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米国で増えている環境配慮な金融サービスとそれぞれの提供する体験

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4/22のEarth Dayから続いている環境系コンテンツですが、今回で4回目となります!Climate Fintechで少し幅を広げていきます。

最近こちら米国サンフランシスコ近辺では、前回の記事を書いたからなのかもですが、環境配慮型の金融サービスのもはや"老舗"とも言えるAspirationの広告によく目にします。普段の移動は専ら車ですが、聞き流している地元サンフランシスコのラジオ局KOITでのCMや、シリコンバレーを縦断する高速道路のUS 101沿いでも屋外広告を見つけました。

実はこういった環境配慮型の金融サービスは、想像に難くないことですが、他にも色々と出てきています。ネオバンクとして自身は銀行ライセンスは持たず、裏側でパートナーバンクと組んで預金をFDIC-insuredとするなど、フィンテックでよく使われるパターンで実現されています。

その上で、各プレーヤーが独自の体験でユーザー獲得を目指しているのですが、比べてみると面白いです。今回は比較的新しい3つのサービスを取り上げ、老舗Aspirationを猛追するアプローチを見ていきたいと思います。

この分野はClimate Fintechとも言われるようですが、フィンテックやESG・SDGs・脱炭素などにご興味ある側はぜひご覧になって下さい!

ハイパフォーマンスな貯蓄口座:Atmos

まずはじめにご紹介するのがAtmosです。こちらは2020年に創業で、調達状況や投資家・ロケーションなど執筆時点では不明です。

上記のサムネイルや同社のサイトの至る所で"high-performance savings"という言葉が使われています。米国の銀行口座では、Checking Account(決済口座:デビットカードやチェック/小切手から落とされる)と、Saving Account(貯蓄口座:貯蓄用で利子高め)の2つの種類があります。Atmosでは最大0.51%の利率が付くとしており、米国でのナショナルレートと比較しても高く、環境に配慮しつつ貯蓄でしっかり増やせるSaving Accountをアピールしています。私も10日間で$0.02増やすことができました!(以下図)

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私のSaving Accountではまだ利率は0.3%ですが、Atmosがサポートしている非営利組織への定期的な寄付を設定することで、利率を上げられます。

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提供しているサービスは、上記で紹介したSaving Accountが中心ですが、将来的にはChecking Accountとデビットカードもリリースされるようです。現在でも以下のように、Atmosユーザー向けにいくつかの企業からのディスカウントなどのオファーがありますが、おそらくデビットカード利用時に割引が適応されるようにUXを向上させ、より多くの企業ともパートナーとなり、自社決済の経済圏を広げることを目指すのではないでしょうか。

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さて、そのようなAtmosですが、裏側では金融サービスを開発するBanking as a ServiceプラットフォームのSynapseを用いて構築されているところも興味深いところです。これにより、金融機関でなくとも金融サービスのアプリを構築することのハードルを下げることができますし、Synapseのパートナーバンクにより預金はFDIC-insuredとなっています。

ソーシャルネットワークでのインパクト:Ando

続いては2019年創業のAndoです。投資家は分かりませんが、執筆時点ではこれまで$2.9Mを調達しているサンディエゴの会社です。

彼らが特徴的なのは、ネットワーク効果を各所に仕込んでいることです。例えば、バンキングサービスのアプリ内でSNSのように友人を招待・ネットワーク化することができ、このサービスを通じた環境へのインパクトをビジュアル化しています。

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更には、友人を5人以上招待しアクティブユーザーとなれば、最大5%もの金利を付けてくれます。但しこれには、$5,000の預金分のみが対象であったり、招待した友人が60日以内に$100以上のデポジットと5回以上のデビットカード利用すること、といった諸条件をクリアする必要があり、それほど大盤振る舞いという訳ではなさそうですが。

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個人間送金の機能もあります。こちらはフィーがかからず、Andoサービスないでの友人に送金することができます。以前にSquare Cash Appのプロダクト戦略をケースにして個人間送金の機能で獲得コストを最小化することを紹介しましたが、こちらもネットワーク効果を狙ったものと考えられます。

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このように、Andoはサービスの各所にネットワーク効果を仕込んで、果敢にユーザー獲得を進めていることがわかります。他にも便利機能はあり、例えばチェックの換金や給料振込みの着金が通常より2日ほど早くなったり、チェックの送付がアプリからそのままデジタルで行うことができます。これらは、チェックは煩わしいものの未だ日常の各所で使わざるを得ない米国の若い世代にとっては嬉しい機能ではないでしょうか。

シンプルにクレカ特化:Carbon Zero

最後は最も新しいCarbon Zeroです。

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こちらはまだローンチされていないので何とも言えないのですが、クレジットカードが主体のサービスのようです。このCarbon Zero Credit Cardを用いると、マーチャント側から引かれる決済フィーの一部からカーボンオフセットを自動で購入する仕組みのようです。つまり、ユーザー側から見れば、特に何もしなくても普段の買い物でこのカードを使うだけでカーボンニュートラルな生活を実現できるという訳です。

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ちなみにこのサービス、サインアップのReferralを増やせば増やすほど木を植えてくれたり、待ちの順番を上げてくれたりと、非常に面白いReferral体験です。DISのチームメンバーは、私をReferralすることで75人目までランクアップしました。私はまだ4,110番目ですが。笑

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まとめ

さて、今回はClimate Fintechのプレーヤーを3つ取り上げましたが、他にも様々なサービスが出てきています。ここでの多くのサービスは、以下のような基本的な機能は共通してクリアしつつ、体験面での差別化を行っています。特に、フィットするユーザーにとっては、金利や買い物での割引・環境インパクトなどの便益が最大化されるデザインになっていると感じました。

・FDIC-insured
・高めの金利
・月会費無料(またはフリーミアム/サブスクリプション)
・デビット/クレジットカード
・無料ATMネットワーク

また、こういった基本的な機能は、既存金融機関とのパートナーシップやATMネットワーク、そしてBaaSなどのフィンテックを組み合わせ、ハードルを下げて実装されています。

今後もどのようなものが出てくるか、創られていくのかワクワクしますね。DISでは米国プロダクト開発のトレンドや最新テックを継続的に調査し、それらを活用した新規事業創造を支援しています。ESG・SDGs・脱炭素といった環境分野での新たな取り組みなど、ぜひご相談下さい。


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