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よの24 私がこの仕事を選んだわけは

私がこの仕事を選んだわけは、幼い頃からの夢でも憧れの誰かの影響でも、なんでもない。好きだからでもやりがいを求めたからでも全くない。

お恥ずかしい話、数々の面接にことごとく落とされて、最後にかろうじて採用されたから、だけなのである。

それがたまたま不動産会社だったということである。

三十過ぎてもフリーターだった私を採用してくれた唯一の会社。
そういう意味では非常に感謝をしている。

もっとも入社してからは、不動産のふの字も知らず、そもそも社会人としてまともに働いたこともない私にとって、いちいちが波瀾につぐ波瀾だった。よくも辞めずに今日まできたものだと心から思う。

もともと働くのが好きではない。
なぜ働かなければいけないのか?
働き続けなければいけないのか?

好きなことや、やり甲斐のために働くなんて夢に過ぎず、正直意味のないと思われる仕事を、ただただ毎日繰り返すだけだ。
日本が豊かになっても進歩してもちっとも変わらない。
そんなフリーターだった私が考えを変えたのは家族を養わなければという一点だった。


働かなければいけない。


以来、お金に興味が全くなかった私が、ただただひたすらお金のために働いた。

そして。

車に興味のない私が車を手に入れ、買うことを想像もしなかった自宅を手に入れ、部下を指示する立場になり、経営を学ぶようになり、そのたびに、ひとつひとつ新しい世界が開けて、視野が大きく広がっていった。


今改めて振り返ってみると、働くこともまんざら意味のないことではなかったと思うのだ。

意味の見いだせない仕事と人間関係の不条理さが私を成長させ、高みの世界へと導いてくれたのだから。

そして。

不動産業界は勘違いから始まる。
高額商品を扱っているとなんだか自分も高級な人間になったように思えてくるのだ。


そんな勘違いに便乗して、私は社長になった。

社長になって私はあるやり甲斐を見つけた。

それは、会社の売り上げ優先の仕事に疲れ、人間関係に疲れ、人生に諦めかけている若者、または当時の私のような若者に、働くのはまんざらではないよと言える職場環境を提供してあげることだ。

そして。

今日の私があるのは他でもない我が妻のおかげなのだ。当時先行きの見えない私とよくぞ一緒になってくれたと心から感謝をしたい。

そして。

これからの人生は妻への恩返しの時間でもあるのだ。


と。

私は、はっと目が覚めた。

ふと、時計を見ると7時半。
面接に行く日だ。
私は慌ててベットを降りて支度を始めた。


なんだかよくは覚えていないが、やけにいい夢をみていたような気がする。


朝食を食べながら、
「面接は何時?」と妻が聞いてくる。
「9時半からだけど、今日は雨だし早めに出るよ」
「今日が最後の面接ね。もしも今度の会社が駄目だったら・・」
と寂しそうな顔をする妻。

「いや・・よくわからないけど・・、なんだか受かるようなするんだ・・」

雨の中、私は不思議な爽快感で家を出た。



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kawawano



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