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家畜のメタンガス排出削減に取り組む 豪・Rumin8社

牛のげっぷから排出されるメタンガスの削減に取り組む企業がある。オーストラリアのRumin8社だ。この気候テック(ClimaTech)はマイクロソフトの創業者・ビル・ゲイツ氏も支援する。

メタンガスは、地球温暖化をもたらす最大要因のひとつだ。人為的な農業を通じて排出されるメタンガスのうち、ざっくり言って約32%が、家畜の糞尿やげっぷ、オナラから発生するものだという。

豪州のスタートアップ企業・Rumin8社では、牛に海藻を与えることで、メタン排出削減に取り組む。同社はこれまでに総額2,500万豪ドル(約23億円)の資金を調達した。今年1月に実施した同社にとって2回目の資金調達では、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏が組成した脱炭素特化型ファンドBreakthrough Energy Ventures(BEV)からも投資を受けた。

■メタンガスのもたらす問題とは?
メタンは、地球全体の排出量の約20%を占める。この量は、温室効果ガスとしては二酸化炭素に次いで多い。しかし、問題はその温室効果だ。温室効果ガスとしては二酸化炭素に注目が集まりがちだが、米国環境保護庁によると、メタンには二酸化炭素の25倍以上の温室効果がある。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)2022年評価報告書によると、現在の地球温暖化の約45%が、人為的なメタン排出から引き起こされているという。2021年には、大気中のメタンの量は、過去最大の年間増加率を記録しており、問題はさらに大きくなっている。

■メタンガス排出への取り組みは、どのように広がっているのか?
2022年11月に開催されたCOP27では、150カ国が2030年末までにメタン排出量を30%削減することを約束した。欧州委員会のフラン・ティメルマンス副委員長は、COP27で「メタン排出削減に取り組むことが、今後数年間、地球温暖化を遅らせるために最も安価かつ速い方法だ」と述べた。EUでは、数百万ユーロを投じてメタンガス排出削減を支援し、エネルギーおよび農業部門におけるメタンガス関連規制を導入している。

2023年に施行されるEUの新しい共通農業政策には、メタンガスに関して重要な分野である家畜と糞尿の管理改善への資金援助も含まれる。また、国連は各国の排出量削減のために、メタンガスの漏洩を検知する人工衛星を開発した。

■ビル・ゲイツ氏はRumin8社にいくら投じたのか?
ビル・ゲイツ氏は、前述のファンドBEVを通じて、Rumin8社に1200万豪ドル(約11億円)の資金を供給した。BEVには、アマゾン社のジェフ・ベゾス氏やアリババ・グループの共同創業者ジャック・マーも出資している。

「世界中の気候インパクトファンドから支援いただいたことに、とても満足している」と、共同創業者兼CEOのデイビッド・メッシーナ(David Messina)氏は言う。「家畜から排出される腸内メタンガスの解決に資金を提供したいというファンドの真の願いがあり、幸運にも当社のテクノロジーの強みをご理解いただけた。」

■Rumin8社はどのようにしてメタン排出量を減らすのか?

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