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【温故(而)知新】こんな意味だったのかと目から鱗が落ちます。

今回もまた下掛宝生流ワキ方能楽師 安田登先生の講演で学んだことです。
【温故知新】、この有名でほぼ誰でも知っている言葉の本来の意味を教えていただきましたので紹介します。
これを知った時は、まさに目から鱗が落ちたような気持ちになりました。

【温故知新】の出典は、論語の第2章「為政第二」の第11です。
原文は、”子曰、温故而知新、可以為師矣。”
  子(し)曰(のたまわ)く、故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを
  知しれば、以(もっ)て 師(し)為(た)る可(べ)し。
この【温故知新】の意味を次のように習ったと思います。
  ”古くからの伝えを大切にして新しい知識を得て行く”
しかし、安田先生は、この意味だけではないとおっしゃっています。

まずは ”温故” についてです。
”故”というのは”古いこと”で、過去から昨日まで学んだことなど、すべて”故”だそうです。
”温”というのは、容器の中に何かを入れてぐつぐつ煮込むことを言うそうです。
つまり、”温故”は、”答えの見つからない疑問や昔学んだことなどを頭に入れ、時間をかけてぐつぐつ煮込む”ことです。

次に”知新”についてです。
”知”という文字は孔子の時代にはなかったそうです。
あったのは、左側の”矢”だけだったようです。
”新”という文字ですが、左側に”木”、右側の”斤”があります。
”斤”は斧のことです。
木を斧で切ったときに出現する切断面が”新”とのことです。
つまり、”知新”とは、”矢”が飛んでくるように”新”が忽然と出現する。”
という意味だそうです。

これらを合わせると、【温故知新】とは、
 ”既存の考えを頭の中に入れて、ぐつぐつぐつ煮詰めていると、まったく新たな考えや方法が突如として出現する。”
と安田先生は説かれています。

ここで大切なのが、”温故”と”知新”に挟まれた”而”という文字です。
安田先生は、「高校の授業では「置き字なので無視していい」などと教わりますが、そんなことはありません。」とおっしゃっています。
安田先生は、”而”は巫女の髪がたなびく様からできており、これを”魔術的時間”と称しておられます。
”温故”と”知新”の間の、この”魔術的時間”は、答えを得るまでの何もしていないように見える時間が大切で、すぐに答えを求めてはならないということです。
スポーツ練習、外国語の勉強などをしていると、全然進歩をしないというときがありますが、なぜか突然できるようになったことを経験された方がいらっしゃると思います。
何かに煮詰まったら、それを頭の片隅に置いて、時にはぼんやりしたり、気晴らしをすることが”知新”に至る道のようです。

私事ですが、現在ある学校で非常勤講師をしています。
答えの無い問題を半学半教で行っています。
学生たちを相手にイライラせず、
 ”知新に至るために、今”魔術的時間”が流れているんだ”
と考えて、ゆったりと待つことの大切さを学びました。

タイトルの図はこの温故(而)知新のイメージを表してみました。


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