タイトル

松戸を「一生ものの街」にしたい!~伊藤恵美さんの挑戦

引っ越しはワクワクするもの。新しい街、新しい隣人…楽しみが膨らみます。

でもちょっと待って。理想通りの「最高の街」「憧れの街」に住めているひとってそんなに多くない気がします。

例えば「家賃が安かったから」「通勤に便利だったから」…「仕方ないね」とか「このあたりで、まあいいよね」とか、妥協して引っ越すこと、多くないでしょうか。

いったいどれほどのひとが、「最高の街」「憧れの街」に住めているのでしょうか。少し悲しいけれど、多くのひとにとって松戸は「妥協の街」ではないでしょうか?

では、「妥協の街」に住んだからと言って、「好きな街」「住んでよかった街」を諦めなければならないのでしょうか。ちょっとため息をつきながら住み続ける、それしか道はないのでしょうか。

そんなことはない、そんなはずはない。私はこの松戸の街をもっと好きになれる、もっと好きになるためにできることがたくさんある。そう気づかせてくれたひとがいます。

伊藤恵美さん。今松戸の街でもっとも元気に活動しているひと。たくさんのひとを巻き込んで、ワクワクする仕掛けを次々に仕掛けているひと。笑顔も行動もパワフルな女性です。

10月5日土曜日。松戸まつりを差し置いて、私は矢切のサポセン(まつど市民活動サポートセンター)に飛び込みました。「子どもの未来を広げる!!地域活動の価値って?」と銘打って、伊藤恵美さんのトークライブがあるからです。

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いつお会いしても元気をもらえる、力のある笑顔で、伊藤さんは話し始めました。

<目次>
住みたい街は自分で作ろう!
~「10年後に住みたい街」は?
~「街の価値」を自分で作ろう
~伊藤さんの活動4つ
「オシゴト体験ワークショップ」までの道のり
~仮説①~調査①~調査②~仮説②~仮説③
~結論:MIRAIのしるし「オシゴト体験ワークショップ」
全ての年代に「居場所」と「役割」を作り出せる活動をしたい

「住みたい街」は自分で作ろう!

~「10年後に住みたい街」は?

伊藤さん「私は埼玉県出身です。夫は都内の下町出身。なので夫婦そろって松戸には縁もゆかりもありません。いわゆるよそ者です(笑)。

結婚してどんな家に住みたいか?と話し合った時、設計士の夫は自分で設計したいと言い、田舎育ちの私は犬が飼えて子どもが多少走り回れる庭やスペースがある家がいいと。その条件で探してたまたま流れ着いたのが「松戸」でした。

まさに「条件」で絞り込んで住み始めた松戸。建築的には理想の家が手に入ったけれど、街についてはどうかな?と思うことがしばしばありました。ご近所との挨拶すら乏しい、スーパーで顔見知りとバッタリ出会って立ち話…なんてこともない。でもきっと「そのうち変わる」と思っていました。そう思いながら仕事人間の道を進んでいました。

そんな中でもふと、「10年後に自分はどこに住んでいるんだろう?」と考えることがありました。10年後だけでなく30年後は?と。30年後も住みたい街ってどんな街だろう?と考えた時、それを決めるのは「街への愛着」だと気づきました。

「街への愛着」があれば、この松戸にも長く住むだろう。では愛着ってなんだろう?自分にとっての街の「価値」が愛着を測るものでは?と考えました。住みやすさや街への思い入れもそう。それならどうしたらその価値は手に入るのかな?街も社会も変わっていくのかな…

漠然とそう思いながら仕事をする日々の中で、息子が生まれました。

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~「街の価値」を自分で作ろう

子どもが生まれて仕事と育児で多忙な日々を過ごす中で、不安が少しずつ膨らみ始めていました。

子どもはさまざまな気づきをくれます。子どもを通して見る社会は「こうだったらいいな」が多く、しかし現状は足りないものばかり。でも、それもそのうち変わっていくだろうと期待していました。しかしながら、子どもが大きくなってきても、なかなか変わらない…

どうしたら街や社会は変わるんだろう。誰が変えてくれるんだろう。

そう考えた時に気づきました。「自分が変えればいいんじゃない?」

住んでいる街に愛着が持てないならば、愛着を持てる「街の価値」を自分で作ればいい。

「街の価値」を自分で作ることができれば、松戸が「子どもが育った街」「私が変わった街」になり、「住み続ける価値のある街」になるかもしれない。松戸が「一生ものの街」になるかもしれない…そうなったら嬉しいな。

これが私の活動を始めたきっかけです。

~伊藤さんの活動4つ

現在、私は東部地区を中心に4つの活動をしています。

MIRAIのしるし(お仕事体験ワークショップ)
小学生の放課後を充実させて、将来の夢を具体的に描けるきっかけ作りをする団体です。この後詳しくご紹介します。
②みんなのダイナー(地域食堂)
東部地区初のいわゆる地域食堂です。子ども食堂という名称は知られていますが、ダイナーは子どもに限定しない多世代食堂です。今年7~9月で3回のトライアル開催を経て継続運営が決定。毎月1回、河原塚の熊野神社で開催しています。
③町会の改革
松戸に住んで9年目。当初から町会には属していたけど、いまいち町会って何なのか、何やってるのか解らない。ならばそんな個人的な謎を解明してみようと今年度から役員のお手伝いをはじめました。手始めに月次の定例会の進行方法を変え、ほぼ皆無だったイベントもわずかながら企画・実施しています。さらに集会所の老朽化により、建替えの議論も問題も持ち上がり、次世代式の町会運営モデルの実現を考え始めました。まさに挑戦です。地域の拠点としての町会と集会所の意義を問い直して、新しい運営の形を模索しています。
④紅茶レッスン
完全に趣味の領域です(笑)。自分の息抜きも兼ねて、みんなでおいしいお茶とお菓子をいただきながらうんちくを語ります。「椿の庭」で9月∼11月に3回開催します。

「オシゴト体験ワークショップ」までの道のり

コンサルティングを仕事にしてきたので、「やりたい!」と思い立ったらまずは仮説を立てました。そして仮説を検証するために調査を行い、仮説をブラッシュアップしてまた調査…と繰り返し。主にこんな仮説を立てて調査をしました。

仮説①経験が人生のチャンスを広げる
調査①子どもたちの現状把握(松戸の子どもの現状は?)
調査②さくらまつりで小中学生の「将来の夢」をアンケート調査
仮説②子どもたちの「順応力」をポジティブに活用できないか?
仮説③放課後時間の重要性
結果を受けていよいよ実行!
⇒「オシゴト体験ワークショップで大人の世界を体験」

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~仮説①経験が人生のチャンスを広げる

私の母は教育熱心な専業主婦で、いろんな習い事をさせてくれました。私自身の子ども時代の記憶は「忙しかった」という思いが大きく、やりたくない習い事もあったくらいなのですが、おとなになって思い返すと、貴重な経験をさせてもらったという感謝が大きいです。

経験は人生のチャンスを広げるのだなあと、私は実感しています。では、同じことを我が子にしてあげることができるのだろうか?と問い直すと、仕事に追われる忙しい日々の中では自信がない、と言うのが本音です。

人生のチャンスを広げる経験を、私は我が子だけでなくたくさんの子どもたちにしてほしいと考えています。

~調査①子どもたちの現状把握(松戸の子どもの現状は?)

現状の子どもたちがどうやって学校以外の時間を過ごしているのか?何を考えているのか?を、調査しようと思いました。まずは、知り合いの紹介でつながったお子さんと親御さん、それぞれにインタビューを実施。子どもは小さくても親に気を使うので別々に席を分けて。

それから、地域の小学校の放課後児童クラブ(いわゆる学童)に訪問見学。部屋の壁には細かな決まりごとの紙がぎっしり貼ってあるクラブもあり、その「管理」の体にショックを受けると同時に切なくなりました。室内も狭く、大人数が安全に過ごすためには仕方のないことかもしれませんが、子どもを取り巻く環境のシビアさを実感した瞬間でした。

~調査②さくらまつりで小中学生の「将来の夢」をアンケート調査

日本の子どもの多くが将来に希望を持てずにいるとの国際調査の結果もあります。松戸の子どもたちの実態はどうなのかな?とさくらまつりに来た子どもたちに、大きく4つの質問「なりたい職業はあるか?」「それはどんな職業か?」「家族以外に話ができるおとなや先輩がいるか?」「ゲーム以外で熱中している遊び・活動」をアンケートで聞きました。

「将来なりたい職業」では、意外に「ある」と答える子どもが多くホッとしましたが、具体的な職業を聞くと、いわゆる世に出ている子どもたちの人気の職業TOP5でおなじみの答えばかりに偏り、横へ倣え状態。正直「本当にそう思ってる?_」と聞きたくなるような…

小学校高学年∼中学生はグループで来た子どもたちが多かったことを考えると、仲間の視線を気にしたのかなと思える結果。回答しやすくと工夫したアンケートではありましたが、それゆえ本音を聞き出すことの難しさも通解しました。

世に出ている一般的な調査の結果はもちろん、さくらまつりのアンケート結果から、子どもたち自身、夢を描くことの大切さは知っていても、具体的な将来は描けずに困惑している様子が見て取れると感じました。

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~仮説②子どもたちの「順応力」をポジティブに活用できないか?

学童を見学した時に子どもたちに話を聴いたのですが、「学童を辞めたい」と話す子が多い印象のクラブもありました。「辞めたいから、学年が上がって辞めて良い時期が来るのをひたすら待っている」と言う子や、「楽しくないし辞めたいけど仕方ない」と諦め調子でつぶやく子も。

子どもたちは環境に順応する力が高く、与えられた環境に馴染んでいきます。その環境が良いものであろうと望ましくないものであろうと。好まないあ、居心地の良くない環境でも「仕方ない」と子どもたちは順応していくのです。これはネガティブな順応です。

だとしたら、その順応力を、世界を広げるポジティブな方向へ活用できないかと考えました。子どもたちの世界は経験によって広がっていき、その広い環境・世界に子どもたちは順応します。諦めではなくハッピーな方向へ、順応力を使ってほしいと思いました。

~仮説③放課後時間の重要性

小学校低学年の子どもたちが学校で過ごす累計時間はおよそ1200時間。それに対して、学校以外、いわゆる放課後に過ごす時間は、長期休みを含めると1600時間に上ります。学校で過ごす1200時間は主に同じ年齢の仲間と教師との関わりの時間ですが、それ以外の1600時間はどうだろう?

現代の親たちは忙しく、環境の変化で外で遊ぶことも、遊べる場所も減ってきた子どもたち。核家族化でコミュニケーションの相手も少ない。少子化も相まって、兄弟姉妹が少ない/いない子もいる。子どもたちの世界は昔よりも狭くなっていないか?経験量が圧倒的に減ってるのでは?と危機感を抱きました。

1600時間を充実させて、斜め上の関係の先輩やおとなが関わることで、子どもたちの世界を広げることができるのではないか?と考え、子どもたちの夢を育む経験プログラムを行う「MIRAIのしるし」という団体を立ち上げ、「オシゴト体験ワークショップ」を開催することにしました。

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~結論:MIRAIのしるし「オシゴト体験ワークショップ」

昨年2018年夏のプログラムでは、サンドイッチの開発工程を体験しました(ちなみに今年はホテルの朝食メニュー開発を体験)。サンドイッチ開発のそれぞれの段階には異なる職業・機能が複数関わります。

新しいサンドイッチ(新商品)のコンセプトを決める時は商品開発・クリエイター、レシピを思考する時は食材調達部門や調理師・シェフが登場、市場調査でマーケティング、販売戦略をプレゼンする、など、たくさんの仕事を子どもたちに紹介することができます。

子どもたちにいろいろな仕事の工程や機能を知ってもらい、自分の興味分野を知ることで、子どもたちの将来の選択肢を増やしていきたい。目標や夢ができることで大人になることが楽しみになる。これがMIRAIのしるしの目指しているものです。

全ての年代に「居場所」と「役割」を作り出せる活動をしたい

私自身、子どもをきっかけに始めた活動ですが、自分の子どもが大きくなったら活動から遠のいてしまうのは寂しいものです。「自分と子ども」のためにと始めたものだけれど、それだけではなく、年齢を重ねていく自分に家庭や職場以外での第3の居場所・役割を作ることにも通じます。子どもたちを通じて社会参加できる、つまり将来を通じて「自分たちおとな自身のため」にもなる活動だと考えています。

私だけでなく関わる皆が、長く携われる活動にしていきたい。幅広い年代、立場を巻き込む仕掛けを作って、一生かけて関われる活動にできたら素敵だなと。

どんなひとにも「居場所」と「役割」が必要で、それが人生をイキイキと輝かせる要素です。人間、求められなくなったら寂しくしぼんじゃうのでは?「MIRAIのしるし」だけでなく、「みんなのダイナー」や町会改革でも、関わる皆が楽しみながら活躍できる方法を模索しています」

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「こういうイベントがあるといいな」「こんな集まりがあるといいな」と思い浮かべる段階から、実行と実現までには、予想以上に長い道のりが待っているものです。

伊藤さんのお話でハッとしたのが、「仮説を立てて調査する」ことをとても大切にしている点。「こんな感じ」で思い描いたものを実現させるには、周囲を巻き込み助けを得ることが必要ですが、巻き込むためには魅力的な計画が必要で、さらに、さまざまな意見を飲み込んで揺るがない確かな足場が不可欠です。

計画の確かさを裏付けする結論を導くための仮説と調査に、大きな労力を割いている。ここまで理路整然と活動の裏付けを聞かせていただいたのは初めてで、大きな学びを得ることができました。

「夢」を形にするための道の歩き方。小さくても確かに前進することの大切さ。迷うことの楽しさ…伊藤さんの力強さの中には、そんなものが見えました。

みんなのダイナー、次回は12/14(土)、河原塚熊野神社横の集会所です!!

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