【改訂版】未だにノーマスクの根拠になり続けるデンマークの研究
サポートでリクエストのあった「デンマークで行われたマスクに関するランダム化比較試試験(RCT)について」の記事の改訂版を作成しました。
この記事では、論文に記載された具体的な数値(有意差)などについての解説はしません。既にnoteやTwitterで同じ論文を紹介・解説されている方が何人かいらっしゃいますので、そちらを参考にしてください。これは、私がこれまで「ターゲット」となる人物・記事を指定して記事を書いてきた理由に繋がるのですが、「ターゲット」を指定することは情報量を増やすための一つの方法でした。
今回、直接的に「ターゲット」を指定することはしませんが、デンマークの研究に関連した記事に「書かれていないこと」を紹介し、【改訂版】とさせていただきたいと思います。(2022年1月16日)
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※ この記事は個人の見解であり、所属機関を代表するものではありません。
※ この記事に特定の個人や団体を貶める意図はありません。
※ 文責は、全て翡翠個人にあります。
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デンマークで約6000人を対象に行われた、マスク着用推奨の有効性を検討したランダム化比較試験『DANMASK-19試験』の結果は、「ノーマスク」の強力な根拠になっています。
論文の結論(Conclusion)を見てみましょう。
結論に書かれているように、このDANMASK-19試験は、「マスク着用が一般的ではないコミュニティにおいて、マスク着用推奨による新型コロナウイルス感染症の発生率は有意に減少しない」ことを明らかにしました。
論文発表以前からデンマークのマスク着用率は一貫して低く、「マスク着用が一般的でないコミュニティ」とされています。(着用率は5%未満。)
(画像:http://www.healthdata.org/acting-data/covid-19-maps-mask-use)
この試験では、約6000人を「マスク推奨」と「推奨なし」の2つのグループに振り分けました。
しかしながら、マスク推奨グループの半数以上が推奨通りにマスクを着用していなかったと記載されています。
マスク推奨グループに配布されたガイドブックに記載されているように、マスクの着用に際して、特に難しいことをマスク推奨グループに要求した訳ではありません。
それでも、マスク推奨グループの半数以上が推奨通りにマスクを着用していませんでした。
(画像:https://www.acpjournals.org/doi/suppl/10.7326/M20-6817/suppl_file/M20-6817_Supplement.pdf)
論文には、ランダム化比較試験(Randomized controlled trial, RCT)は、その効果に関する高いレベルの科学的根拠(エビデンス)を提供しますが、『外的妥当性』(=別の集団に当てはめた場合でも同様の結果が得られるかどうか)は低下する傾向があると記載されています。
日本におけるマスク着用率が非常に高いことは、誰もが認めるでしょう。
(画像:http://www.healthdata.org/acting-data/covid-19-maps-mask-use)
論文には、「コミュニティでマスクを着用することを全ての人に推奨しても、SARS-CoV-2感染を減らすのに効果的ではないと結論付けることはできません」と書かれています。
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個人的な見解:この論文の結果に対して、特に驚くようなことはありません。マスク着用に慣れていないデンマーク人の、マスク推奨グループの半数以上が「推奨通りにマスクを着用していなかった」訳ですから、当然と言えば当然です。
まずはこの『前提』について、但し書きとしてでも関連した記事に書かれていないことが、誤った結論に導く要因になっているかもしれません。
デンマークのランダム化比較試験は、決して、上の図のような『マスク着用群』と『非着用群』を比較したものではありません。
この試験は、「マスク(着用)の有効性」を調べたものではなく、「マスク着用を推奨することの有効性」を調べたものです。
では、デンマークのランダム化比較試験の結果を根拠に、特に日本で「ノーマスク」を主張することは適切でしょうか?
そして、この試験結果を取り入れた『システマティック・レビュー』は、マスクの有効性を評価したものとして適切でしょうか?
今一度、マスク着用の意義について考えるきっかけになれば幸いです。
以上。
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