よの15 しお味ラーメン

長野に引越してきて、意外とラーメンが美味しいことに気がついた。

温泉に入ったついでに頼むラーメンが、これまたすこぶる美味しい。期待しないぶん、より美味しいのかもしれない。

ここ最近、飯綱町のとちのき食堂の「牛骨ラーメン　しょうゆ味」にはまっている。
ほんとうに美味しい。

あのしょうゆ味が忘れられなくて、たびたび自宅から車で30分かけてお昼を食べにいく。
本日も、あの牛骨ラーメンしょうゆ味を注文した。

お昼時で店は混んでいたが、意外と早くラーメンが運ばれてきた。
「お待ちどうさま。牛骨ラーメン　しお味です」
とテーブルに牛骨ラーメンが置かれた。

しお味？あれ、たしか牛骨ラーメンのしょうゆ味を頼んだはずだけど。聞き間違ったのかな？

ですぐに、すいません、しょうゆを頼んだのですが、
と言おうかどうか、一瞬店員の顔を見た。

もし言えば当然店員は謝り、作り直してくるだろう。でも忙しい中二度手間になるし、私に限って言えば特にしお味でも問題はない。わざわざ言う必要もないか。という瞬間の判断のもと、しお味を食べることにした。
食べると、思いのほか美味しい。
もしかすると、牛骨ラーメンしお味が正解だったのではないか。
店員の間違いのおかげで、このしお味にめぐり会うことができ、
ひとりほくそ笑んだ。

少し経って、隣りのテーブルにラーメンが運ばれてきた。
「お待ちどうさま。牛骨ラーメン　しょうゆ味です」
すると、隣りのテーブルから、
「しお味を頼んだんですけど」
という声が聞こえてきた。

私は自分が食べているラーメンを見て、
これ？食べちゃったよ。と思わずつぶやいた。

店員は聞き間違ったのではなく、出し間違ったのだった。店員は隣りの人と私にそれぞれ平謝りし、結局隣りの人はしょうゆ味で我慢してくれた。

私はしお味を食べながら、あの時すぐに、しょうゆ頼んだんだけどと店員に言えば良かったんじゃないか、としばし後悔の念にかられていた。

とその時隣りから、
「このしょうゆ味かなり美味しい」
という声が聞こえてきた。

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kawawano