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とある大学でのワークショップ ~新規事業検討における原体験の役割~

このnoteは、主催したワークショップから得た ワークショップ開催に関する学び を残していくnoteです!

"ワークショップ" を日本語4文字で書くと "工房遊戯" がしっくり来たのでタイトルで使っていますが、記載内容は ワークショップの開催記録 です ^^

ふとしたキッカケにより「自分で勉強しながらワークショップを開催していこう!」と思い立ち、テーマにはこだわらず、チャンスを感じた時にさりげなく手を挙げながら、実践を交えた学びを少しずつ積み重ねています。

0.とある大学でのワークショップ開催背景

今回は、とある大学のゼミで「原体験」をキーワードにワークショップを交えたセミナーを開催する機会を頂きました。開催にあたっての背景・狙いを以下で紹介します。

<開催背景・狙いについて>

そのゼミでは、数年前より学生のインターンシップ活動をより実りある形とするために「学生が約3ヵ月間(※) 試行錯誤して考えた新規事業アイデアを、インターンシップ受け入れ候補企業に対してピッチする」という取り組みを行っていました。※学業と並行しながらの取り組み

インターンシップ受け入れ候補企業は、そのピッチ内容や発表後のQ&Aを踏まえながら、それぞれ学生にインターンシップのオファーを送り、学生の希望とマッチングできればインターンシップが実現するという企画です。
(「企業側からオファーを貰う」という視点がとても魅力的に感じました)

その中で今回は、"原体験"というキーワードを前面に提示頂きながら、
 「学生それぞれが、自身の持つ "原体験" にもっと目を向け」、 
 「目を向けた "原体験" を新規事業アイデアの検討に生かせるように」

という期待と共に、ワークショップ開催の機会を頂きました。

1.ワークショップ企画にあたってのコンセプト

今回のワークショップの全体構成を考えるにあたり、大きく意識したポイントを3点紹介したいと思います!

(企画にあたってのコンセプト ダイジェスト!)

■1点目:原体験が"重要"という押し売りは控える

新規事業アイデアを考えるにあたり、「自身の"原体験"に絡めながら、自分事としてアイデアを練ること」は大事なポイントの1つであることは認識していました。

ただし、だからと言って「***だから原体験は重要だよ!」と押し込んでいくのは、逆に安っぽさを生んでしまう様に感じ、【重要】ということは言わない構成にすることを意識しました。

【重要】というスタンスで説明するには、その前後で「なぜ重要なのか?」を説明する必要がありますが、そのような形で内容を固めるほど「分かったつもり」を誘発するリスクも感じ、その点でも【重要】と示すことは避けた方が良いと考えました。

■2点目:ワークショップを通じて原体験の"役割"を伝える

【重要】と言わずに【重要】であることを伝えるために、今回は ワークショップを通じて "原体験の役割" を体感してもらうことで「だから、"原体験"が大事なのか」と間接的に伝える ということを目指しました。

ワークショップを通じての気付きをデザインし、ワークショップ後の解説でそれぞれの気付きを入り口に "原体験の役割" への理解に繋げるスタイルを取ることで、学びの起点を参加者(学生)側に置く ことを目指しました。

言われて「そういうものか~」と学ぶのと、自分で気付いて「そういうことか!」となるのは定着率が大きく違うことを意識し、出来る限りワークショップ後に長く効果を発揮できる内容にしたいと考えました。

■3点目:原体験の"役割"を一言キーワードに凝縮する

学びの起点を学生側に置き、「そういうことか!」と理解して貰えたとしても、内容を思い起こすためのキッカケ・楔がないと記憶の風化は早いと考えるため、内容を考えるにあたり 伝えたいメッセージを「一言キーワードに凝縮して添えておく」ということを意識しました。

歴史の年号などを覚える際に、年号と内容を語呂合わせして覚えやすくする感覚と似た感じですね。やっぱりあるのと無いのとでは違うと思うので。

【参考】上記ポイント3点を少し言い換える

ここで挙げた3点を他のワークショップに転用できる形に言い換えると以下の様な表現になると思います。

■ポイント3点をのちょい言い換え
[1] 一番伝えたいことを”重要”と押し売りすることはしない
[2] 参加者自身の気付きを通じ、"伝えたいこと"を間接的感じられる様にする
[3] 内容を思い出すための楔として「一言キーワード」を準備する

自分自身はともすれば意見などを述べる際に、"重要"ということをつらつらと押し込んでしまうタイプなので、今回のワークショップに限らず、他場面でも意識しておけたら良いかもと自分で書きながら思う次第でした。

2.ワークショップの設計について

上記コンセプトを踏まえながら、今回のワークショップは以下の設計としました。それぞれの概要については後述にて解説します!

<ワークショップ全体構成(2.0h)>
[1] はじめに:自己紹介、ワークショップ開催の背景説明
[2] ワーク①:"原体験の役割" に気付くためのワークショップ
 (休憩)
[3] ワーク②:"原体験の役割"の一つを深掘るためのワークショップ
[4] まとめ :ワークショップ全体の振り返り

(表紙:ワークに前のめりになってもらえたらと赤色基調の資料にしました)

【解説①】はじめに:自己紹介、開催の背景説明

自己紹介はもとより、「なぜこのワークショップが開かれているのか?」という開催にあたっての前提条件を揃えるための背景説明を実施しました。

その上で、登壇者としてはどのようなゴールを思い描いているのか?をメッセージングすることにより「着陸地点」をぼやっとでもイメージして貰うことで、ワークショップ中に「これって何をしているんだけ?」と宙ぶらりんなることを防ぐことを意識した背景説明です。

(抜粋:ゴールのイメージを持ってもらうためのメッセージング)

【参考:slidoを活用することで場の意見を見える化】
今回のワークショップにあたっては参加者の声を全体に共有する方法として slido を活用しました。slido の主催側画面を前面で投影した上で、slido へのコメントの書き込み促すことで、参加学生の意見や気付きがリアルタイムで見える様にしました。
 ➡ slidoとは?基本的な使い方紹介

(冒頭では使い方の練習もかねて「今の心持を教えてください♪」と書き込みを投げかけたところ、匿名であることを理由に率直なコメントやウケ狙いのコメントが寄せられ、場のアイスブレイクにもなりました ^^)

【解説②】ワーク①:"原体験の役割" に気付く

1つ目のワークショップは「**先生といくぷち旅行を企画する」というワークショップとしました。
(**先生とは本ワークショップの要望頂いたゼミの先生です)

(1つ目のワークショップのテーマ ※***には先生の名前)

まず、ワークショップ参加者を2~3名にグループ分けして、5分程の時間でぷち旅行企画を考えてもらい、その後 各グループ slidoで発表、他グループの回答で印象に残った内容を挙げてもらいつつ、どのようなポイントが印象に残ったか?を相互にコメント💬していく スタイルとしました。

当日の参加者は大学2年生~4年生までおり、年次が上の学生ほどゼミへの所属年数が長く、ゼミの先生との親交が深い傾向にあることを利用し、グループ分けの際に、年次をバラバラにすることで回答の視点に幅を持たせることを狙ったことが一つのポイントです。

その後、「それぞれの回答の違いを生んでいるものは何でしょう?」という問いかけを行い会話を行いながら、それぞれの気付きを展開してもらう流れのワークショップとして構成しました。

(ワークショップ①での気付きを促すための問い)

【参考解説】このワークショップで気付きとして狙ったもの
"原体験の役割" として例えば以下の3つがあると想定して設計しました。
 ①活動を行うための燃料として原体験
 ②事業案を構築する材料としての原体験
 ③提案を行う際の価値軸としての原体験


これらの要素はワークショップの中で
 ①先生とのぷち旅行を企画することに前のめりになれるか?
 ②その上で、先生のことをどれだけ知っているか?
 ③その上で、自分はどう提案するのが楽しいと思うか?
という形で顕在化することを想定し、上手く行けば(笑) グループによって各観点で差が生まれるため、原体験の役割への理解に繋がる気付きを促せると考えました。

ちなみに①~③までを一言キーワードで以下の様に表現しています。
 ①源体験 ②元体験 ③現/限体験
(ギリギリまで迷いながらオリジナルで考えました ^^)

(当時は補足説明を交えながら、"原体験の役割"について解説しました)

なお当日は、各"原体験の役割に対していくつかの事例を交え、"原体験の役割"をより感じて貰うことを目指しました。例えば、その内の1つとして以下プレゼン動画も交えましたが、TikTokでバズっていた動画だけあって、何となく耳にしたことがある学生もおり、場の雰囲気が緩んだ のを感じました。(学生側に寄せる意味で TiKTok動画等を交えるのはアリだな~と思う次第)

@newspicks

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【解説③】ワーク②:"原体験の役割"の一つを深掘る

2つ目のワークショップは「あるホールケーキをAさんとBさんで分ける」というワークショップとしました。このワークショップは上述の 元体験(事業案を検討する材料) に関して深ぼるために準備したワークショップです。

(2つ目のワークショップのテーマ ※身近にありそうなものを意識)

ワークショップに臨んでもらうにあたり、AさんとBさんが置かれた状況をストーリーとして紹介することで、頭に情景を思い浮かべて貰いながら、"何となくの思い付き" で終わらないワークショップにすることを目指しました。

(AさんとBさんが置かれた状況をストーリーで説明)
(その後、それぞれでケーキの分け方を考えてもらう)

その上で、このワークショップには別途3つの追加情報を用意し、
 👉追加情報が全くない状態
 👉追加情報が1つずつ増えていく過程
で、「提案内容がどのように変わっていくか?」を感じてもらうことで、元体験(事業案を検討する材料) について気付きながら学びを深めてもらう構成としました。

【参考紹介】3つの追加情報について
(追加1)Aさんが 甘いものが苦手 だった場合はどうでしょう?
(追加2)Aさんに ケーキが大好きな弟がいた 場合どうでしょう?
(追加3)Aさんは今から予定があり、自宅への帰宅が遅くなる 場合は?

(一通り提案を出し切った後に、自分の提案を顧みて貰いました)

【参考解説】このワークショップで気付きとして狙ったもの
例えば、元体験(事業案を検討する材料) については
 ①対象が持つ特性/嗜好 の理解に繋がる元体験
 ②対象を取り巻く関係性 の理解に繋がる元体験
 ③対象が置かれる状況 の理解に繋がる元体験
があると考えながら、ワークショップを構成しました。追加情報の1つ1つがここでの①~③に該当する様な構成となっています。

これによって、事業案を考える際の対象の理解においても複数の視点があることを感じてもらうことで、検討する事業案を顧みて貰い、事業案の深みを増してもらうことを狙いました。

(それぞれの追加情報に対する説明①)
(それぞれの追加情報に対する説明②)

【解説④】まとめ:ワークショップ全体の振り返り

ここまでのワークショップは約2時間におよぶ長丁場の構成となったため、最後に改めて、
 ・今回のワークショップの開催背景
 ・ワークショップ①の振り返り
 ・ワークショップ②の振り返り
を行い、少し気恥ずかしく思いながらも応援のメッセージングを行い、ワークショップとしては終了としました。

(ここまでの流れをダイジェスト的に振り返って終了~)

3.ワークショップを振り返って

自分よりひとまわりも年齢が違う学生のキラキラ感に圧倒されながらも、大きくは狙い通りにワークショップを進めることができたと思います。

学生向けにワークショップを開催するのは正直初めてでしたが、学生はもとより、要望頂いたゼミの先生からも好評を頂けたので、客観的にも及第点を頂ける内容だった様です ^^ (ひと安心~)

そんな中で、当日の振り返りながら "改めて印象的の残ったポイント" をここでは3つにまとめて書きたいと思います。

(印象に残ったポイントダイジェスト!)

■その①:口頭での回答はショートで端的

ワークショップでは、[1]まず投稿ツール(slido※) に回答を投稿してもらい、[2]投稿内容を入り口に質問/会話を重ねながら掘り下げる対応を取りました。その中において、どの学生も "口頭での回答がショートで端的" なことが印象に残りました。※今回は匿名での投稿

日頃、会社等でワークショップに行う際は、参加者の中には長めのコメントをする方が一定数いるイメージで、そのイメージとギャップがありました(なお、コメントが長いことにネガティブな認識は持っていません ^^)

その分、自分に会話のボールが返ってくるまでの時間が想定よりも短く、心の中ではファシリテートにテンパる場面が度々ありました。今回のワークショップでリズムは何となく掴んだので、次の機会があれば今回掴んだリズムを踏まえながら対応したいと思いますが、覚えておきたいポイントです。

"Twitter主流の文化だから" と解釈するのは余りにも端的かとは思いながらも、何となく自分の世代との雰囲気の違いを感じたので、バックグランド的なところの違いによる差が何かしらあるのではないかなと想像します。

■その②:投稿ツールとリアル会場に温度差がある

ワークショップ時に利用した 投稿ツール(slido※) では 、冗談交じりの回答も目立つ一方で、自分の目の前に広がる リアル会場の雰囲気 はどことなく淡々としている印象を受けました。※今回は匿名での投稿

少し表現を変えると ”投稿ツールの投稿欄に流れる回答(slido)” と "目の前の光景" に温度差がある という感じでした。

大学でのワークショップは経験は浅いので、あくまで【仮説】に留まりますが、もしかすると「リアル(オフライン)開催においてもツイート的に投稿(意見)できる環境を交えた方が参加者(学生)の感情を引き出しやすいのではないか?」という認識を持つ次第でした。

今後はリアルでワークショップを開催する場面も増えるのではないかと考えていますが、参加者の年代が若い場合は、リアル(オンライン)でのワークショップにおいても、各種ツールを使いながらツイート的な要素も取り入れる ことを検討したい と思いました。

ツイート的な短文でのやりとりは、感情を伝搬をさせる意味では対面でのやりとりに劣るイメージを持っていましたが、"必ずしもそうではないのかも"ということを考えさせられました。

■その③:日頃のキャラを持ち込める遊びが大事かも

投稿を匿名にすることにより、当然冗談交じりの回答を投稿しやすかったかと思いますが、その中でもひとつ感じたのは「"匿名でも学生側は(ノリや文章のクセから)誰の投稿かが分かるが、講師や先生側には誰か分からない" 」という非対称な環境 が、ワークショップの盛り上がりに寄与するのではないか?ということです。

投稿ツール(slido) での投稿は匿名とするにあたっては「(時間的に)全員にユーザー登録を場に求めるのは難しそう」という観点から成り行き的になった側面がありました。それに対し参加学生から「匿名投稿がとても良かった」とのフィードバックを多数貰いました。

例えば、投稿された冗談交じりの内容は見かけ上"匿名"なのですが、参加学生側には「これはきっとあいつだろ(笑)」の様な雰囲気が広がりながら、笑いが生じる場面が度々ありました ^^

「講師側には匿名だけど、参加者側からすると匿名じゃない」という非対称な環境が、参加学生の日頃のキャラを上手くワークショップに持ち込むことに繋がり、結果的にワークショップの盛り上げに寄与した様に感じます。

余談ですが投稿ツール(slido)に対して「これは自分で作ったんですか?」という質問も複数貰いました。今の大学生からしたら、こういうサービスは【利用する】ものではなく【作る】というマインドがある様子を感じ、自身のマインドとのギャップを感じながら驚く次第でした ^^

ここまでの長文をご参照頂きありがとうございました!最後に、"ワークショップ開催にあたって参考にしている書籍" を紹介して終わりたいと思います♪

〇参考書籍「問いのデザイン」

ワークショップの準備は、以下の書籍を手元におきながら取り組んでいます。参考までに紹介させて頂きます!

■問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション
(安斎 勇樹・塩瀬 隆之 著、学芸出版社)

著者の一人の方の関連noteリンクも貼っておきます!


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