初めまして。翡翠です。
記事に興味を持っていただき、ありがとうございます。
今回は、理系院卒が『新型コロナウイルスに関するデマをぶった斬る』シリーズの第2回目です。
ぶった斬る!!
今回のターゲットはこちら。
そして、この記事を引用した以下のブログです。
記事には、以下のような文章が書かれています。
胡散臭い記事ですが、驚くのは、これを信じている人がいるということです。
このデマを一言で論破すると、「アデニン(A)の連なったポリA配列(ポリAテール:尻尾)はmRNAからタンパク質の合成に必要な配列なので、コロナウイルスの遺伝子がこの配列を持つことに何らおかしな点はありません」
詳しく解説していきます。
”セントラルドグマ”という言葉をご存知でしょうか?(生物学の話で、エヴァンゲリオンの方ではありません。)
すべての生物は、基本的に DNAでできた遺伝子を持っています。このDNAでできた遺伝子は『タンパク質の設計図』と呼ばれ、DNA の配列がタンパク質のアミノ酸配列を指定しています。
細胞内では、まず、DNAの塩基配列が、RNAの塩基配列に写し取られます。この過程を転写といいます。次に、RNAの塩基配列がタンパク質のアミノ酸配列に置き換えられます。この過程を翻訳といいます。
この一連の『DNA→(転写)→RNA→(翻訳)→タンパク質』という過程は、すべての生物に共通するもので、これを分子生物学の中心原理『セントラルドグマ』と言います。
ただし、DNAの遺伝情報がRNAに写し取られただけでは次の翻訳のステップに進みません。
写し取られたばかりのRNAはmRNA前駆体と呼ばれますが、それが翻訳に進むためには、RNAプロセシング(成熟化)と呼ばれるステップが必要になります。
この時にmRNA前駆体に対して行われるのが、キャップ構造の付加、スプライシング、そして、ポリA配列(ポリAテール)の付加です(RNAプロセシングの解説)。
今回のキーワードは、『ポリA配列』です。
上の図中では、7個のアデニン(A)の連なったAAAAAAAで示された『ポリA配列』ですが、実際には、100〜200個のAがmRNA前駆体(pre-mRNA)に付加されます(mRNA 3′末端プロセシング研究)。中央値で67〜96個という報告もあります。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4086860/
ウイルスは、宿主細胞の様々な機能を利用(”ハイジャック”)して、自身を増やします。
コロナウイルスは、RNAからなる遺伝子を持つRNAウイルスです。DNAウイルスではないので、DNAからRNAを合成する転写のステップは必要ありません。
感染後、コロナウイルスのRNAが細胞内に侵入し、それが、RNAプロセシングを経て成熟したmRNAに”擬態”するように、コロナウイルスはポリA配列を持っているのです。
ポリA配列を持つコロナウイルスは、宿主細胞の翻訳機構を”ハイジャック”して、宿主細胞のタンパク質と同様、自身の遺伝子情報をもとにウイルスタンパク質を合成させます。賢いですね。
これがコロナウイルスの『生存戦略』です。
コロナウイルスが増殖するために必要な、非常に意味のある配列で、フリーメーソンが力を誇示するための”ジョーク”ではありません!
記事には、以下の文章も書かれています。
頭痛がします。
デマブログにもありますが、武漢で最初に単離された新型コロナウイルス(SARS- CoV-2)の遺伝子の配列は、NCBIのデータベース上で公開されています。
たくさんの情報がバーッと書かれているので分かりにくいですが、左上にある『FASTA』というボタンをクリックすると、新型コロナウイルスの遺伝子配列だけを表示することができます。
Command+Fで、例えば「AAAAA」を検索してみてください。最後の33個のポリA配列以外の場所でも「AAAAA」が見つかると思います。
こんなデマは一瞬で論破できます。「検索すれば、A、T、G、C全て5つ連なった箇所が見つかりますよね?」ぜひ使ってください!
今回はここまで。
デマ情報を~、ぶった斬る!