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今度こその、E資格の振り返り

5月ももう下旬。E資格を受験したのが2/16なのでもう3ヶ月以上経っています。ちゃんと振り返りをしないと思いつつ、間が空いてしまいました。先々週からようやく重い腰を上げたものの、前々回はnote記事の振り返り前回はQiita記事の振り返りで終わってしまいました。

ということで、ようやく(←遅すぎ)振り返りをしたいと思います。まず、それなりな時間とお金をかけてE資格を受験し、取得したことの是非ですが、私としてはとても価値のあることであり、挑戦して(なおかつ結果も伴って)とても良かったと思っています。

コスト面ですが、JDLA認定プログラムを修了する必要があり、結構高価な参考書も複数購入が必要、さらにE資格受験料と、お世辞にも安いとは言えません。私自身は(おそらく)最安のプログラムを選んだ、そして参考書も無闇には買っていないため、コストとしてはトータルで9万円ほど。かなり安く済ませた方かと思います。

  • JDLA認定プログラム(ラビット・チャレンジ): 38,500円(税込、以下同様)

    • 入会金22,000円、月会費3,300円×5ヶ月、オプション課金はなし

  • 参考書: 20,790円

    • ディープラーニングE資格問題集(いわゆる黒本)、ゼロから作るDeep Learning(いわゆるゼロつく)シリーズなど

    • 一冊一冊がまあまあ高いですが、特にゼロつくシリーズは超絶オススメ

  • 受験料: 33,000円

JDLA認定プログラムのコストは様々で、会場での集中セミナー形式の場合、数日で終えられるというメリットの反面、数十万円かかることもあります。コストはかかっても、時間が限られる人や、その場で色々と質問したいという人には有効なオプションだと思います。

私自身は、今回、それなりに時間があったため、自分のペースで学ぶことができる動画配信形式が合っていたと思います。ただ、基本的に内容面でのサポートはないため、わからなければ自分で何とかするという覚悟は必要です。

コストに関しては、会社の支援があればそれを積極的に活用すべきだと思いますし、また教育訓練給付制度を活用することもできる場合があります(ちなみに取締役は、雇用保険の加入者ではないので、対象外です、残念)。

学んだこと

AI(機械学習/深層学習)を学ぼうとすると、線形代数をはじめとした応用数学は避けて通れません。大学でサボったばかりに非常に苦戦したというのはお話しした通りです。一応理系なのに、恥ずかしい限り。お陰でいきなり入り口から挫折しそうになりましたが、0からの学び直しを覚悟して取り組んだ結果、時間はかかったものの、何とかモノにすることができました(本番での応用数学の得点率は100%)。高2の娘に数学だけは何とか張り合える(物理とかもう無理です)のが、副産物かもしれません、笑。

応用数学をクリアすると、ようやく深層学習のベースとなる機械学習の勉強に入りますが、ここで理論からしっかり学ぶことができたことはとても大きな成果だと思います。今は、深層学習/機械学習のフレームワークが充実しており、理論を理解していなくても、それらしく実装すること自体は意外に難しくありません。理論を理解していなくても、一定の結果を得ることはできます。しかし、理論を理解していなければ、その結果を改善することは難しいですし、新たな手法を自分で見出すことも困難でしょう。

結果という観点では、実装演習を通じて、結果がハイパーパラメーターによって大きく左右されるということは大きな学びでした。私は中学時代からプログラミングをしてきましたが、それはずっとロジックベースのプログラム。Aを入力したら必ずBという出力が得られる(ようにロジックを組む)。それに対し、AIの場合は、必ずBとはなりません。高い確率でBという出力になるが、一定の確率でCになったり、Dになったり。出力は、ハイパーパラメーターと呼ばれる(基本的には)人が設定する初期値に大きく左右されます。

そういった意味で、AIはデジタル技術の結晶ではありますが、その動きは実のところ、非常にアナログ的です。ロジックベースのように(解法が既知の問題に限られますが)100%の正解を出すことはできない。その代わりアナログな存在である人間のように、解法が未知の問題であっても、自ら学び、うまく学習できれば高い確率で正解を導き出すことができる。

AIはまだまだ日進月歩の世界であり、様々な試みがなされ、それが大きな成果を生んでいます。面白いのは、そういった試みが、こうやれば必ずこうなるというデジタル的な方法論ではなく、やってみたらこうなったというアナログ的な方法論であること。AにBを足したらCになるはずだ、といったような明確なものではなく、AにBを加えたら、C的なものになるかも、実際にやってみたら、こうなった、という感じです。ノード間の接続をスキップする、あるいはつなげるといったテクニックがありますが、こうすれば必ずこういう結果になるというロジックというよりは、この情報をここに反映させたいという「気持ち」をもとに試行錯誤するという感じです。

昨今は生成AIの脅威的な発展がニュースを賑わさない日はないという感じですが、実のところ、生成AIがなぜここまで能力を発揮できるようになったのか、100%解明はされていません。やってみたらこんなことができるようになったというのが実態です(だからこそ、突然暴走を始めるのではないかという危惧もされるわけです)。

出発点となっている応用数学を復習し、AIの理論をしっかり理解できたことも大きいですが、より大きな成果は、意外にアナログ的、自然科学的というAIの特性を理解できたことかもしれません。そして最大の成果は、つい一年前まではAIの可能性についてある程度限界があると思っていた(人間を超えることはない)ものが、180度考え方が変わった(人間を超えるだろう、問題はいつどのように)という事実かと思います。

得たこと

AIに関する学びはもちろんですが、それ以外にも得たことはあると感じています。それは、学ぶこと自体。ここまで真剣に勉強したのは、ビジネススクール時代(25年以上前)以来です。

リスキリングの必要が説かれる時代ですが、勉強ってコツだったり、それ以上にどう向き合うかだったりします。数十年ちゃんと勉強してこなかった訳ですが、今回改めてどうやって学ぶのかといったコツや、すぐにはわからなくても諦めずに喰らいつくという姿勢を再習得できたような気がします。

これは私だけかもしれませんが、有効なのは良くも悪くも追い込むこと。2024/2に試験を受ける、そのためには2023/12頭までに受験資格の認定を受ける。そういったわかりやすいゴール/マイルストーンを設定し、それに向かって自分を追い込む。

もっとも、ではE資格受験後はどうかというと、さっぱり学びが止まってしまっており、これは反省しているところです。追い込むのもいいですが、追い込まれないとやらない、できないのはそれはそれで問題です。

学習する方に向けて

これからE資格の取得を目指して勉強する方にお伝えできるのは、間違いなく価値のあることであるということ。時間もコストもかかりますが、ちゃんとやれば、それ以上の学びはあるものと思います。

しかし、数学が超得意という方を除いて、結構苦労はされるのではないかと思います。それでもとにかく諦めないこと。一度ではわからないのは当然、それでも繰り返していれば少しずつ積み上がります。最初はちんぷんかんぷんだったものが、何となく見えてくる、最初は全く回答できなかった問題が、何回目にはすらすら答えられるようになる。苦労はあっても、その先にはできるようになるという快感が待っています。

時間をかけて積み上げていく上で、一番重要かつ有効なのは、学習レポートではないかと思います。全ての認定プログラムで同じように義務付けられているかどうかはわからないのですが、学びを表面的なものでなく、自分のものにするために、自分なりの理解をまとめていくことは非常に有効です。振り返ってみると、学生時代から試験前にはまとめノートを作っていました。当時は紙と鉛筆でしたが、今はQiitaのような便利なツールがあるので、まとめも圧倒的に効率的になっています。

学ぶ上で気をつけていただきたいのは、学習範囲(シラバス)をしっかり把握しておくこと。E資格では、AIの発展に対応するという観点から、定期的にシラバスが更改されています。基本的にはより基礎的な内容がシラバスから落とされ、より最近の動きがシラバスに追加されます。一方で、黒本に関しては、当初のシラバスをもとに書かれているため、黒本だけでは、直近のシラバスをカバーできません。特に次回の試験(E2024#2)は、ちょうどシラバスが変更されるタイミングなので要注意です。

なお、シラバスから外れた内容はもう勉強しなくていいかというとそこは微妙です。基本的には基礎的な内容なので、試験には出ないにしても一定程度は理解しておくべきかと。例えば新シラバスでは線形代数がまるっと出題範囲から外れました(!!)が、だからといってAIを理解する上で線形代数を学ばないというのはありえないことだと思います。

E資格のあり方に関して一言

E資格の出題内容については開示してはならないとされているため、なかなか話し難いのですが、E資格のあり方についても一言。

この2月に受験したわけですが、その出題傾向に関しては、不満もあったというのが正直なところです。一生懸命学んだ基礎的な部分がほとんど出ず、一方で、本当に活用するかどうかわからない派生的な領域が結構出題されました。

AIのように文字通り日々進化する領域で資格試験を運営するのは極めて難しいことだと思います。ちょっと前まではAttention is all you needと言われていたのが、直近ではAll you need is Mambaと言われたり。少し前ホットだったのが、GAN(Generative Adversarial Networks)に対し、今ホットに言われるのはKAN(Kolmogorov-Arnold Network)だったり。どんどんと新しい技術が生まれてきます。

結果的にE資格でカバーしようとしている領域もどんどん広がっています。正確には、上記のMambaやKANは新しすぎるので、まだシラバスに入っていません。一方で、(広く)画像認識のアルゴリズムで言えば基礎的なCNNから始まって、ResNet、YOLOはもちろんとして、FCOS、FCNといったところまで。結果的に広く薄くなってしまっているような気がします。特に今回の試験では、基礎的な部分がかなり薄くなったように感じました。ただ、こういった基礎的な技術が今の技術のベースになっている以上、それらを置き去りにはすべきでないと思います。

基礎は重要、一方で応用範囲はどんどんと広がっている。一つの考え方としては、E資格を基礎編と応用編のように分化していくことかと思います。目標がないと勉強を頑張れない私としては、新たな目標ができることは歓迎です(笑)。

上でお話ししたように、次回の試験からシラバスが新しくなりますが、その狙いは、「機械学習並びに深層学習の基礎アルゴリズムの理解に特化」するということのようです。おそらく出題者側も同じような問題意識は持っていらっしゃるのではないかと思います。

まだまだ学習

MambaにKANと学びたいことはどんどんと増えていっています。一方で、E資格での重要な学びは、実際に動かしてこそ本当の意味で理解できるということ。追い込まれないと学べないというのは所詮言い訳に過ぎません。最先端にも目配りしつつ、少しずつでも手を動かしながら勉強を続けたいと思います。


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