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【連続小説チャレンジ】 不思議なノート#6

【朝日の決断】
朝日
:どお? お腹すいたでしょ?
良子:ありがとう、朝日
朝日:父さん心配してたわよ。いったい何があったの?お母さん
良子;父さん、何も言ってなかった?会社のこと
朝日:何、クビ?、もしかして
良子:感いいね、当たり
朝日:今、多いんだよね、首切り。お父さんみたいな、定年退職ちょい前の人、多いって、やっぱり、そうなんだね、で、父さんショック?
良子:うん、そりゃそうでしょう。あんまり、口に出して言わないけど、
朝日;で、月光は、なにやらかしたの?
良子;そうだ、それで学校に居たんだ、私…。月光が、牛のサクラの面倒見たいって、それで学校辞めるとかどうとか、
朝日:相変わらず、月光って、世間ずれだね。牛と学校ふつう天秤に掛けないよ。はい、りんごの摩り下ろし、シナモン入り。
良子:おいしい、で、朝日は。どうなの?
朝日:うん、一つ、報告。ラオスに行くことにした
良子;ひぇ? リャオシュ?

りんごの摩り下ろしを口に含んだまま動揺する良子

良子:何処?何処よ、そこ。で、なんで、なんでよ。それ、日本にある村の名前?…じゃないよね
朝日;友達がね、海外協力隊で活動してて、今度、ラオスに学校作るらしくて、そのお手伝いの一般者対象ボランティアに参加しないかって、誘ってくれたの。
良子:海外協力? 国内協力じゃだめなの? それ、もう決めたってこと?
朝日:Yes !
良子:いつ?
朝日:2週間後
良子:帰ってくるの いつ?
朝日;短いよ、たったの一ヶ月
良子:でも、会社は? 休めるの、そんな長く
朝日:円満退職
良子:???
朝日:結婚することにした
良子:はひぃ? 結婚って…
朝日:さっき話した海外協力隊の人、桜田一平さん。
良子:そんなこと、ちっとも話してくれなかったじゃない。いつから付き合っていたの?
朝日:半年前から
良子:結婚って、いつ、いつするわけ?
朝日:うん、ラオス行く前に、結婚届だけ出して、帰ってきてから、ちょっとしたパーティしようかと思ってる。
良子:朝日、あなたは何でもきちんと筋道立てる子だったでしょ、あなたらしくないんじゃない?今回は。母さんたちに紹介もなしにどんどん決めるなんて、親の立場ってものもあるでしょ。
朝日:親の立場、うん、そうかも知れないけど… 今まで、私、なんでもじっくり考えて、物事進めていたけど、どんなに準備整えたって、壊れるものは壊れるし、どんなに目標立ててて、それ目指して我慢して、うまく達成できても、また、新しい目標見つけないといけないって、焦ってしまう。その繰り返し、彼に出会うまではね。
良子:はぁ あん…

娘が、大きく見えた

朝日:お母さん、一平君がね、初めてのデートの時にこう言ったの
「僕が、今やっている活動から、学んだものは、ぼくらが、当然あると思っている明日も戦時下の状況の人たちには、あれば幸いの明日で、しかし、どちらも、よく考えたら、在るという保障は何一つないと気付かされたことです。だから、僕は、あるかどうか分からない先のことより、今の瞬間のことに集中しようと決めたんです。すると面白いことに、自由で怖いものが無くなって、軽くなったんです。」ってね。
母さん、私、今まで付き合った人から、「マンション買って君を幸せにしてあげる」とか、言われたことあるけど、なんだか、重かったの、一生を保障されて、重い感じがしてたんだって、一平君に会って気付かされたの。
良子:当たりだ。その一平君、当たりだ。母さん、結婚に賛成。

【やっぱり、私の子】
朝日が、今度、一平君を連れてきて、紹介してくれると約束を残し帰った。それと入れ替わり。月光が帰ってきた。


月光:お母さん、大丈夫? ごめんね。学校辞めること考え直すから。星の子村の村長さんが、母さんに会って話したいって、会ってくれる?
良子:うん、分かった。月光
月光:なに?
良子:ミルキー天 いい名だよ
月光:(照れ笑いして)月光って名もね

息子と二人っきりで、朝日が作って置いてくれた夕飯を食べながら、久しぶりにゆっくりと話しができた。朝日の結婚のことや、父さんのことなど、息子は一人前の青年になっていた。

電話音:プルルルル…プルルルル…
良子:あ、母さん?どうしたの?こんな遅く

母が、夜10時以降に電話を掛けて来るのは珍しかった。

良子の母:朝ちゃんから、メール貰ってさ、どうしたかと思うて…
良子;朝日からメール?
良子の母:メル友たい。

朝日は、私の母とメールでいつも会話しているとそのとき知った

:朝ちゃん、あんたに似てきたね。落ち着いたら、電話して来んねよ。お守り、また送ったけん、よう拝んどいたから、
良子:有難う

そう、母としばらく話して、電話を切った。夫が帰って来るのを待つ間、あのノートに、気持ちを書き始めた。

0月00日
娘が、結婚するとを決めた。安定を求めて、エリートの相手を見つけると思っていたが、うまく外れてくれた。やっぱり、私の娘だった。心が、穏やかになる。

棚に飾ってある大学時代に撮った夫とのツーショットの写真を見ながらその頃を思い出す

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     大学時代の一夫と良子にタイムスリップ

先輩カズッチ:ヨシ、今度の学園祭の出し物のシナリオ下書き、ざっと目を通しておいてくれ。 舞台美術、今回は、ヨシに頼むから。
後輩ヨシ:え? 先輩、ホントですか? 頑張んなきゃ、この演劇クラブ同好会の未来が掛かってますからね!
先輩カズッチ:ヨシ君、熱すぎ。いいんだよ、同好会でも何でも認められても、られなくても、好きなこと全身全霊でぶつかっていく、それだけで十分
後輩ヨシ:ワー、先輩、欲ないんですね
先輩カズッチ:そんなもんあったら、怖くて、芝居書けなくなるよ。受け狙いすぎて。従って、同好会でいいってこと。あの青空みたいに、読み終わって、スカーッとして、すべて オッケー! 「今が、100%」ってな、話、書くだけ、それで満足

輝いてたよね、あの時
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電話音:プルルル…プルルル…

現実に戻る良子

一夫:あ、おれ、今、病院。五十嵐が倒れて、緊急治療室に入ってるんだが、まだ出てこないんだ。先に寝ててくれ。ヨシ、子供たちのことまかせっきりで、すまん。
ヨシ:カズッチ、あなたは? あなたは、大丈夫? だよね
カズッチ:俺は、大丈夫だ。

電話を切った後、不思議なノートをめくると、『あなたが愛することをすることです』という言葉がノートに浮かんできた

【サプライズグッズ】
次の日、一夫は、朝方に帰ってきて、ベッドで寝ている。良子は、月光を学校へ送り出した後、子供たちのことを報告しようと、夫が起きてくるのを待っている。良子、携帯でメールを打つ


  うさぎ茶屋10時:送信
     …………
     返信:了解

うさぎ茶屋で会っている、サティ君と良子

良子:ありがとう、来てくれて
サティ:僕も、お渡しするものがあったので丁度よかったです。サプライズグッズです。お一つ選んでください。これは、ノートを付けていただいてる方にもれなく差し上げているものです。

カラフルな、小袋を5個出して、良子に差し出す。

良子:あ、そうですか…じゃあ、この黄色いの

中身を開けて見る良子

サティ:時計です。「ていねいウォッチ」といいます。
良子:?
サティ:これをはめると、時間が合わせられるんです、周りのものの時間に
良子:????
サティ:結構、クールでしょ?(楽しそうに)。つまり、こう言う事なんです。ものには、それぞれの寿命があるようにそれぞれの時間の流れがあるんです。それを、この時計が察知して、それぞれの時間に合わせて、その時間を共有できるようにしてくれます。
良子:??、でも、どうして、こんなものが必要なの?
サティ:楽しいから、それだけじゃ、いけませんでしたか?
良子:いいえ、ありがとう
サティ:きょうは、どうされました?

まっずぐな、子犬のような目で、良子を見入るサティ

良子:はぁ、特に…、古本、そう古本、今度いつ取りに来てもらえるんでしたっけ。
サティ:来週です。あ、そうだ、クーポン券貯まってますよ。そう、来週末には、そのクーポン券で、ご旅行が出来ますが、何か、ご予定ありますか?
良子;は?、ご旅行…どこ? 旅行って、何処にですか?
サティ:(大きく微笑んで)サプライズです。ご安心ください。日程は、一泊二日で、僕が、引率者としてご同行します。
良子:あ、国内旅行ってことですね。温泉なんか、あったりして?
サティ:もし、ご予定が悪ければ、ご連絡ください。良子さん、楽しいことが待っていますよ。是非、ご一緒に(さわやか笑顔で)では、

そう言い残して、サティは、一礼をして店を出て行った。残された良子は、「良子さん」と初めてサティ君にそう呼ばれた余韻に 顔をとろけさせていた

【ていねいウォッチ】
電話音
:ピロロピロロー…

良子の携帯が鳴る

良子:あ、あなた?うん、ちょっと友達とお茶してただけ、今、帰る、じゃ

家に着くと、夫は出掛ける支度をしていた

良子:やっぱり、病院行くんだ
一夫 : ああ、心配だからな。五十嵐の奴、睡眠薬用意してきてて、酒と一緒に飲んでたんだ。トイレで倒れて、気付くのもっと遅かったら…だから、
良子:分かった。家のこと大丈夫、月光も、ちゃんと学校行くって言ってるし、朝日も結婚相手いい人見つけて、ラオス行くらしいし。
一夫:ラオス?結婚? 朝日がか?
良子:あの子、やっぱり、私たちの子だった。自分でちゃんと、愛する人見つけたんだから、今度、紹介してくれるってさ。カズッチ!
一夫:で、なんで、ラオスなんだ?
良子:お楽しみ、帰ってきたら、話すよ
一夫:あ、もう行かなきゃ。しまった、時計、どっかに忘れてきた…
良子:ベッドの近くじゃないの

良子が寝室に探しに行く

一夫:これ借りてくぞ!じゃあ、

慌てて、出て行く一夫

良子:あっ、ここに置いてあった「ていねいウォッチ」ないし…

玄関に駆けて来て、靴箱の上を見て、ぼそりという良子

病院室の前で、待っている一夫。担当の医者が、部屋から出てくる


医者:容態は、落ち着きました。しかし、面会は短めにお願いします。それから、患者を興奮させるような話の内容は控えてください。事情が事情ですので。
一夫:はい、分かりました。ご家族の方は、見えられましたでしょうか
医者:はい、しかし、ご本人さまが、会いたくないとおっしゃいまして、また、出直してくるといって、帰られました。
一夫:は、そうですか。
  
担当の医者と話しを終えて、病室に入る一夫

一夫;やあ、気分、どお? 何か欲しいものないか? 飲み物とか…
五十嵐:すまん、みんなに迷惑かけて、すまん
一夫:それは、いい。今は、元気になること考えろ
五十嵐:俺、怖くてさ、先のこと考えて、怖くなってさ。つい…
一夫;そうか、誰だって、怖いさ、怖くなんかない奴いないよ。でも、五十嵐、先のこと心配して、命断うなんて、申し訳ないと思わないか?
五十嵐:…
一夫:お前の母ちゃんに
五十嵐:…ボケて、そんなのわかんないさ。息子の俺のことも分からないんだから。林原、俺の嫁さん、母ちゃんの看病疲れでさ、鬱になったよ。かわいそうにな。こんなこと予想外って言うんだろうな、嫁さんからしてみれば
林原一夫:五十嵐、お前の寿命は、あと38年残ってるぞ。まだ、やり直せる
五十嵐:なに言い出すんだ、林原
林原一夫:(なに言い出してんだ、俺)つまり、お前には、まだやることあるじゃないか。守ってやれよ、全身全霊で家族をさ、息子と夫、全うしろよ
五十嵐:お前、泣いてんのか?こんな俺のために。俺、会社クビになったの辛いけど、林原、お前と一緒でよかった。会社にいるときは、ホント言って、利害関係でしか人と付き合ってなかった。お前のことも、ただの競争相手でしかなかった。もしかしたら、本当は、なんの得にもならない俺のために、泣いてくれる人が、ずっと前から欲しかったのかもしれない。
林原:俺と同じように泣いてくれる人、もう一人いるだろ。なに意地張ってるんだよ。嫁さんにも泣かせてやれよ。
五十嵐:俺があいつの人生めちゃめちゃにしたかと思うと、あいつのこと不憫で仕方がない。
林原:なに見栄張ってんだよ。お前が、描いていた家族像は、あくまでも想像だろう? 現実は、ちょっと形が違っても、大元の嫁さんへの想いが変らないなら分かってくれるだろ、分からせろよ、逃げないで。
五十嵐:でも、どうやって、失業した俺に何が出来る。
林原一夫:俺も嫁さん、鬱にしたことがある。あの時、俺たち、もう駄目かもって思った。でも、あいつ、一人で頑張って、戦ってくれてたんだ、俺のために。俺は、あいつのこと分かった振りして、時間が経てば何とかなると思ってた。あいつの様子を外から見てた。でも、あいつの中の時間は、ずっと、ひとっ所に止まっていて、這い出そうと、苦しんでた。一緒に泣いてあげるの俺しかいないのに、一人で頑張ってたんだ。お前にも出来ること一つあるんじゃないか? 嫁さん不憫に思って、自分を責めてばかりいないで、しっかり抱いて、泣かせてやれよ。お前の胸の中で…
五十嵐:…電話、そこにある電話、とってくれないか?

一夫、サイドテーブルにあった五十嵐の携帯を渡す。電話を掛ける五十嵐

五十嵐:あ、俺、さっきは、すまなかった。今から、こっちに来れるか? ああ、わかった。じゃあ
一夫:奥さんか?
五十嵐:うん、あいつの顔見たくなって…

病室を出る一夫、歩きながら、携帯を出して電話する。

一夫:あ、おれ、うん、あいつは、大丈夫だ。…ヨシ、会いたいな、お前と
電話口のヨシ:なに言ってるの? 帰ってくるんでしょ? 今から「星の子村」の村長さんのところ行くんだけど。一緒に来てくれる?
一夫:ああ、どこで待ち合わせする?

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不思議なノート#7
https://note.com/kaya_yan/n/nc2f49c46c6cf

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