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BBC PROMS オーケストラでベートーベン生解説


BBCプロムス22

今年もBBCプロムスの季節。大好きなバイオリニスト、パトリシア・コパチンスカヤ目当てのコンサートへ。

プロムスのベースである、ロイヤル・アルバート・ホールにて。


Proms 22 Beethoven No.5 Symphony from memory
Xenakis: O-Mega
Shostakovich: Violin Concerto No 1 in A minor 
Beethoven: Symphony No 5 in C minor

Henry Baldwin (percussion)
Patricia Kopatchinskaja (violin)
Aurora Orchestra
Nicholas Collon (conductor)

パトリシア・コパチンスカヤは今回も裏切らない熱演ぶり。毎度、裸足でステージに立つ。

でも、この記事では、オーロラ・オーケストラ創設者で指揮者であるニコラス・コロンの試みについて書きたい。

BBCプロムスは、BBCラジオ2(クラシック音楽チャンネル)で生中継される。今回のコンサートの音源はこちら。

(※)2022.8.2 から1年間の公開限定。早めにに聞いてくださいませー。


今回は「ベートーベン交響曲第5番を記憶から演奏」というタイトル。指揮者もオーケストラも楽譜なしで演奏。それだけではなく、チェロなどの椅子必須の楽器以外は、椅子なし。立ったまま演奏する。

このオーロラオーケストラの、暗譜で立ったまま演奏というのは、こちらのコンサートでも体験済み。

今回は、あの「運命」を楽譜なしで立って演奏。音の流れが違った。音が自由に流れた。それぞれに心地よく流れる音が、ひとつにまとまる美しさ。「運命」にしては軽やかすぎるという人もいるかもしれないけど。最高だった。


ベートーベン「運命」 オーケストラでの生解説


そして、このコンサートでの目玉がもうひとつ。

ニックがオーケストラで「オーケストラでレクチャー」をするところ。上の記事のコンサートでもやっていたけれど、今回は、「運命」で。


ちょっと、BBCのサイトで聴いて来てほしい。これの1:16:20あたりから。


リズムの変容をパーカッションだけで聴いてみる。それに、観客を巻き込んで、観客が拍手でパーカッションになる。

ロイヤル・アルバート・ホールには、4階あるけれど、その1階ごとに役を振り分けで、拍手で輪唱して運命のリズムを体験する。軽くジョークを飛ばし、笑いを誘う。うまい。

繰り返しのリズムや変容を、オーケストラの生演奏で解説する。それぞれの楽章の特徴を、オーケストラの一部の楽器だけをフィーチャーして聴いてみる。

リズムが発展していく。

ベートーベンが運命を発表したときのこと。歴史的背景。それぞれの楽章の特徴とテーマを、演奏をききながら感じていく。


観客を「聴くだけ」の受け身に終わらせず、音楽を体験させる導き方がうまい。頭で理解するだけではなく、音楽を感じて、音楽の中に入り込んでいく。

導いているのはBBCのプレゼンター、トム・サービスと指揮者のニコラス・コロン。プレゼンターがしゃべりがうまいのは当たり前だけど、この若い指揮者のしゃべりがまたうまい。さりげなくジョークも入れて笑わせる。

「運命」なのに、突然モーツアルトとか紛れ込ませる。ベートーベンとモーツアルトの類似点を感じさせながら、観客の意識を目覚めさせる。

ベートーベンと他の作曲家をまぜたアレンジの演奏で、「ベートーベンじゃないところは手をあげてね。テストだよ。」なんて言いながら、観客を巻き込み意識を集中させる。

観客の魂も体も思考も巻き込むプレゼンテーションがうまい。

音楽をますます好きになる。
そんなプレゼンテーションでした。




ついつい、教師目線で、自分だったらこういう体験をどうやって授業で引き起こすか・・・ということを考えちゃう。笑



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