パートナーを亡くした友人からの メッセージ
誕生日に古い友人から短いメールを受け取った。御礼を述べると、彼女から折り返し、返信が来た。
「夫が癌で亡くなりました。」とそこには書いてあった。膵臓(すいぞう)癌が見つかり、その9か月後に亡くなったそうだ。人づてに「彼女の夫が亡くなったらしい。」とは聞いていたが、それは本当だったのだ。「夫を亡くして、数年間は辛かった。」という短い一文に、彼女の深い喪失感を感じた。
生前、彼女の夫は旅行会社を営んでいたが、あまり上手くいっていなかった。彼女がある時「夫が 貸したお金が戻ってこない」と言った事があった。彼らには子供が4人いたから、家計は楽ではなかった。それでも、友人は決して夫の事を責めなかった。「人が良いからいつも騙される。」と彼女は短くつぶやいた。
ある年のクリスマスの晩、彼女は私達を夕飯に招待してくれた。そこで何を話したかはあまり記憶にないが、食事中、友人とその夫が穏やかな笑顔を浮かべていたのを、今でも良く覚えている。食卓の上では、小さなキャンドルの火が優しく揺れていた。
夫が亡くなった後も、彼女はフルタイムの仕事を続けながら、4人の子供達を育てた。彼らは大学を終えると仕事を見つけ、家を出て行った。
友人はメールの中で「家族で一緒に過ごす時間は短いから、その時を大事にしなさい。そして, あなたのパートナーを大切にして下さい。別れは突然やって来るかもしれないから…」と言った。
昨年、私の妻が手術をしたので、彼女のメッセージが身にしみた。友人はパートナーを亡くしてから、家族の大切さを再認識したのだろう。もっとも、発病から9か月で別れを告げるという事は想像も出来ないが…
私は今年、1人暮らしを始めた長女の事も思った。「彼女は1人で大丈夫だろうか?大学生活を楽しんでいるだろうか?」以前、深夜に長女がチャットする声が、部屋越しに聞こえた事があった。でも、それは今では遠い昔の事のようだ。
友人が職場を去ってから、年に数回、彼女とはメールを交換するだけだ。 だが、私は彼女のメッセージは忘れる事はないだろう。
「子供達や友人が私をいつも支えてくれる。そして、私には良い仕事があって幸せだ。でも、今でも毎日、夫の事を思い出す。」とその文章は結ばれていた。
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