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A story of recruitment 3 「見るな、感じろ!」

「自分は若者ではないのか・・・?」


薄々気づいてはいたけど、
若いと思っていた自分も腹は出てきたし、
私服がダサくても気にしなくなってきたし、
おしぼりで顔を拭くようにもなった。
家ではせっかく買ったビリーズブートキャンプのDVDが
夕食時に鍋敷きとして使われている。

思い切って今日は若者の聖地、原宿に来たのだ。
竹下通りを歩いてみたものの、結局のところ、昔と変わっていない。
安い洋服屋とアイドルの店がひしめくだけで、これと言って特別なものはない。
昔と違うのは、竹下通りを抜けたところで既に疲れてしまったことだ。
オシャレすぎるカフェは勇気がいるので、慣れているスタバに入ることにした。

ショートラテが汗をかいてきた頃、隣のソファー席から女の子たちの話し声が聞こえてきた。
「今日の説明会、起きとくのが大変だったよ・・・。」
「へぇ、意外。面白そうなのにね。」
「私もそう思ってたけど、ずっと会社の説明してるんだもん。ネット見ればわかるっつーの。
しかも、説明会で「私たちは社風がいい会社です」って言ってたのに
会場に社長が入ってきた途端に社員さんが敬礼みたいのしてて、
めちゃくちゃトップダウンって感じの社風だった。」
「キツイね〜。それよりも、この前のベンチャー会社のC社面白かったよ。」
「聞いたことないけど、何が面白いの?」
「何がってことないけど、社長の話が超熱くって、唾が飛んできそうだった!」
「す、すごいね。私もベンチャー受けてみたけど、意外に雰囲気よかったなぁ。」

「す、すいません。学生さんですか?」
「・・・」
「あ、あの・・・」
「・・・」
ナンパと思われているのだろうか。
“シカト”と呼ばれている超常現象である。
「あの、実は人事をやっていまして、就職活動中ですか?」
女子たちはアイコンタクトをとった。

「まあ、そうです。まだ始めたばかりですけど。」
「二人はどんな風に企業選びしてるんですか?」
「始めたばかりなので、まずは知っているところから
 受けて行っているっていうか・・・。」
「さっきベンチャーもうけたとか?」
「そうなんですよ。正直、興味なかったんですけど」
「う〜ん、たまたま時間が空いてて、その時間帯で説明会やってたから」
「そうなんだ。実は、人事をやってるんですが、今の人たちが
企業のどんなところを見て選んでいるのかがわかってなくて・・・」

「どんなところ・・・。まだ考えたことないですね。雅代はどう?」
「私は雰囲気がいいところは好きだな。」
「あ、それ私もそうかも。あとはなんか、心を感じる企業がいいですね」
「心?」
「そうですね。やっていることが世の中の役にたっていたりとか
世の中を変えるような面白いことをやっているとか。」

「給料が高いとか、休みが多いとか、そんなことを言われるのかと思った。」
「まあ、それもなくはないけど、やっぱりそれよりも社風とか
考え方とか、目に見えないことの方が重要かも」

「目に見えないもの!?」


「なんて言えばいいか・・・。求人票に書いてあるようなことは、ぶっちゃけわからないんですもん。
売上10億っていう企業も、1000億っていう企業も、とにかく“いっぱい”なんだろうって感じで。」

何か、折角積み上げた積み木を簡単に壊されるような、
そもそも積み上げていたようで、何も積み上げていなかったような・・・。
またもや鼻がピクピクしてきた。

本日の教訓

今の人たちには「目に見えること」よりも、「目に見えないこと」の方が大切


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