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七月二十三日 かげきしょうじょ!!

 文庫本などを立てて真上から見ると、背と本文の間に接着剤の層が見える。文庫本は、大抵アジロ綴じ(折の背にスリットが入っていて、そこに接着剤を染み込ませる)。その層にボコボコとした穴が空いていない、綺麗なものを見ると「おお」と感動する。これも技術だ。

 今日の電車のお供は、細田守監督『竜とそばかすの姫』(角川文庫)。母を事故で失い、俯いてばかりの女子高生 鈴は仮想空間『U』で、歌姫として一躍人気者となる。

 読んだ感想は『サマーウォーズ』の別バージョン的な感じ。『サマーウォーズ』が好きだったので、入りやすかった。

 小説はアニメ映画から書き下ろされたので、アニメ映画を観てから読むべきだったかもしれない。テンポや場面切り替えは、自作の脳内アニメ映像で補填しないと、少し唐突に感じてしまう。夏休みに学生さんが映画館でみた後に読んだら、きっとすぐに誰かに会いたくて走り出しちゃうだろうな。

 体の疲れを取るため、湯船に浸かる。お風呂は大好きだ。お風呂に入ったら、いつもアマプラを見る。海外ドラマか映画ばかりだけど、今回は珍しくアニメに。『かげきじょし!!』という、宝塚歌劇団を元にしたであろう、紅華歌劇団という女性だけの劇団員養成学校が舞台のアニメを発見。

 これがめちゃくちゃ面白い!

 主人公の渡辺さらさは、空気が読めない底抜けに明るく純粋な十五歳。このキャラ設定、すごく危険だと思う。読者をイラつかせる危険を孕む。しかし、作者の斉木久美子さんの言葉の選び方がとてもいいので、そこを軽々とクリアしているのだ。あと絵が綺麗。

 怖いもの知らずのさらさを応援したくなってしまう。すぐさまKindleで一巻を購入……がしかし。ん? 全然意味が分からない。というかこれ本当に一巻? ページ飛んでない? と思ったら『かげきしょうじょ!! シーズンゼロ』(花とゆめコミックススペシャル)があった。こちらも購入。すると、アニメの第一話と重なり、ほっと安心。みなさんもコミック購入の際は、ぜひエピソードゼロからで。

 主人公のさらさは、歌劇団のトップしか演じることの出来ないオスカル役を目指す。しかし、トップになるためには努力も才能もスター性も、そして、女だけの社会である歌劇団で「うまく生きていくこと」も必要である。

 トップを目指すと言い切るさらさに、先輩があなたは無理だと断言する。彼女は、歌劇団に伝わるジンクス(入学前に校内の桜の木の下に立つと、その人はトップになれないというジンクスがある。さらさはジンクスを知らず、桜の下で記念写真まで撮ってしまった)をトップになれない理由の一つとしてあげる。その時のさらさは先輩に反論するのだが、その台詞がとてもいい。

「さらさは、そんなふわっとした伝説に負けません!」

 みんながこう言うから、こうなるのはよくあることだから、そんなふわっとした事にどれだけ振り回されているのだろう、私。

「絶対になれると同様に絶対になれないなんてことはない」

 強い言葉だ。底抜けに明るい人は、実は全力で戦っている人なのかもしれない。

『かげきしょうじょ!!』、『前科者』と『宝石の国』以来の久しぶりに漫画でハマった作品だ。続きが楽しみ。

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