィルムカメラに於いては)あまり使えない戦法であるため、メインレースはできるだけ使わないでラチ沿いにガブリ寄ろう。
 え?メインが東京ダートコース?デジカメ使えば良いんじゃないかな

 意外と便利なのが中望遠ズームレンズで、私はバリオゾナーの80-200mm F4を使っている。

 前回の記事でも書いたが、パドックの撮影は100mm前後もあれば十分撮影できるし、中山のグランプリロードなどは200mmが丁度いい位の距離だ。300だと寄れすぎてしまって構図が決めづらい。

200mm グランプリロードから


100mmくらい 

 例外としてGIレースのパドックは観客がかなり多く、1R前から待機してもこのような場所しか取れない。

 こういった場合は慌てず騒がず300mm+テレコンだ。


 レースと違って動きが遅いので1/60秒でも普通に撮れる。

第7R まとめ


 何故わざわざフィルムカメラで競馬を撮るのか。
 
 よく考えてみてほしい。デジタルカメラが普及しだしたのは精々ここ20年くらいのものだ。
 と、なるとウマ娘に登場しているような過去の名馬の多くがフィルムカメラしかない時代に写真を撮影されていることとなる。

カフェファラオ

 40年前の人に出来た事が、感材の性能が大幅に上昇した今出来ない訳がないだろう。
 私もまだまだ競馬撮影は始めたばかりで満足の行く写真は殆ど撮れていない。

2022年日経賞


 みんなも、どんどんフィルムカメラを使うのじゃ!



 kaz

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