見出し画像

自然界には、二つのうず巻きがある。

愛はある〜傷つきやすい人のために

そういえば思い出したけど、「自然界には二つの渦巻きがある」と聞いたことがあった。

左回りの渦巻きと、右回りの渦巻き。必ず二つの渦巻があるのだという。 

あるトラウマ療法を受けていた時に、セラピストから聞いた話だ。

トラウマと二つのうずとは、まったく新鮮な情報だった。私はもっと知りたいと言うように身を乗り出して聞いた。

セラピストによると、トラウマの陰には、必ずリソースがある、という。トラウマが左回りの渦巻きだとしたら、右回りの渦巻きはリソース。トラウマの治療は、この二つのうずを行ったり来たりするのだと言う。

もしも、トラウマだけがあって、リソースが無かったら、あなたは今ごろ、生きていません。あなたのリソースは何ですか?とセラピストが聞いた。

初めて聞く話に、私は雷に撃たれたような気がして、しばらく言葉を失っていた。


画像2


トラウマは渦を巻いた一つのエネルギーで、それに相対するように、反対まわりのエネルギーの渦が必ずセットのように存在する、という。

トラウマという痛みと、リソースという光が、同時に存在する、ということだ。

痛んでいるときも、気が付かないだけで、光はすぐ側にある。

私は、自然界の目に見えない仕組みに、なにか神聖なものを感じた。

渦とかエネルギーとかいっても、スピリチュアルな話ではない。このトラウマ療法は、アメリカのピーター・ラヴィーン博士が開発したソマティック・エクスペリエンスという科学に基づいたエビデンスのある療法である。


この 「二つのうず」の話を思い出したのは、つい最近、心理カウンセラー、古宮昇さんのyoutubeを視聴していた時だった。

そこで語られていたことが、「二つのうず」の話に酷似していた。

古宮さんは「孤独が激減するワーク」をテーマに、優しい口調で、「正反対の二つの力、同じ量の力が、つねに同時にかかっている」原理について、わかりやすく紐解かれていて、さらに「この原理を知ると、人生に対する見方が深化します」と強調されていた。

私は、あっ、と思った。 


画像4

そのyoutubeより

一人で寂しいとき、無視されたとき、好きな人にラインを送っても帰って来ないとき、ぜひやってほしいワークを紹介します。
誰かが あなたに 冷たくしているとき まさにその瞬間 同時に 誰かが あなたに 暖かくしています
誰かが あなたを 拒絶しているとき まさにその瞬間 同時に 誰かが あなたを 受容しています
誰かが あなたを 批判しているとき まさにその瞬間 同時に 誰かが あなたを 肯定しています
両方が つねに 同じ量だけ あります
一緒にいてほしい特定の人、グループ、組織に拒絶され見捨てられている時に 誰があなたを受け入れて関心をもって注目しているか 探していくと 孤独が0になります
まず人間から探します 次に動物 植物 モノ(家 ふとん) トラウマのある人は想像上の人物 天使とか空想の中の友だち でもいいです 
拒絶された時 その瞬間 必ず 同じ量で 受け入れられています
関心が欲しい人がくれないで その代わり 別の人が受け入れてくれている そのことが あなたに どうプラスになっているか 具体的に書き出してみます
どれほどのおかげがあるか わかったら 愛と感謝で涙が出てきます このワークをちゃんとやると 孤独が0になります
あなたの世界には いつも 愛が働いていることが 実感でわかります


10分足らずの短い時間のなかで、古宮さんは何回も何回も話していた。

必ず、両方が、同じ分量だけある、と。


画像5

画像6


「二つのうず」と「二つの力」の話を、私はこんなふうに読み解いた。

私たちは生きているかぎり、何があっても、どんなに逆風が吹いて命が奪われそうになっても、私たちの身体をこの地上に繋ぎ止めようとする、何かの力が働いているらしい。

痛みが深ければ深いほど、反作用的に、光もよりいっそう強くなる。

その働きは、一人一人に、あなたにも私にも、もれなく備わっている。


この仕組みを、感性豊かに表現した詩人がいる。

谷川俊太郎 「魂のいちばんおいしいところ」(1990年)から
あなたは愛される
愛されることから逃れられない 
たとえあなたがすべての人を憎むとしても たとえあなたが人生を憎むとしても 自分自身を憎むとしても
あなたは降りしきる雨に愛される 微風に揺れる野花に えたいの知れぬ恐ろしい夢に 柱のかげのあなたの知らない誰かに愛される 
何故ならあなたはひとつのいのち どんなに否定しようと思っても 生きようともがきつづけるひとつのいのち 
すべての硬く冷たいものの中で なおにじみなおあふれなお流れやまぬ やわらかいいのちだからだ


画像6


この掌編を初めて読んだときのことは忘れられない。

耐えていた感情の表面張力が破られて、私は不覚にも、号泣してしまった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?